10
どうせ、寝たらまたピュアと戦うと思うと、起きて高校生に戻ってもうれしくない。
隣に寝ている素直も、思わず頬をつねるほど少し憎らしい。ええい、なんで秘密を履かないのだ。あたしが大好きなんじゃないのか。
「痛いよーおねーさん……」
「八つ当たりよ!」
「それを宣言するってある意味すごいことだよ、おねーさん」
素直が呆れた声を上げる。だって、むかつくんだもの。あたしをあがめておいて、結局部外者なんて。あたしだって気になるって―の!
あたしは素直を追い出して着替えると、急いで朝食をとって家を出た。
隣にいる素直も、あたしの不機嫌さをくみ取ったのか、何も言わない。
ただ顔色を窺って、ひょこひょここちらを覗き込んでくるだけだ。
「あ、メールだ。城崎先輩から~」
「!? いつの間に交換したのよ!?」
なんで、素直があいつの番号を?
「この前交換したんだ~。おねーさんが嫌なら消すけど」
「別に、いいわよ」
消せなんて、まるで彼女の嫉妬のようで恥ずかしいじゃない。本当は消してほしいけれど、そんなこと言えないわ。
「何を話しているの?」
「ひ~みつ」
「また!?」
「ごめんね? おねーさん」
「……わかったわよ」
かわいらしく謝られちゃったら、何も言えないじゃないの。あたしは頬を膨らませながら、学校を目指した。
すると、目の前には城崎ましろが立っていた。今一番見たくない顔なのに……手には、手作りの何かを持っている。
「素直君」
「素直君!?」
下の名前で呼ぶなんて、城崎ましろ、許すまじ。あたしは怖い顔をして彼女を睨む。
「手作りのお菓子もってきたから、食べて!」
「いらないや、ボク」
「そんな、すごく上手にできたんだよ?」
若干焦っている城崎ましろの手から、お菓子を奪い取る。
「あたしがもらってあげるから、とっとと立ち去りなよ」
「そんな、それは素直君のために……」
「いらないって言ってるじゃん。あたしもちゃんと食べるし、いいでしょ?」
城崎真白はじっとあたしを見て、無言で去って行った。
「どういうこと?」
「ボクもよくわからな~い」
本当にそうなんだろうか。すべてを知っていての発言なようにしか思えない。なんかもう、何を考えているのかさえ分からない気がしてきたわ。
「城崎先輩から、何ももらう気はないから、おねーさん安心していいよ?」
「いつ心配したの?」
「今、顔に出てた」
あたしは思わず顔を熱くして目をそらす。絶対あたしのほうが顔に出て、わかりやすいんだろうなあ。




