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そして、現世の朝が来る。行ったり来たりも、慣れてきた。そして、順当に放課後が来た。家から許可をもらい、今日から徒歩通学だ。のんびりしながら、ほかのクラスメイトに別れを告げる。途中城崎ましろとぶつかったから、謝っておいたらおびえた表情をされた。解せぬ。

 そんな時、華麗な美少女がナンパされていたので、あたしは助けに入ろうとした。すると、いかにも体育会系の暑苦しそうな男子高生が割って入った。

「あ!? 何だてめぇ。こっちはこのお嬢ちゃんに用があるんだよ」

「あん? 嫌がってんだろうが。そういうのすごくださいぜ」

 誰かに似てると思ったら、彼はパッションに似てるのだ。そして、ナンパされてる子はキュート。この前みた、あの男の子だ。

 ってことは……。

「すみませんが、そちらの方性別間違えてませんか? 私が見る限り、彼は男性です」

 そこに現れた三人目は、どう見てもクールで。あたしは思わず思考停止してしまった。ナチュラルだけじゃない、三人もこの世界に転生しているんだ!

「あの、しつこいならあたし、ガードマン呼びますけど。あたしんち、お金持ちなんで携帯ですぐにガードマン来ますよ」

 見てられなくてあたしは口を挟む。途端集まる視線。そこに後ろから現れる素直。

「おねーさん、何? どうしたの~?」

 男三人(ほんとは四人だけれど)に囲まれたナンパ男は、きょろきょろして逃げ場を探す。そして、とどめはキュートがさした。

「オレ、男だけどいいの?」

「んだってええええええええ!?」

「ん。何なら連れションでもする?」

 にっこり笑うキュートは、とてもかわいかった。ストーカーはぞっとした様子で顔を青ざめる。そして、即座に走り去る。

「何? 何なの~?」

 素直だけが、状況を飲み込めて内容だった。

キュートはため息をつくと、にっこり笑った。

「皆さんありがとうございます、オレ可愛優。見ての通り、趣味は女装です。近くの大学に通ってます」

 ぺこりと頭を下げながら、スカートを広げる優。素直はそれを珍しそうに見ていた。

「何? お兄さん、じっと見て」

「ボクはお兄さんじゃないよ、中学一年生。山田素直って言うよ?」

「嘘だろ……でけぇ……。おれは厚井熱也。まあ、高校三年生だ」

 パッションこと熱也もそこまで身長差はないけれど、素直はまだ十二歳だ。ビビるに決まっている。

「雪村レイヤ、同じく高校三年生。そもそもなんで私たちは名乗りあってるのでしょうか」

 メガネをくいっとやりながらクールが名乗る。確かに、何故名乗っているのだろう。普通にここで解散してもおかしくないのに。

 素直だけが、それを予測していたかのようにニコニコしている。

「おねーさん、この人たちも夢に出てこなかった?」:

「え?」

 なんで、わかるのだろう。あたしは思わず頷いた。

「夢ってなんだよ? おれにも聞かせろよ」

「おねーさん、顔に出てたから、ボクわかっちゃった~。既視感感じてるなって」

 素直は、やっぱりニコニコしている。

「おねーさんも、自己紹介しなよ~? で、夢の話を聞かせてあげよう? みんなに」

「あ、うん。倉闇です。一応女子高生よ。まあ、よろしく頼むわ」

 ふんと鼻を鳴らして、あたしは言った。なんだか照れくさくて、視線を泳がす。 

 そして、あっちの世界での話を話し始めた。誰もバカにすることなくすんなりと聞いてくれたのは、夢という前置きがあったからだと思う。

「あたしは、魔法少女になりたかったのよ。なのに夢でまで悪役だなんて、あんまりよ」

「おねーさん、大丈夫。きっとボクがおねーさんを魔法少女にしてあげるからね~?」

 コスプレ衣装でも用意してくれるのかしらね? あたしは動揺したまま首を縦に振った。

 ほかのメンバーは考え込むようにしている。

「夢占いみたいなもん? オレらに出会うためにその夢を見たんじゃないの?」

 優は真剣な口ぶりで言った。現実にはそうではないのだけれど、そう言う事にしておこう。あたしはまた首を縦に振った。

「じゃあ、メルアドみんなで交換しようぜ!」

「……熱也声でかいよ」

「可愛……さん? でいいのか? おれは。一応目上相手だし……」

「優でいいよ。別にオレ君の先輩でも何でもないし? ねぇ、レイヤ」

「私は誰にでも敬語ですけど」

「あっそ」

 優は面倒くさげに彼らを眺めた。たぶん、でかいなあとか思っているんだろう。ユウはこの集団の中ではずば抜けて小さい。

「でも優おにーさんは何で女装を?」

「聞いて驚け素直。文化祭の出し物だ」

「なるほど~。ボクは孤児院の手伝いで、文化祭はあんまりできない。部活も、年下の子の面倒見なきゃだし」

「お前孤児院の子なの?」

 優がびっくりした顔で言った。あたしもきょとんとしていると、素直は「うんっ」と元気よく笑って頷いた。全く下のない笑顔だった。

「ボクんち兄弟多いからね~。捨てられちゃったわけ。でもまあ孤児院のほうが楽しいよ? みんな和気あいあいとしててさ~。ボクお兄ちゃんもお姉ちゃんもいっぱいだし、弟も妹もいっぱいで、すっごくやかましいけどすっごい充実している! ご飯とかそう言うのは足りてないけど……」

 ぐるる、と素直のお腹が鳴った。確かに、孤児院の生活では彼は食事量が足りないだろうし、他にも遠慮しなければいけないかもしれない。そこで、あたしは思いついた。

「素直くん、あたしの家の養子にならなくて? いずれは執事になってほしいの。貴方のサイズなら、最高の護衛にもなってよ」

「おねーさんの、護衛?」

「そうよ、素直くんなら高校生になるころにはお給料も出るんじゃなくて?」

「お給料……」

 よだれを出しかねないほど、素直くんは興奮していた。あたしの一言でこの話はきっと通るだろう。これが高校生とかならまだしも、十二歳の子供である。きっと承諾は楽に貰えるだろう。いくら婚約者がいても、子供相手に嫉妬はしない……というか会ったことすらない彼は、実在するのだろうか。写真ではさわやかなイケメンだったけれど。

「ボク、やる! おねーさんと一緒に住む!」

「おおう、うらやましいぜ」

「みんなはさすがに無理だけど、遊びには来てくれていいわよ。家は無駄に広いから」

 さすがに、ひとりづつでは親がゲイ会するだろうけれど、三人でならばそこまで文句も言われないだろう。

「とりあえず、素直くんはこのままあたしについてきてね」

 いろいろ説明とか、お母様たちにしなければいけないから。

「は~い」

 元気よくゆるい返事を素直はして、あたしの横に立った、他の三人は、もうすでに変える準備に入っている。

「じゃあ、またメールするぜ。お嬢様」

「お嬢様なんて」

「私もお嬢様とお呼びします。周りにはそんな高貴な方はいませんので」

「オレも同意―。お嬢様とか、漫画だけの世界って感じ?」

「はあ……」

 あたしの学校に来れば、お嬢様なんていっぱいいるけれど……確かに裕福じゃない限り、あの学校に近づくことはないものね。素直以外は、中流家庭の子供といった感じかしら?

 特別裕福でも貧乏でもなさそうな印象を受ける。制服もきれいだし、鞄も痛んでいない。大して素直の服は、見直してみるとよれよれだ。きっと誰かのおさがりだろう。よくその身長のおさがりが手に入ったものだ。

「ボクもおねーさんをお嬢様って読んだほうがいい?」

「素直くんは、執事になるまでおねーさんでいいわよ。あと三年かしらね」

 執事と言っても学校に通うほど本格的なものではなく、ただのお手伝いさんだけれども。

 平和なあたしの家では、普通免許さえあれば十分長く勤められるのが、執事やメイドだ。

 まあ、執事はたっぱがいいにこしたことはないけれど……いざとなった時を考えると、やっぱりあたしたちを守れないといけない。

「うん、わかったよ、おねーさん。皆もばいばい~」

「おう」

「はい」

「じゃーねー」

 三人三様の返事を返して彼らは去って行った。素直くんと彼らが見えなくなるまで待つと、自宅へと踵を返す。

 すると、素直がゆっくり近づいてきた。

「おねーさんの護衛、でしょ?」

「そうね。素直君おっきいから、安心するwわ」

「孤児院では邪魔だって言われたけどね~。場所とるし、色々調達大変だからって」

 やはりというか……。

「兄妹もみんな大きいの?」

「そんなことはないよ~僕意外小人って感じ。

すごく小さいから、居心地悪いの」

 それは、異世界の時と同じというか……この子はそう言う運命なのだろうか。可哀想すぎる。大きいことは悪いことではないのに……。そんなことを考えていると、それが顔に出たのかもしれない。素直がにっこり笑ってあたしの頭をなでた。冷えた風が吹く中、あったかい手が触れてちょっと心が温まる。

 そんなことを考えていると、言えにたどり着いた。あたしに気が付いた岩岡が飛んでくる。

「お嬢様! ……と山田様! お嬢様を送迎いただきありがとうございましたっ」

「岩岡。素直君のことだけど……彼、孤児院で暮らしているのよ。引き取れないかしら」

 その言葉に、岩岡は眉間にしわを寄せた。

 早く、目の前にある大きなや市にの中を、素直に見せてあげたい。きっと彼ならびっくりするだろうから。

「山田様が女性なら、すぐにはいと申すのですが……山田様は男性ですし……」

「十二歳の子供よ。何を異性扱いしているの?」

「そうですね、まだ幼い身の上、孤児院での生活はつらいでしょうから、旦那様に掛け合ってみましょう。わたくしめが先に話をつけてまいりますので、おふたりはお嬢様の部屋に」 

 岩岡に言われるがままに、あたしは中に入っていく。案の定一瞬で素直の目の色が変わった。

「おねーさんち、本当お金持ちなんだあ。肖像画がある家とか、漫画の中でしか見たことないや~。すっごいね! あの過敏とかもきっと高いんでしょ?」

「ふふん。そうね、有名な陶芸家の作品だったはずよ? 知らなくて?」

「うん、ボクそう言うのわかんない~多分,レイヤおにーさんならわかるかも。進学校のトップクラスにいるってメールで自慢してたから」

 レイヤはそんなにすごいのか。まあ、クールの段階ですでに頭のよさそうな雰囲気だけなら感じ取れたけれど……。 




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