ざまぁ1
ざまぁみろ、勇者よ
「お前を追放する」
それは、より効率的で強靭なパーティーを作るため、のハズだった。
「死ねぇぇ」
掛け声と共に突進して敵に斬りかかる。
そうして逃げ帰ったのは。
自分達のほうだった。
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ガヤガヤとした酒場で反省会を開く勇者一行。
先日まで5人だったが今は一人減って4人しかいない。
それというのも。
「あのお荷物でもいれば、少しは楽だったのね。」
「でもさ、あいつうるさいし…ってちょっとまった!リア、あんたなに抜け駆けしてんのよ!」
「…なにも、問題ない」
「問題だらけだっつーの!さっさとサリエル様から離れなさい!」
「まったく、リア?あのお荷物の婚約者がいなくなったからといってオイタはいけないわよ?」
「まぁまぁ。落ち着けよ二人共。あのうるさい婚約者様がいなくなったんだ」
「いなくなったつーか、ダンジョンにステテキタワケだけどねぇ」
ニヤニヤとした笑顔を4人が浮かべる。
勇者サリエル、聖女リア、剣聖アーティア、賢者マリーの所業は未だ誰にもばれていない。
「あいつ、名前なんだっけ?」
「んーわすれちゃった」
「賢者のくせに、忘れるとか。わらえる」
パーティーメンバーからも名前を忘れ去られた盾使いの少女を含めて、勇者サリエルパーティは、勇者以外女性のいわゆるハーレムパーティーだった。
「あいつを追放するまでは良かったが…」
「そうそう。不意打ちをくらえばいくらうちらであってもにげるしかないつーの」
「あらぁ?剣聖なんて大層な称号持ちの誰かさんがいつもと違ってヘタれてたからサリエル様が活躍出来なかったようにみえましたけどぉ?」
「マリー!この野郎!テメーだってとっとと大規模魔法を唱えないからこっちが大怪我するはめになったんだろうが!」
「アーティアの傷は治した」
リアの一言に女三人の言い争いが激化する。
それを諌めるでもなくただ眺めるだけの勇者は元婚約者の少女を思い出すわけもなく一人悦に入っていた。
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(んー)
「追放する」なんてほざいた元婚約者の勇者というかナルシストを追って仲間だったメンバーがいっせいに走り去っていった。
何故か、仲間のはずなのに、力があるからといってパーティの荷物を持たされていた少女がいなくては今後にも支障がでると思うのだが、それに気づきもせず走り去られてしまった。最奥のこんなところから入り口までたどり着くのにまる一日はかかるだろう。
(追放する、っていったのだから荷物の所有権は私にくれるってこと……なーんてことはないな。うんあの人達じゃ、たとえ置いていったとしても荷物をとりに帰れとか、かかった分の代金よこせとかいちゃもんつけてきそう)
めんどくさと思いながらも少女は荷物の中からアイテムを取り出す。
涙型の石を大地に向けて投げつけると緑の煙が少女を包み込み、無事にダンジョンの入り口までたどり着いた。
「ダンジョンに挑むなら普通、個人個人で帰還石用意するよね?」
誰かに聞いたわけでもなく、一人つぶやいた少女は軽くなった荷物を背負って足早にギルドへとむかった。