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「闇様」

 目を開ければピンクの髪の毛を持った少女がひとり。ミルクだ。ほかのメンバーはそばにはいないけれど、どうしたのだろうか。

「ミルクちゃん?」

「はい、ミルクです」

「どうして貴女だけ? ワープが使えるクールは? どうしたの?」

「彼らは、ナチュラル君のお母さんに閉じ込められてしまいました」

「どうして!?」

「アタシだけは残ったのは、一番弱そうだからでしょうね……悔しいですがそう見えても仕方がないです」

「そんな、ふたりは大丈夫なの?」

「命に別状はないはずです、生命反応は感じますから」

「ミルクちゃん、貴女って一体……」

「ただの普通の少女ですよ?」

 にっこり可愛く笑うけど、すごーく胡散臭いんだけど! けれど、何の力もないあたしにとって、彼女は強力な味方だから、頼っていくしかないのだけれど……。

 一体何が出来て何が出来ないのかもよくわからないけれど……。

「ミルクちゃん、これからお願いね」

「あはは、何言ってるんですか。闇様も頑張らないといけないですよぉ。アタシは普通の女の子なんで」

「でも」

「あまり頼られても荷が重いし、ナチュラル君が喜びません」

「……たしかに」

 おんぶにだっこで助けに来たよ! じゃ、見っとも悪いよね。ここはどうにか気合で乗り切らなきゃ!

「がんばるっ」

「応援はしますよ」

「でも何をすればいいのかしら? とにかくあてずっぽうに動いてもなんだわ。何か、気配とかは感じる? ミルクちゃん」

「ええ、お城のほうに……この洞窟を登ればお城に迎えるみたいですよ」

「じゃあ、向かわなきゃね」

 あたしは駆け足で洞窟に向かった。暗くて臭くて、何かいる! あたしは表情をゆがませながら先に進むと、かさかさと何かが動く音がした。

「虫!!!」

「いますねぇ、たくさぁん」

「ミルクちゃんは何で平気なのよ!」

「虫、可愛いじゃないですかぁ」

 暗くて何の虫かはわからないが、足がいっぱいなのは手に一瞬触れた感覚でわかる。ぞぞぞっ。もうやだ、泣きたいし吐きそうだけど、逃げるわけにはいかない。

 何よりあの夢が現実なのか気になるし。

 気味が悪いけれど、悲鳴を上げながらあたしは前へ前へ進む。本気で虫が好きらしいミルクは笑っているような声さえあげている。

 正直信じられないんですけれど。

「ひっ」

 頭の上に、ぼたぼたと落ちてきた虫は……。

「ゴキッ……」

「あらら、ゴキちゃんまでいるのですねー。不衛生ですねー」

 けらけら笑うミルク。ちょっと待ってゴキブリまで守備範囲なわけ!? 理解不能です!

 あたしは泣きながらゴキブリをどかし、穴の外へ出た。ぜえぜえと荒い息を上げて、あたしは綺麗な息を吸う。

 ああ、外の空気がおいしいこと! ミルクは残念そうな顔で名残惜しそうに洞窟を出てきた。帰りもこの道を使うのかしら?

 すごく嫌でたまらないわ!

 だけれど……。

「闇様!」

 ナチュラルの声がどこからか聞こえた。探してみても姿は見えない。あたしはおろおろしながら白の近くに行く。

 そこには屈強な肉体の兵士たちがいた。うう、これじゃ露骨には近づけないわね。

 お城のうろからよじ登ろうかしら? ううん、無理よねそれは……。

「闇様、ちょっと来てください」

「え? ミルクちゃん? どこへ行くの?」

「お城の裏口です」

「どうしてそんなところを知っているの?」

「魔法です」

 うっわ、チート……あたしたちが一緒じゃなくても、彼女だけでナチュラル助けられたんじゃ……。

 そんなことを考えながら、血かを歩いていく。そして、地下牢のようなところが見えた。

「ここは……?」

「地下牢です、さあ、中へ」

「うん……」

「闇様!」

 そこに聞こえたのはクールとキュートの声だった。蝋の中に閉じ込められている彼らを目の前にして、あたしは言葉をうしなう。

 なんで!? なんでこんなところに? 確かにけがひとつ負っていないようだけRど……。

「ミルクちゃん、あけれる?」

「はい、今」

 ミルクが何か魔法を使い、扉を開けた。そして、あたしが中へ入った時……扉はしまった。嘘でしょ!?

「ミルクちゃん、何を……」

「ごめんなさい、闇様。アタシこのお城のものなんです」

「ナチュラルを迎えに行きたいってのは?」

「全部嘘です」

 にっこり笑顔を見せたみるくは、くるりとあたし達に背を向けて……消えた。

「嘘でしょ!?」

 あたしの悲鳴は、地下牢にむなしく響くのだった。

          *


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