煙草に火を付ける際の火力は強すぎては駄目ですわ
どうも
ニート街道まっしぐらです
「くそってめぇ巫山戯やがって!ただで帰れると思うなよ!“ファイアーストーム”!!!!」
盗賊のお頭は自身の持つ剣に炎を纏わせた。その光景に多少なりとも驚くピアニス。
「驚きましたわ。まさか上級魔法が使えるなんて。」
魔法には誰でも使える下級魔法と、才能が無ければ使うことの出来ない上級魔法が存在する。一般的な平民の中で上級魔法が使えるのはほんの一握りと言われており、上級魔法が使えるのであれば、貴族お抱えの魔道師になることも可能であり、上級魔法が使える平民とは極めて珍しい存在である。
ちなみに、以前ヴィンドが使用した“風の刃”は上級魔法をさらに超越した超級魔法である。
「後悔しても遅いぜ!!」
盗賊のお頭が剣を振りかざし、ピアニスに斬りかかろうとする。その瞬間ピアニスは
「あら、火を付けてくれるなんて何て優しい方なのでしょう」
と、剣筋を紙一重で見切り、あろう事か、剣を纏うように燃え盛る炎を火種にして煙草に火を付けたのである。
「なかなかの火力ですがもう少し押さえてくれません事?煙草が一気に燃えてしまいますわ」
スパスパと煙草を吸うピアニス。その行為に盗賊のお頭は一瞬唖然としていたが、すぐに我に返り、ピアニスへと斬りかかる。その瞬間
「プッ!」
「?!なに……」
なんと咥えていた煙草を今にも斬りかかろうとする盗賊のお頭へと、まるで吹き矢を吹くかのように飛ばした。思わず面食らう盗賊のお頭。次の瞬間
「“ポイ捨て”」
「ぐアアアアアア?!?!?!熱いいいいいい!!!!」
眼前に迫る煙草が暴発し、盗賊のお頭に炸裂する。みるみるうちに盗賊のお頭の身体は炎に包まれれた。
「“アクア・ウォーター”」
ピアニスがそう唱えた瞬間、大量の水が燃え盛る盗賊のお頭へと降り注ぐ。(この魔法は水属性の魔法で、ピアニスが煙草の火消し用の水を用意するときによく使用する魔法である。)
この魔法により彼を焼く炎は消し止められたが
「ば……化け物め…」
立ち上がる気力は残っていないようだ。
「メビウス、後は頼みます。」
「畏まりましたお嬢様。」
そう言ってメビウスは恭しく礼をする。
こうして数分後、ピアニスの乗る馬車は後ろの荷台に縛り上げられた盗賊達を積み、再度出発する。
「……まあ雑兵共ならこんなものか。煙草魔法、興味深いが世界のために消えて貰おう。」
その光景を離れたところで覗う白いローブを着た男がいた。
・・・・・
・・・
「到着いたしましたお嬢様。」
「そう、ご苦労様メビウス」
森での騒動から少しして、ピアニスは商業都市コマスへと到着した。
「では私は馬車と、この盗賊達を置いてきますのでしばしお待ちを。」
「心配性ねメビウス。もう私も大人なのですから1人でも大丈夫ですわ。」
「お、お嬢様…」
制止するメビウスを余所にピアニスは1人、雑踏の中を歩き出した。