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「ダーク様~お風呂の時間だよ~」

「ありがとう、ナチュ」

「うん、どうせ一緒に入るしいいよ~」

 さらりと吐かれたセリフに、固まるあたし。ちょっとまってちょっとまって!? 今なんて言った!?

 ぎょっとしたあたしを無視してナチュラルは自分の着換えを準備してきた。

「嘘でしょ!?」

「? いつも入ってるじゃん~」

「ちょっとまって、あたしってこの子とデキてるの!?」

 じゃないと、ありえない事態なんだけど。

 そこにキュートが不思議そうに口をはさんだ。

「何言ってんの? ダーク様。ナチュラルはまだ子供だから一緒にお風呂入ってるんじゃん。ナチュラルはまだ十二歳だから……むしろ一番異性扱いとは遠い感じ」

「十二!?」

「そぉだよ~。ボクの年齢まで忘れたの?

ほかの四天王じゃ大人で恥ずかしいけど、ナチュは子供だから護衛に一緒に入っても平気っていつも言ってるんじゃん」

 ナチュラルも納得いかなさそうに続ける。

 なんてことだ。さすが異世界。二Mの十二歳とか、笑いさえこみあげてくるレベルなんだけど。

「無理無理無理。見た目大人じゃんっ。青年じゃんっ。恥ずかしいって」

「ダーク様変なの。言い出したのはダーク様なのに~」

 こてんと首をかしげても、やっぱりナチュラルは青年にしか見えない。この中では最年長だと勝手に思っていた。

「ちなみにね、キュートが十九であとのふたりは十八だよ」

「……離れているのね、貴方だけ」

「まあ、ダーク様は覚えてないなら忘れてたほうがいいことかもね~。さ、お風呂入ろう?」

 グイ、と腕をナチュラルに捕まれよろける。予想はついていたけれど、彼の力は強かった。

 それを、振りほどくのはあまりにも心が痛むのだけれど……。

「ナチュ、貴方もうお兄さんだからひとりでお風呂入りなさいっ」

「え、ボク護衛しなくていいの? 危ないよ?」

「離れたとこにいていいから、あたしの裸は見ちゃだめよ」

「ダーク様の裸綺麗だよ?」

 純粋無垢な子供の発言にあたしは照れる。

後ろめたさを感じながらも首を横に振り、冷静になった。

「十二歳ってもう、お兄さんじゃない」

「寝るのもダメ?」

 シュンとして泣きそうな顔をのナチュラルにあたしは戸惑う。寝るぐらいなら……。

「寝るのは別にいいわ。だから、言うこと聞いてくれないとあたしが困っちゃうの」

「ダーク様が、困るの?」

「そう。わからなくて?」

「わかった~……」

 気落ちした様子でナチュラルが頷く。でもごめん、絶対無理だもの。

 待っているナチュラルがかわいそうでお風呂をあたしはすぐに済ませて彼の元へと行った。さすが異世界、ドライヤーなんてものはない。

 頭をタオルでごしごしやりながら、嬉しそうに抱き着くナチュラルを受け止める。

「おかえりなさい~」

「こら、お兄さんは抱き付くものじゃないでしょう?」

「ボクまだ甘えたいし、いいでしょ」

 記憶を失う前のあたしは、どれだけ彼を贔屓していたのだろう。大きな体でべったりされて、あたしはため息をついた。

 困ったなあ。かわいいと言えばかわいいけれど、よく眠れるかなあ。

 キュートたちにおやすみを告げて、あたしは広い寝室に入った、ドライヤーはなくても電機はあるので、明るくて居心地はいい。

 もしかして、ドライヤーも探せば売っているのかしら。

 三人ぐらいなら余裕で眠れそうな広いベッドに、あたしたちは横になる。ナチュラルの体温は、ほんのりあったかかった。

 そして、彼はすぐに眠りについた。あたしもうとうとしてきて、夢に落ちる。 

 まさか、目が覚めたら元の世界に戻ってるとは知らずに。

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