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「うぐぐ……まさか、魔法使いがそっちにもいるなんて……それも人型なんて、卑怯だ」
「ボクが何者かなんてばらすわけないでしょ~? あっちの世界でもボクを味方にしようとしてたけど、姑息な手段使ったって、あんたは魔王になれない器なの」
「でも、もうこの世から魔王がいなくなるじゃない? それならわたしが代わりに魔王を……」
「魔王なんていなくていい」
あたしは、力強く言った。魔王なんていらない。皆が平等に幸せに暮らせれば、それでいい。衣食住そろって、みんな笑顔で。
「「まあ、ピュアはこれで普通の人間になるけど、殺しちゃったほうがいい? ダーク様」『生きてるほうがつらいんじゃない? この子の場合。平和が嫌いなんでしょう?』
「じゃあ、殺さないでおくね~? まあ、足腰位折ってもいいかな?」
「ひっ」
その言葉にピュアが情けない声で泣く。
「やめてあげなさい。ナチュは優しい子でしょう?」:
「……もう、一緒に住めないけれどね~。ボクはおとなしく人気のない場所で暮らすよ~。パニックになるじゃん? ほかの人が」:
ナチュラルがかわいそうになってくる。魔法使いなら、魔法でどうにかならないのだろうか。それか、例えば魔法少女なら浄化できたりしないのだろうか。
「それでも、そばにいてほしいの」
「おれも」
「私も」
「オレだって」
「皆……でも、ボク、こんなんだよ?」
「私が素敵な発明をします、薬学なら得意ですから」
クールがどや顔で言った。すごく説得力がある。
「クールなら、してくれるかな……」
「もちろんです、ひと月もせずに元のサイズにしてあげましょう」
クールは鼻息荒く宣言する。キュートは笑いをこらえている。パッションは頷いている。
あたしは大きな足を、思いっきり抱きしめた。
「ねぇ、貴方素直君でしょう?」
「やっぱりばれちった?」
「そりゃ、おねーさんって呼ぶから」
「ボクも、あっちとこっち行き来できるんだぁ。それと、うっすらと未来が見えるから、ボクはおねーさんをこっちの世界に呼んだんだ」
「まさか事故はわざと?」
「衝撃を与えるように念じたら、あんなことになっちゃった~ごめんね?」
まあ、今となっては許すしかないけど。
と、なるともしかして……。
「ピュアは城崎ましろ?」
「ぐっ……さすがにばれたか……ずっと少女漫画の主人公みたいな子を演じてきたのに……。わたしはあんたより先に召還されて魔法少女の卵として育てられてたのよっ」
口調すら別人の城崎ましろに、セクシーが駆け寄る。
「主人公みたいじゃなくても、貴女は可憐だよ、ピュア」
「……うざい」
セクシーの甘い言葉すらいらだつらしく、顔を赤くして彼をピュアは蹴った。
でも、赤くなるってことは案外好きなのかも?




