神秘(きせき)・結合(ゆうかい)・選ばれし者(---)
ルイから教わったものはとても単純なものだった。
「この術はとても単純なんだが、君のその力がなければ絶対に使えないんだ。もちろんそれだけで使えるわけではないんだがね」
そうして蔵の中から一冊の本を取り出してあるページを彩斗に示した。
「『汝捕エタ力を繋ギ合ワセル』…?」
「簡単に言えば武器の性質を別の武器に宿すってことらしい。しかし召喚師自体が稀なせいで実際に見たことはないんだ…彩斗?」
「……ん、あぁ……」
ルイの発した言葉はその書物に目を奪われた彩斗の耳を通り抜けていったようだった。
しばらくの沈黙、それを破ったのもまた彩斗だった。
「よし、試してみよう。少し離れてて」
周囲にスペースを作り、剣を閉じ込めたカードと道中で仕留めた一角を携えた魔物のカードを取り出した。
この魔物の特性はその角を飛ばして攻撃するものだ。
「『繋ぎ合わせる呪文はそれぞれを意識し『フュージョン』と唱えること』…でいいのかな、いくぞ…」
一呼吸置いて意識を集中させる。蔵に吹き込む空気を感じるほどの静寂。
「 フュージョン! 」
2枚のカードが光り出し、やがて形を持ち始めた。
その武器は元の剣と違いドリルのような形状をしていた。
「できた!」
そう言って彩斗はガッツポーズを取った、その瞬間。
バシュン!と何かが吹き出す音とカランカランと外で金属音。
手元には先ほどできた剣の柄だけ。目線の先にへたり込んだルイ。すかさず喜びの次に出た言葉はルイに向けられたものだった。
「ごめんなさい!大丈夫!?」
「あ、あぁ大丈夫だ。しかしこれほどあればきっとなんとかなるだろう。今のようにできれば文字通り彼の頭を冷やせるだろう」
「それでなんとかなるのか?」
「少なくとも威力を下げられるだろう、その後は実力勝負だ。ギルドにも依頼を出そう」
自分だけが戦うことにならなくてホッとした彩斗は冷静に考える。
「なら俺は用意をしなければならないな。砲台のようなものは用意できるか?」
「任せろ、それも合わせて村長に掛け合ってくる」
そう言って蔵を後にするルイを横目に彩斗はもう一度書物に目を落とす
『汝ニ封ジタ力ヲソノ身ニ宿ス法ヲ記ス。ソノ名モ…』