ニャンズゲート封鎖できません!
※誤字脱字の修正をしました。
「今からゲートを封鎖するよ。」
そういうと文珠は作り付けの本棚の前に立った。
「文珠、封鎖のやり方はわかったのか?」
ボイドはずいぶん親しげに文殊に聞いた。
「ああ、封鎖するだけなら簡単なんだ。」
そういいながら、ボイドは本棚の前で何やら作業を始めた。
「ちょ!白井博士!封鎖って?!封鎖しちゃったら僕はあっちに行けないじゃないですか!今日のこの日をどれだけ待ったと思ってるんですか!!!」
突然の封鎖宣言に焦る金子航。そんな金子をちらりと見ると、作業を続ける文珠。そこにボイドが割って入った。
「航。本当なら猫の門はもっと時間をかけて研究して、危険でないと証明したかったんだ。しかし、お前は勝手にレポートを読んでしまった。それだけじゃない。先日、勝手に起動させただろう?」
「それは…。」
静かに話すボイドに、金子航は言い淀んだ。今、ボイドは起動させた、といった。何を起動させたのだろうか?
「起動?」
ミーシャは素直に疑問を口にした。
「ああ、ミーシャ、お前がみたあのネコダマリ、あれがそうなんだ。」
「えっ?ネコダマリが?あれはたまたまではなかったの?」
文珠は、手早く本棚に扉を取り付ける。
「我々研究チームは、このうちの、この本棚がゲートになっていることは突き止めていた。それを起動させるには、いくつか条件が必要であるらしいというところまではわかっていたんだ。」
最後のねじを締めながら文珠は続けた。
「猫が門を開く方法とは違うかもしれない。だが、人間が人為的に門を開く方法があるんだ。」
「うむ。その起動スイッチが、ますみさんなんだよ。」
横からボイドが続けて言った。。
「ますみさんが?起動スイッチ?」
二人の言っていることがよくわからない。何かの情報が足りてない感じだ。だけど、それが何かというのを言い表すことができないミーシャは居心地の悪い顔をする。何とかこのもやもやを疑問文にしたいと手をワキワキしているミーシャとは対照的に、勢いよく金子航が二人の前に出てきた。
「ますみさん!そうだますみさん!!白井博士、その封鎖、今すぐ中止してください!ますみさんが…ますみさんがあっちに行っているんだ!」
金子航は必死な顔で文殊に訴えた。そういえば、ますみさんは、図書室に入ったが出て行っていない。という事は、本棚のゲートを使った?ますみさんは猫の国に行ったの?
「なにっ?ますみさんが?!」
驚くボイド。そこに文殊が慌てて続ける。
「いつの間に?私は見ていないぞ?」
扉を両方付け終えた文珠は手を止めた。
「そー言えば金子クンが来た時に、ますみさん、図書室に入っていったねぇ~!」
アヤはちょっとうれしそうに、だが、この緊張感の中でとんでもなく間の抜けた声で言った。
「アヤちゃん、それは早くいっておいてほしかった…!」
「えーでも、それが大事なことかなんてしらないし~!」
確かに、文殊はほとんど研究の事や、自分の事さえも話さない。そして説明はいつも全く足りない。今も足りてない。圧倒的にだ!
文珠は頭をかきかき眉毛を八の字によせて困った顔をした。文珠はアヤに弱いのだ。
「ますみさんは、気が付いていたのか?今日、ゲートを封鎖するってことに。」
ボイドは本棚を眺めながら、つぶやいた。
「その可能性はあるね。彼女は賢いから。」
文珠も同意した。
「せめてますみさんが帰ってくるまで、封鎖は待ってください!お願いします。」
金子航が必死に訴える。金子航はどうしてこんなに必死なんだろうか?ミーシャは不思議に思った。
ミーシャだって、猫の国にってみたいとは思うが、何かの理由があって、ゲートを封鎖しなくてはいけないのなら、それは仕方ないのではないかと思っている。ゲートを開いたままにしておくことで何か、喜屋戸町にとって良くないことがあるんだろうな、くらいの認識だけど、長いものに巻かれる精神のミーシャにとって、権力者の言う事は従うものだし、大人が決めたことに口を出すとかまず考えることはない。
そうはいっても、金子航の熱心さは昨日知ったばかりとはいえ、ミーシャにも伝わっていた。何か、特別な思いがあるからこそ、ここまで必死に追い求めているのだろう、と。
つまり、ミーシャは、どちらの味方になればいいのか、判断できないでいたのだった。
「あの…。聞いていいですか?」
その時、おずおずといーんちょーが口を開いた。
文珠とボイド、そして金子航がにらみ合う空間がいーんちょーの一言で緩んだ。
「猫の国ってほんとにあるんですか?」
いつも見ていただいてありがとうございます。
もしかしたら、今日の分はちょっと書き直すことになるかもかもかも。