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赤い糸

作者: 鳥音

僕達には赤い糸が見える

その糸は何十本、何百本と誰かと自分に繋がっている

ぐちゃぐちゃに絡まってどの人に繋がってるかもわからない赤い糸

ただその赤い糸は、本当に大切な人になる相手にだけ

しっかりと結び付けられているという


ある日僕は好きな人ができた

赤い糸が繋がっていて

本物なのかもしれない、と胸を踊らせた

毎日を幸せに過ごして

1年半が経った頃



唐突に赤い糸は切れた

原因は些細なことだった


本当に何気ない

いつもするような喧嘩


でも

その赤い糸は切れて

好きな人とは、別れることになった


それからというもの

赤い糸が怖くて繋がってる人を見つければ、自分から糸を切るようになってしまった


相手の女の子は皆、とても悲しそうな目で僕を見ていた

時には恨まれ、殺されそうになったりもした


彼女と別れて

赤い糸が怖くなってから、12年

僕は30歳になって、自分で切ってきた糸も残り少なくなった

あと数本

あと数本切れば

僕は怯えることなんてなくなる

そう言って、出会った女性との糸を、僕はついに全て切ってしまった

もう1人で生きていくんだと、改めて実感した


それから数週間後のこと

世界中の人が糸に繋がれる中

糸のない僕


その僕を

いつか別れた

彼女が見つけた


「…ナギ君?ナギ君なの?」

そう声をかけられて、咄嗟に、自分が惨めな気がしてきた

好きだった人との、大切だった人との糸が

簡単に切れてしまったことを引きずり続けて

ここまで生きてきたんだ

そりゃあ、惨めにもなるだろう


僕は走り去ろうと、広い道まで移動した


彼女は黙々と僕についてきて

腕を掴んだ


「ナギ君」

『…なんだよ』

彼女に言葉を発した瞬間、僕の中で何かが崩れた音がした

『なん…だよ…ッ』

「いや、あの…えっと…」

『なんなんだよ…ッ!憐れむな!!!そうだよ…あぁそうだよ!!!くだらないいつもの軽い喧嘩ですら切れた糸が怖くて自分から糸を切ったんだよ、一人で生きてくんだよ…これ以上…惨めにしないでくれよ…ッ』

僕がそう言うと

彼女は思いっきり僕にビンタをする

「ばかじゃないの」

涙目で、今にも泣きそうな顔で、彼女はそう言った

「糸が些細なことで切れちゃったらさ…」

そう言うと彼女は僕の、たった1本の切れてしまった糸を掴み、しっかりと結んだ

「こうやって、結び直せばいいじゃん、ね?」

『…あ』

そうすると糸は結び目なんてなかったかのように

また一本に繋がった。


「ずっと、ずっと言いたかったの、あの時から、ずっと」

そう言うと彼女は、自分の赤い糸を、僕と繋がっている分以外全て、バッサリと切った

「私には、君しかいないんだから、離れないでよ」


その言葉に僕は、気づけば涙を流していた


「ねぇ、ナギ君」


『は、はい』


「そんなに緊張しないでよw昔みたいに話そ」

そう言うと彼女は昔と同じ笑顔を見せる

「あのね、ナギ君、結婚しよ」


『……はい』


僕も昔みたいに

へらりと笑った

運命っていうのはたった一つじゃないです

決められたものだけでもないです

もし貴方が糸が見えて、離したくない人との糸が切れてしまった時

絶望して嘆きますか

それとも、諦めて次に意識を向けますか

それは人次第ですが、この話を見て少しでも考えてみて貰えれば、と思います

ここでは恋人同士の話でしたが、運命の人って言うのはそれだけじゃないですよね、家族、親友、恩人

そのどれもが何らかの奇跡で、運命で巡り会えるのですから

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