プロローグ
ちょこっと直しました。
手に猫をぶら下げている少女がいた。
「いたいいたいいたいいたい!!」
猫をぶら下げているわけではなく、かみつかれていたようだ。しかも、関節を確実にキメられて。これは地味に痛い。
少女は思わずその猫を乱暴に振り払うと、飛ばされた猫は、少し離れた場所で体を低くして耳を後ろに倒し、今にも飛びかからんとしっぽを左右に揺らし、リズムを取っている。
3・2・1
「にゃっ!」
「いたたたたた!!」
手首を振りつつ、少女は叫ぶ。
「なんで猫のくせに飛びかかるときに鳴くの!だからさっきの黄色い鳥にも逃げられるのよ!」
どこにでもどんくさい猫はいる。ましてや飼い猫ともなれば、獲物である鳥を前に、とびかかる寸前つい「にゃっ!」と鳴いてしまうことはよくある。
「こら!はなせっ!」
少女は手首にぶら下がっている猫の口に指をツッコミ口をこじ開ける。
うー。
後ろ足で少女の太ももを蹴っ飛ばして、しゅたっ!と後ろに下がると、その猫は威嚇の声を上げる。さっき噛まれたときにちぎれたのか、少女のものであろうアンティークのブレスレットが手首からポトリと落ちた。
この少女の名前はミーシャ。
本名ではない。
小さいころからのあだ名だ。
そして、さっきまで手首にぶら下がっていたのは、ミーシャの猫、オス猫で白黒のハチワレのテトラだ。
テトラはとてもおとなしい猫だ。体に触られることを極端に嫌がるが、それでも甘噛する程度で決して穴のあくまで噛み付くようなことはない。いや、なかった。
こんなに狂暴になるには何か理由がある、とミーシャは考えていた。
「どうしたの?テトラ・・・」
そんな事を考えながら、ミーシャはテトラの頬を撫でようと左手を伸ばす。その瞬間、バシッ!と猫パンチでミーシャの左手は叩き落された。
ふーしゅーっ!ぴー・・・。
テトラの鼻息が荒かった。
だが、荒ぶるテトラの鼻は、とても良い音を奏でた。
「ぴー・・・」
テトラがハッとした。
いや、ハッとしたような顔をした。
いやいや、ハッとしたような顔をした気がした。
見つめあう一人と一匹。
一瞬の気まずい沈黙を破るかのように、テトラがふいっと視線を外した。
ふんっ!
あきらかに気分を悪くしたと主張する鼻息を残し、さっきミーシャの足元に落ちたブレスレットを口にくわえると、華麗な半回転上体ひねりを披露してテトラはリビングから飛び出していってしまった。
「あ、ブレスレット!」
ミーシャは追いかけようとしたがテトラの姿はもうなかった。
「テトラどこ行ったのかな?もってったブレスレットどうするんだろ?まさか、思い猫にプレゼント?!・・・なわけ無いか。」
さっきかみつかれてちょっと穴の開いた手首をさすりながらミーシャはつぶやいた。
ここはミーシャの家。この町には昨日引っ越してきたばかりだった。
*****
はじめまして、こんにちは!
私はミーシャっていいます!
白井美沙だからミーシャ。
研究者の父と、雑誌ライターで猫好き母、そして滅多に帰ってこない兄がいます!
ミーシャってカタカナ名だと異世界に行ったとしても違和感ないね!
あ、でもこの話は異世界転生ものじゃないよ!
あのね、私はこの春から高校生になるんですよ。
でもね!2月末に突然決まった父の転勤のせいで、決まっていた高校への進学がなくなっちゃったんです。
せっかく1年間猛勉強して合格を勝ち取ったっていうのに。もう!
私だけあっちに残るっていう選択肢がなかったわけじゃないんです。
でも、新しい町へ引っ越すというその誘惑に負けたの!
だってこの町は、この町の名前はー喜屋戸町。別名・猫渡りの町なんだもん。
猫もたくさんいる町だし、楽しいことが起こりそう…だよね?
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というわけで、猫のテトラとその飼い主ミーシャが繰り広げるおとぎ話のはじまりはじまりです!
読んでくださりありがとうございます。
初投稿でがむしゃらに書いています。
必ず完結してみせます!
応援していただけると嬉しいです!