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「お兄ちゃん、リリィね、大きくなったら魔法少女になるんだ」
コロコロと笑うリリィを見て、おれはよしよしと彼女の頭をなでる。
当時は魔王は悪人で、魔法少女や勇者がヒーローだとおれも思っていた。
「おれも勇者になってみんなを助けてやりたいぜ!」
子どもながらに、勇者に憧れて体を鍛えていたおれは、近くに優者が現れたと聞いてはしゃいでリリィと除きに行くことにした。
そこでは、何かと戦う勇者……神々しいマントと衣装ですぐわかった。
「スゲー、強ぇ」
「本当だー」
木の陰からおれたちは子供らしくはしゃいだ。その時だった。
「誰だ!」
ザクリ。長い剣がリリィの首を切ったのは。
ゆらりと倒れるリリィに、近づいてくる勇者。
「なんだ、人間か。邪魔をするな」
「リリィ! リリィ!」
「うるさいガキだ。消えろ」
優者の残酷な言葉に、体が冷えていく。ゆしゃって、なんだっけ?
オレは涙目になりながら優者をにらみつけた。勇者は小ばかにしたように鼻を鳴らしてリリィを見る。
「邪魔するから悪い」
「お前は正義の勇者じゃないのか!?」
「勇者だよ。選ばれしものだ」
「じゃあ、なんで」
その質問に、勇者は目を丸くした。
「なんでって……正義の味方の邪魔をするものは全部悪人だろ? だから、オレは悪くない。そのチビが悪い。っていうかもう、そいつ死んでるぜ? すぐ運べば生きれたかもしれないのにな」
「!!」
そう言われてリリィのほうへ視線を戻すと、もう息のない彼女が横たわっていた。
もし、好奇心でこんなことをしなければ……。全部全部おれが悪い。
でも、一番許せないのはこの勇者だ。
「あああああああああああああああああ」
おれは思い切り勇者に体当たりをした。すい、とよけていく勇者にそれを何度も繰り返す。
「お前も悪人か?」
「お前なんか! 正義じゃない!! お前こそが悪人だっ」
ぜえぜえと息を荒立てながらおれは叫んだ。
口の中に塩辛いものが混じっていく。
いやだいやだいやだ。リリィがいないなんて、信じられない。大好きなリリィ、おれの妹。たった一人の肉親。
「うわああああああああああああ」
「ばからし……先行くわオレ。魔王を倒してちやほやされるんだ。それで目指せ第ハーレムだぜ」
ばかなことをほざく勇者は、足早にオレの前を通り過ぎていった。
その足に、かぶりつく。
「いってぇ!」
そう言って、勇者はおれの顔を蹴った。鼻血が出て、鉄の匂いがする。
「ううう……」
情けなくて悔しくて、涙が止まらなくて。泣いているおれに唾を吐き捨てて、勇者去って行った。
そんな、夢を見た。




