仲間とは
この世界に置いて最も重要なことであり、勇者達がやり遂げたいことランキング第1位に選ばれる目標でもあること、それは、魔王討伐。
今日から僕は魔王討伐の為、勇者達と共に旅をすることになった。
おっと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はリュウ。一応、戦士だ。まだまだ未熟だが魔王討伐のパーティーに選ばれた。
こんな未熟な僕が選ばれた理由は、勇者であるカイトからの推薦だった。昔からの友達でよく一緒に遊んでいた。
カイトは、勇者の血を受け継ぐ者で、剣術、魔法の能力が周りよりもずば抜けて高い。さすが、勇者。
パーティーには、後二人いる。魔法使いのエルザと弓使いのツバキ。どちらも女の子だ。エルザがカイトのパーティーに入りたいと志願してその友達のツバキも巻き込まれたようだ。この二人も高い能力が認められて選ばれた。
みんな育成学校でトップレベルの人達ばかりだ。なんでカイトは僕を選んだのだろう。
「よし!みんな準備は出来たか?」
カイトの声が聞こえて我に返った。今から旅が始まるのか、なんかドキドキしてきた。
「なにをオドオドしてらっしゃいますの?」
「あっ、いや別になんでもないよ」
「もう少し気を引き締めて貰いたいです。カイト様の足を引っ張らないようにお願いします」
うう、エルザの言葉がグサリと来るな。なんか僕に当たり強いような気がする。まあ、僕みたいな平凡レベルの戦士がこのパーティーにいるのも違和感あるだろうししかたないか。
歩き始めてすぐに、モンスターが現れた。スライムだ。
シュパッ!
カイトはスライムを一瞬で切り倒した。本当に一瞬で。
「流石、カイト様!素晴らしいですわ!」
「やっぱりカイトくんの剣さばきはすごい!」
エルザもツバキも褒め称えていた。確かに凄かった。凄かったけど、あのスライム達は襲い掛かってきた訳ではない。普通に遭遇して有無も言わさず切り倒されたのだ。
なんだか胸がざわついた。
みんなレベルを上げる為にかたっぱしにモンスターを倒していった。僕は、みんなが速攻で倒すから倒せないままだ。
「よし、この村で一旦休もう」
サイショ村に着いた僕たちは、宿屋で休むことになった。
「この調子で鍛えて慎重に進んでいこう!」
「そうですわね!」
「うん!カイトくんの言う通りしっかり力をつけていきたいね!けど、君はもう少し頑張ったほうがいいんじゃない?」
突然、ツバキが僕に話を振るとは思わなかった。何も言い返せないのだが。
「そうですわ。あなたは、全然レベルが上がってないのですからもっと頑張ったほうがよろしいのでわ?」
「やめろよ。リュウだって頑張ってるじゃないか。そんな事いうのは可哀想だろ」
カイトが庇ってくれたがなんだか複雑な気持ちだった。可哀想だったのか。僕は。
「ごめん。みんな」
謝ることしか出来なかった。
みんなが寝静まっている頃、僕は眠れずに村をトボトボ歩いてた。
「はあ〜こんなんでやっていけるのかなぁ」
そう呟いているとガサゴソと音が聞こえた。
「なっなんだ!?こっちのほうから聴こえて来たけど」
音のする方に言ってみるとそこには、小さなゴブリンがいた。1メートルくらいの大きさだ。ゴブリンは食料を漁っていた。
僕が覗いていると気配を感じたのかすぐにこちらに気づいた。
「人間!?なんでこんな夜中に!?」
ゴブリンはすぐに臨戦態勢になり構えた。少し震えていた。このゴブリンなら僕でも倒せると思う。しかし、震えているモンスターを倒そうとは思わなかった。
「震えてるのバレてるよ。そんなモンスターを倒そうとは、僕は思わない」
そういうとゴブリンは、驚いた様子で構えるの止めた。
「なっなんだ!?珍しい奴だな!」
「それよりも、盗みはよくないよ。今すぐ止めて仲間の所に帰りなよ」
「うるさい!おいらの仲間はみんな人間に殺されちまったよ!なんにもやってないのに!」
「えっ、そうだったのか‥‥」
このゴブリンは犠牲者だったのか、人間達の都合で仲間を殺された悲しい存在。
「でも、やっぱり盗みはよくないよ。これあげるから今日は帰えったほうがいい」
僕は、そう言って持ってたクッキーを渡した。
「なっなんだこれ!?毒でも入ってるんじゃないのか?」
「別に怪しいものは、入ってないよ。なんなら今食べて証明するよ」
パクっポリポリポリポリ うまい。
「ねっ!君も食べてごらんよ。美味しいよ。」
ゴブリンは、ゆっくりクッキーを食べた。
「うまいー!こんなうまいものおいら初めて食べたよ」
「それは、良かった。とりあえず今日は帰るんだ。いいね?」
「わかったよ。とりあえず礼を言っとくよ。ありがと。それじゃ!」
そう言ってゴブリンは走り去って行った。
なんとかなったな。他のモンスターもあれぐらいだったら誰も戦わなくいいのにな。
こうしている間に夜が明けていった。
「よし!今日も頑張って行こう!」
相変わらずカイトは、元気だな。対照的に僕は、不安だらけだった。とりあえず今日は、レベルを上げる為に頑張ろう。
サイショ村を出て少し歩いた所に洞窟があった。洞窟の入り口前に大きな看板が挿してある。
【この先キケン入るな】
親切に看板まであるのだから入らないほうがいいだろうな。
「よし、この洞窟に入ってみよう!なにか宝か強いモンスターがいるはず」
おいおいまじかよ。多分、序盤じゃ進めなさそうなエリアだと思うのだが、だとしたら全員やられる可能性もあるけどいいのか?
「そうですわね。行ってみましょう」
「強いモンスターがでても私の弓矢で倒すから大丈夫!」
ああ、入るパターンだな。この3人ならなんとかなるかも知れない。強いし。
洞窟に入ると意外にも一本道だった。イメージとしては、迷路のような構造になっていると思っていたからな。
嫌な予感がする。一本道の洞窟。出てこないモンスター。奥にやばいのがいそう。ってか いた。
鎧を纏った鬼。モンスター名 鬼武者
カイトは、鬼武者を見た途端に急に斬りかかった。お得意のクイックスラッシュ。
鬼武者は、持っていた短剣で切り払った。カイトよりも早く滑らか太刀筋。やばい。絶対勝てない。
カイトは、少し驚いた顔をしたが、冷静だった。
「やっぱりそこら辺のモンスターとは違うね。みんな!援護を頼む!」
カイトの言葉でエルザは、ブリザードを唱えてツバキは、炎の矢を放った。僕は、こっそり気配を消して鬼武者の後ろに回った。
ブリザードと炎の矢に気を取られてる間に よし!ここだ!
ガチンッ!
鬼武者は、自分のツノを変形させて防御した。
「クク!なかなかやるが、決定打に欠ける」
くそっ!ってか鬼武者の声、渋っ! おっと、そんな場合じゃないか。
次に、カイトが縦に大振り斬りを放つも避けられてカイトの横腹に鬼武者の回し蹴りが炸裂。
ごふっ! カイトの吐血と同時にエルザの悲鳴が響く。カイトは、倒れ込んだ。この状況では流石のツバキも青ざめていた。
どうすればいいんだ。どうすればいいんだ。うわああ!
気が動転した僕は斬りかかることしかできなかった。鬼武者は、角を変形させて僕を縛り上げた。
「ぐわああああああぁぁ!」
痛い。痛い。痛い。痛い!痛い!
「たっ助けてぇぇぇ!」
心から叫んだ僕の目にとんでもない光景があった。
エルザとツバキがカイトを支えながら洞窟から出ようとしていた。
はあああああああっ!?まじかあああああ!?