2.再会
しばらくは世界設定等の説明的な話になってしまいますがアイドリングだと思ってご容赦を
2 再会
警察には師匠の名前を出して色々黙っててもらうことにしました。
これから暮らす町で変な干渉は欲しくないので色々と手を回してもらいました。
カードの確認だけしてもらってさっさと学生寮に向かいました。寮の近くにも支店があるので詳しいことはそっちで聞くことになりました。
寮のある都市まで気圏航路で3時間、弾道航路で1時間ですが手続等で同じくらいの時間が掛かります。これはのんびりクルージングとしゃれ込みましょう。
綺麗な海、果てなく続く草原、雪を頌えた高山、鬱蒼と茂る森やがて砂丘を越えた先、細長い内海の対岸、簡易宇宙港を兼ねた大学の空港が見えた。
入学時に個人用クルーザーの使用と駐機の許可は取ってあったので指定のハンガーに納め整備を始める。長距離の航行と気圏での運用で多少がたつきがでたみたい。
地上用ビーグルで30分ほどの所に第45学生寮『カササギ』があります。
この地区は、航宙機関係の学部が多く固まっています。
私は恒星間宇宙船の設計と施工について学ぶためにここに来ました。
修理、改装では中堅企業として名前は通っていますが雇っている職人の技量に頼る部分が大きく、オリジナルは殆ど無い。
親父や爺さまの後を継ぐだけでは新型や私が目指しているロストシップ(遺失文明によって作られた宇宙船の総称:LS)との複合機の修理すらおぼつかなくなります。
辺境に一番近いLS修理が出来るドックが売りですが昨今の技術革新ではいつハイブリット化された最新型が持ち込まれるか分かりません。
今は物理的にLSと現行の船のユニットを繋いでいることが多いので、うちのようなどちらもいけるところが有利ですが、最新設備や特殊な作りの船には戸惑いが隠せません。
そのためにもしっかり勉強して将来に備えないと。
目指せ”星神の神子”です。
星神の神子というのは、今この宇宙で一番人気の船の女神様と風の神様の御夫婦を祭る神殿が発行する、それぞれの分野の最高実力者を表し、また神の加護を与えてくれる、いうなれば究極の星間資格です。
惑星に住み、宇宙まで出ることのない人(人類の7割相当)には馴染みが薄いけど、神子になったら神殿でのサービスはほぼ無料で受けられるし、身分証明にもなります。ただし品性公明で個人の感情に流されない人として尊敬できる人にしか与えられないとも言われます。
色々考えているうちに『カササギ』に着きました。
基本寝室のみ相部屋で相談次第でパーテーションで区切り部屋数も自由に設定でき、他人が入れないように半迷路化して二人の世界を作り出している人たちもいるとか、人格崩壊している人のリハビリ施設だとか、人間以外も受け入れているし幼等部から常勤講師までごちゃ混ぜでそのまま結婚した年の差婚もいる。(学園裏サイトより抜粋)
何処まで本当か知らないけど”女子寮『カササギ』”に於いては少々人として問題があっても受け入れてくれるようです。
もっとも大概は問題がある人や事前に申請した人はここに押し込められるとさっきのサイトに書いてあります。
私の相部屋の子ってどんな子なんだろう。
幾ら変人のたまり場だって言われても私ほどじゃないだろうし。まあ性格はまともな方だと思うけどこの体はトラウマ物だから。
寮母さん(管理事務所の室長さん)琴風・サート・クラステラさんに挨拶して、お部屋に案内してもらいました。
「いいですか、この寮では気安く個人の事情に踏み込んでは、”め”ですよ。お姉ちゃんも含めて色々あるんだからね。でも困ってる人には手を取ってあげてね。ここはそういう人を探す場でもあるんですから。」
そこで言葉を切ると私を上から下までじっくりと眺めると、とても嬉しそうに明るい笑顔を浮かべた。
あ、この子旋毛が2つあるんだ。銀色の腰まである長い髪、薄い水色の瞳に、同じ色のブレザー。まあ制服を着てなかったら初等部の学生に見えていたでしょうね。
「お姉ちゃんの相方は強敵よ。ボクが診た中でとびっきりの闇の持ち主だけど・・・あなたたちは|世界の光(そらの風)。あなたたちは命の守人。あなたたちは誰にも阻むことの出来ない純白の刃。あなたたちは・・・あなた・・たちは・・・・・出来ればよくしてあげて・・・っと、ボク何か変なこと言った?」
「えっと、多少抽象的なお話を。クラステラ室長も能力者ですか?」
「んーと、ぼくのことはコトカゼって読んで。たまに出るんだよね、時詠みって呼ばれてる力が。まあ未来の話だから言った通りになるとも限らないしね・・・。」
ちょっと気まずい空気が流れる・・・これは私の”力”にあった使命がこの先に待っているって事なんだね。
一応覚悟はしてたけど使命持ちは確定してるんだなあ。
最上階15階の角部屋いわば一番奥の部屋、すでに通路には私の荷物が置いてあります。
ドアの前に立っても反応はありません。設定でこの位置に立ち止まるとチャイムが鳴るようになってるはずですが。
コトカゼちゃんがドアに手をかざすと勝手に開いちゃいました。マスターキーを使った様子は無いのでロックが掛けてなかったようです。
「ファトラちゃんまた開けっ放しにして、危ないから気をつけてって言ってるのに・・・」
中はがらんとしていて間仕切りとかの設定は一切して無く、壁の無い広い空間にツインのベットとトイレ、シャワールーム(浴場は地下に温泉施設が併設してあるそうです)の入り口の扉、簡易キッチン(業務用に換装可)そして隅の方に置かれている大きめの旅行用収納装置。
・・・なんだか前にテレビ番組の特集で見た刑務所の雑居房を思い出してしまいました。
まだあっちの方が生活感が出てたのが不思議なくらいの寒々しさが漂ってきます。
シュン・・・
シャワールームが開き中から少女が出てきました。
あの時の女の子です。
濡れた髪、一糸まとわぬその姿、頬を伝うしずくや、その幼さを残した体、滴る水滴と相まってものすごい妖艶さを醸し出して同姓の私ですら見とれてしまいました。確かに鍵も掛けずにいたら危ないです。性別に関係なく危ない人が覗きに来ますよ。
琴風さんの咳払いで正気に戻りました。この人は耐性があるのですね、つい尊敬の念がわいてきました。
半ば予想できましたが、そこに居るのに気配が掴めない人がそんなにごろごろ居たら怖いです。
「いつまでもそんな姿してないでさっさと体を拭いて服を着てください。紹介も出来ないじゃ無いの。」
「・・・ごめんなさい・・・」
派手に見える容姿に反して消えそうな声で囁くと持っていたタオルで体を拭きながら収納の方に移動していった。
思わず後ろを向いてしまった私は息を整えて状況を整理する。
この子は本当に人なのかしら。神族はまだ会ったことがないけどもしかすると血を引く人かも?
あと外見上明らかに違和感のあるところが。
足が目立つくらい長いのです。腕の長さに対して身長が高いので裸だと特に目立ちます。
原因は移植された両足。
膝上15センチぐらいの所に境界線のような跡が残っています。見た目は色の違いだけにしか見えませんが、明らかに長さが合っていません。もしかすると成長した時を想定して大きさの設定をしているのかも。大きくなれば気にならないくらいの長さになるのでしょうか。生体移植では成長具合で取り替えるわけにはいかないですからね。