色
「今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます。」
また、面接に落ちた。この文面を見るのはもう何度目だろう。50はとうに越えた気がする。思わず溜息が零れる。
夢があった。厳しい道であることは分かっていた。それでも何度も何度も落ちるのは気が滅入ることだった。
幾つか落ち続け悩んでいた時、友人に「就職は結婚みたいなものだよ」と言われた。要は、相性や運や出会いが大事とのことらしいが、結婚なんて考えた事もなくよく分からないまま頷いた。
気分転換に街を歩いていると、その友人から「どうだった?」と尋ねる連絡が来た。苦笑しながら「決まったよ」と嘘の返信をした。
雪が降り始めた。この時期に降るなんて随分珍しいことだなと思いながら、空を見上げる。雪は段々と強まっていたが雲はまばらで、視界に暗めの青がちらりと映った。
いつの間にか友人が近付いていた。唐突に私の腕を取り走り出す。「今日は焼肉いくよ!」
夢はまだまだ叶わない。叶うかもわからない。未知は沢山あり不安もある。
ただ今は、この腕の温もりを思う。
雪が積もり景色は白くなりつつあるが、遠くの空には、綺麗な青が広がっていた。
「内定祝いか?」
「100社落ちましておめでとう記念!」
「……」
焼肉は奢らされた。