夢に夢を見る
ぶぉぉぉーという音で毎朝目が醒める。
私が住んでるボロボロのアパートのよこを平然と何人かしか乗せていない田舎戦の始発が通っていく音。
「んーーーっ」
太陽も出ていないしな。
この前読んだ本には健康のために起きたらすぐ日光を浴びるように、とか書いてあったけど。どうなのよ、それ。
私の体はちゃんと日光とこのオレンジ色の電球の区別ついてんの?
そんな機能なんて私にはついてない気がするけどな。
「まーさーとー。今日のゴミ出しお願いねー。……聞いてるの?」
隣で寝てる全裸の愛しい愛しい正人に声を掛ける。
私達、何やってんだろうな。
この前同棲してることが突然やってきた両親にバレて、でもいいよ別にってお許しをもらってこうやって暮らしてるわけだけど。
私はれっきとした社会人だし、彼は夢追いかけ人のがっつりのフリーターだし。
夜はやることやってるけど、週3もこの頃なあなあで終わっちゃうし。
毎日のルーティンが形作られてくっていうのがこんなにも無味なものとは全く思わなかったな。
「聞いてる聞いてる。本当、夏奈ちゃん毎朝早いね……。俺そんな早起き一生に数えるくらいしかしてないわ」
それでも、夏奈ちゃんと呼ぶ彼の声が妙にくすぐったくって心地よくって。
どうしても離れられないのは、きっと運命なんだって学生みたいに信じながら。
今日も彼の叶わないかもしれない夢に夢を見ている。




