続・猫パンチ
翌朝。
ミーシャにしては早くに目が冷めた。
お腹をすかせたテトラに起こされたからなのだが、テトラに促されつつリビングへ行くと、そこには昨夜と同じ格好・同じ姿勢で分厚い本を高速で捲る父・文珠の姿があった。
「父さん、まさか寝てないの?」
思わずそんな言葉を口にすると、珍しく文殊はこちらに意識を向けた。
「あ、ああミーシャ。ん、もうこんな時間か。おはよう。」
「そんなに面白かったのその本?」
ただの町史の何が面白いのだろう?とやはりミーシャには不思議でしかない。しかし、文珠はその言葉に食いついてきた。
「父さんはこの町の出身だが、聞いていた噂と伝承とが合致して面白かったよ。それに…」
ー父さんが、この町の出身?!
今まで知らなかった事実にびっくりしつつもその言葉をミーシャは飲み込んだ。
「それに、のあとはまた今度きかせて!今日も出勤なんでしょ?シャワー浴びて仮眠とったら?起こしたげるよ。」
文珠は夢中になると周りも時間も気にならなくなってしまう。
そのため睡眠不足でぶっ倒れては点滴→復活ルートをたどるので、ミーシャは超健康体にもかかわらず前の町の総合病院では全看護師さんから名前を覚えられていた。
喜屋戸町の病院でも名前を覚えられるのは時間の問題だろう。
「ちゃんと寝てよね。もう年なんだから。」
聞こえないくらい小さい声でミーシャはつぶやいた。
テトラが、にゃーん?と返事した。
「ん、そうだな。ミーシャ、2時間後に起こしてくれ。」
そう言い残すと文珠はリビングを出ていった。
机に残された喜谷戸町史には、あちこち紙が挟まっていて、収まりきらない落書きが机の周りに散乱していた。
「ちょっとぉ!父さんこのメモはどうするの!?」
「適当にまとめておいてくれ~!」
風呂場の方からそんな声が返ってきた。
仕方ないので散らかった紙をまとめていると、テトラが喜谷戸町史をクンクン嗅いでいた。
何かおいしい匂いでもするのかなぁ?なんてね。
適当なバインダーか封筒でもないかと見まわしていると目の端っこに、テトラの様子が映った。てしてし、と喜谷戸町史に猫パンチしている。それも結構必死に!
面白くて、気づかれないように目の端でそっと見ていると、強めにバシッ!と叩かれた喜谷戸町史の背表紙から何かが飛び出した!…ように見えた。
慌ててそっちを向いてみると、ちょうどテトラがぴょんっと机から降りて二階に上がっていくところだった。
「えっ、テトラ、今何か出なかった??」
思わずテトラに話しかけたが、返事をしてくれるわけもなく、テトラは振り向きもせず行ってしまった。
「何だったんだろう?今何か出たみたいに見えたけど?…気のせいかな?」
喜谷戸町史をひっくり返してみても何も変わった様子はなかった。
ミーシャはそれ以上考えることを止め、まとめたメモ書きをまとめて喜谷戸町史の横に置くと、朝ごはんのしたくに台所へ向かうのだった。
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