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ざまぁ4

ざまぁ、無一文!

所持金が無くなって、一週間。


やっと金が手に入ると勇者一行は教会へと足を運んだ。

 盾使いの少女を捨ててからゆうに一ヶ月の時間が過ぎていた。

 今いる場所は彼女を捨てた街から二つ先の街で、ダンジョンがあることで賑わいを見せていたあの街とは雲泥の差があるほど萎びれた街に勇者一行は留まっていた。


 「本当は、私達の、モノだったのに」


 悔しそうに一言、聖女リアがつぶやく。


 「そうねぇ。まさかダンジョンクリアにはスクロールが必要だなんて。今までしらなかったものね」


 ちらりと、賢者が聖女を見る。


 「聞いてなかった。普通そういう事を知っているのは賢者、なのでは?」


 賢者マリーに嫌味が返ってくる。


 「あらぁ?ダンジョン攻略は教会からのお達しですよねぇ?各地にあるダンジョンを攻略してモンスターが出ていくのを止めてほしいと」


 「攻略すればダンジョンが消滅するんだったよな?確か」


 剣聖アーティアも旅の初めに聞いたうろ覚えの情報を口にする。


 「そもそも、そういう情報をしっかりと伝達しないあいつが悪い」


 忌々しげに吐き出す勇者サリエルに他のメンバーも頷き返す。

そこで奥の部屋から勇者を呼ぶ声が聞こえ、サリエル一人が奥へと入っていった。



 「卑怯」


 「そうですわね、私達に隠れて証拠スクロールやら素材を後でだすとか。絶対あの子ちょろまかしていたに違いないわ」


 「戦闘もいつも、途中で盾が壊れたからつって休み休みだったしな。壊れたなら肉盾にでも、なってろつーの」


 「あらぁそれじゃ次に使い物にならなくなっちゃうじゃない。壊れた盾もテープで補修していけばなんとかなったわけだし?」


勇者がいなくなってもある人物について罵ることは終わらない。

教会の角の方にいるとはいえ、民間人もいる中、彼女らは悪口の応酬を続けていた。




 

 それを教会の入り口で聞いていた鍛冶師の親父は唖然としたまま立ち尽くしていた。


 (は、はぁ?)

自分の耳や頭がおかしくなったのかと、一瞬疑ったが、やはり何度聞いても角の方にいる少女たちのほうがおかしいと思う。


 ダンジョン攻略、その達成条件はダンジョンを攻略するわけでもない一般人である親父ですら知っている一般常識だった。


 各地でダンジョンができると、その地の教会が王都にある大神殿、その最高位たる神殿長に報告し、その報告を元に大神殿から冒険者ギルドに、依頼が降りてくる。

 ダンジョンを放置すると中からモンスターが出てくるのでなるべく早くに攻略しないといけない。

 最奥にあるダンジョンスクロールというものをダンジョンから奪い取るとダンジョンが消滅するので、ギルドはそのスクロールをもってダンジョン攻略とみなす。

 ただ、ダンジョン消滅といっても消滅までの時間はまちまちで、スクロールを手に入れた瞬間に崩落するものもあれば、一ヶ月とかなり長い年月をかけてゆっくりと消滅していくものもある。

 だからダンジョン攻略する場合は『帰還石』というアイテムを必ず所持していく。もし、瞬間的に崩落するタイプの場合生き埋めになる確率が高いからだ。

その情報を知らずに行くのは相当な命知らずか馬鹿だけだ。石一つでパーティ全員を運ぶことができるが、何があるかわからないのが冒険だ。各々が所持していてもおかしくはない。

その他にも、親父を悩ませた情報がある。


 (……盾をテープで補修……)


 盾は武器ではなく命を守る防具だ。ない袖を振ってでも万全の状態で用意するものだ。たかが一度や二度ダンジョンにもぐった程度で割れるような盾は盾じゃない。しかもテープで補修なんぞしたらその部分から予想外に攻撃を食らうことにもなる。


 (なぜだ?金をちょろまかしてんなら、盾ぐらい補修しろよ)


 最低限の盾であってもそんなものを使い続けるよりかは数倍安全だ。

 

 

 「おい一体何をみてるんだって、勇者御一行様か」 


 ポンっと仲間の鍛冶師に肩を叩かれ我にかえる。


 「うそだろ?」


 つい口から出てしまったのはそんな言葉。

 だって勇者一行というのは、勇者、守護者、聖女、剣聖、賢者という、賢くて、清く正しい存在のはずだ。それが先程の会話では微塵も感じられず、ただの世間知らずのお嬢ちゃんたちの集まりという感じでしかない。

 

 「お、勇者さまが戻って…あれ?確か5人だったような…?」


 キョロキョロと鍛冶師仲間の親父が周囲を見回す。


 「確か、もう一人…」


 杖を持った二人の少女は賢者様と聖女様だろう。剣を持った子が剣聖様、だとするといないのは。


 「守護者様?」


 「そうそう、大盾を持った守護者様。少女の姿でありながら大盾をもってるってあれ?どこにも…」


いるわけがない。


鍛冶師の親父たちは知らないことだが、守護者の少女は今は実家のある王国へとひたすら駆けて、

やっと半分の地点まで辿り着いた。

だが、そこで所持金が底をつき、たどり着いた街でアルバイトをしているなんて勇者一行も、ましてや親父たちも知る由もない事柄だった。

 

 

 

少女さん、今バイト中。

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