13.最終作戦
先んじて孤立させられたグリゼルダ・ジーベは、勝利を収めつつあった。
仲間とはぐれ、巨人の針を取り落とし、頼るところは己の魔法術と裁きの名を持つ霊剣のみとなっていた彼女だったが、それでもその闘志は試練を退けたのだ。
敵の頭部を頂部から串刺しにして仕留めた形の相棒が、主である少女へと語りかける。
(……動きが止まったようだ)
「…………肋が二、三本折られたわ……ちょっと治してからみんなと合流――」
少女の闘気が収まり、自分の骨折の度合いを見計らって人体復元の魔法術を行使しようと集中したその時、屍と化したはずの青い仮面の啓蒙者が再び動いた。
「う――!」
(グリゼルダ!?)
回避しようと体を捻った所で骨折した肋から激痛が走り、不覚の極みながらグリゼルダの動きが鈍る。
そこを四肢と翼を使って覆い隠すように抱き着き、締めあげられた時点で、彼女は死を覚悟した。
即時性の念動力場で抜け出せるほど、脆弱な拘束ではなかった。
そして胴体に仕掛けられた砲門が開き、憐れな小娘を自爆によって塵に還すべく発射される直前、彼女は啓蒙者もろともに足場を伝わってきた激しい振動に揺さぶられた。
「! ――このッ!!」
(よしっ!)
一瞬だけ僅かに緩んだ拘束を、下方に脱出。船外活動服を着ていたために、長く伸ばした髪が引っかかる、あるいは掴まれるようなことがなかったのが幸いした。
壁を蹴りながら無重力の通路に三角形を描いて敵の背後へと飛び出し、啓蒙者の脳天に突き刺したままだった相棒の柄を握って力を込めた。
さして筋力を鍛えた訳でもない16歳の魔女のそれではあるが、それでもグリゼルダは啓蒙者の顔面から鳩尾にかけてを切り裂きながら、裁きの名を持つ霊剣を取り戻すことに成功する。
警戒しつつも更なる一撃を加えようとするが、その前に天船からの通信が届いた。
『そこから離脱してください。自爆の徴候があります』
(それよりどこか外に出口を開けるか!)
「こいつを放り出すから!」
『胸部第6非常用減圧区画を解放します。そこから排出してください』
天船が宣告を終えるが早いか、十メートルほど離れた壁面が横に開いた。グリゼルダは複数の小さな爆裂魔弾を生み出して、一見無造作にそれらを通路へとばらまく。
「とう!」
そこへ向かって動かなくなった啓蒙者を蹴りだすと、爆裂魔弾に接触した啓蒙者の身体は魔弾の連続破裂で跳弾のような軌道を描いて弾かれてゆき、見事に減圧区画の開いた扉の中へと放り込まれてしまった。
『……投入を確認しました。減圧区画閉鎖。空気を充満させた後、外部開放扉を開いてガス圧で外部へ放出します』
霊剣の持つ膨大な擬似的人生経験を持つグリゼルダは、無機物であるところの天船の言葉に隠された機微を読み取り、尋ねる。
「……何かあった?」
『……追って説明します。外部ではグリュク・カダンさんが啓蒙者と戦闘中ですので、彼の援護に合流してください。
第7非常用減圧区画から船外に出られます』
「分かった。行くよ、レグフレッジ」
(ああ)
彼女は霊剣の系譜においても初めて微小重量の空間を経験してさして時間が経っていないにも関わらず、器用に壁を蹴って支持された方向へと進んでゆく。
そして真空の減圧区画を抜けると、丁度そこに、グリゼルダのそれよりだいぶサイズの大きい船外活動服を着た人影が飛んで来るのが目に入った。
「ぎゃんっ!?」
「ごめん!」
それは運悪く、彼女に直撃する形となった。折れた左の肋骨を中心に激痛が走る。
そのまま天船の外郭に叩きつけられ、グリゼルダは反動でゆらゆらと虚空へと漂い出てしまった。
痛みを堪えて何とか周囲を確認しようと船外活動服の推進剤を噴射して止まると、そこで眩い極光めいた輝きを見た。
(グリュクか!)
すぐ後ろに天船(と、グリゼルダ)が迫るほどに押されており、前方からの敵の攻撃を防いでいるのだろう。
重力が極めて小さいこのような場所では上下左右や前後の区別はあまり意味を成さないが、天船が軌道レンズを砲撃しようと巨人の形態になっている今なら、天船のそれを基準にすることである程度有用になりそうだ。
だが、そこで彼女も、合体天船の左腕を見た。
「……特殊砲が!?」
中程の部分が焼け爆ぜたように激しく破壊され、恐らくは必殺の兵器として使いものにならない状態であろうことを悟る。
『先ほどの不意の振動はこのためです。既に砲撃予定距離を大きく通りすぎており、本船はこのまま船体の全質量を使用して軌道レンズへ体当たりを行う予定です。案内指示に従って脱出船へ合流し、一刻も早くこの軌道から離脱してください。敵の排除も出来るかぎり補助します』
「そんな――」
グリゼルダは、その状況に怒りを覚えた。
天船に対してではない。自分に対してでもない。敵に対して、という単純なものでもないような気がした。
うまく言葉に出来ないが、そのように物事が配置される結果となった事自体に、ひどく憤りを感じるのだ。
このようなことを引き起こしているのは、始原者の操る啓蒙者たちであり、始原者は過去にも、遠く離れた別の星の世界を滅ぼしてきたという。
それだけならばまだ、痛ましくはあってもそれだけで終わったことだろう。
だが、その滅びの神はグリゼルダたちの住む世界までもを消し去ろうと、ある種の信念を燃やしてやってきた。
生者の数だけある営みと、そこに死者を足した数だけの思い出とを湛えた水の星が、善意の欠片もない横暴の塊に蹂躙され尽くす。
そんな悪逆が果たされることが、既に決定してしまったというのか。
(それを無理にでも止めさせるのが、700年に渡って記憶と力を蓄積してきた我々の使命だ!)
「分かってる。お師匠、先の代の方々……」
呻くようにつぶやいて、グリゼルダは一旦、相棒から手を離した。
熱に浮かされたように胸中に浮かぶ考えは、本能のようなものか。
(裁きの名の下に――)
「わたしと裁きの名を持つ霊剣に、力をください!」
柄を横から拳で弾くと、裁きの名を持つ霊剣が微小重力の空間で勢いよく回転する。
「グリゼルダ……!?」
それまで魔法術の障壁で敵の攻撃を防いでいたグリュクが、背後で生じていた異変に気づいて彼女の名を呼ぶ。
離れたところから見れば、巨人の形態を取った天船の突き出すような形状の胸部の上、頭部に当たる場所の前方に、直径にして10メートルほどの輝く円環が出現していた。
裁きの名を持つ霊剣と同じ色をした、怜悧な薄い刃で出来た銀輪。
音が無いので分からなかったが、よく見てみればそれは高速で回転し続けているらしい。
「これが――裁きの名を持つ霊剣の至ったもう一つの姿……」
(何故かな、分かる。為すべきことが! ミルフィストラッセ! そしてその主よ!!)
(何だか知らぬが――)
「でも、分かった!」
裁きの名を持つ霊剣の呼びかけに応じて、意思の名を持つ霊剣とその主がグリゼルダの背後に転移する。
そして弓の形に変形した意思の名を持つ霊剣を構え、そこに見えない矢を番えるような動きを取る。
輪の向こうには、グリュクと戦っていたらしい銀髪の啓蒙者の姿。
だが、そこから撃ちだされる火球の豪雨も、電磁衝撃波の嵐も、回転する見えない傘に弾かれたように拡散してしまい、その後ろの巨大な天船にも被害を与えることは出来なかった。
「彼等曰う、爾退け!」
それを打ち砕こうとしてか、超高速の有棘鉄球が放たれる。
が、
「揺るぎなき山脈へ!」
「その切り札の名は疾風!」
前方に発生した防御障壁と、横合いから飛び出してきた黒い影によって有刺鉄球は弾き飛ばされた。
それはこちらを援護しに来てくれたのだろう、セオとキルシュブリューテ。
「こいつは私と、セオ殿下で引き受けるから! とにかくやっちゃえ!」
「感謝します」
「ありがとうございます!」
二人は礼を言い、それぞれの相棒に集中した。
黙示者の側には加勢は無いようで、複合加速を行いつつ魔具銃を乱射する妖王子とそれを援護する霊剣使いを相手に、さしもの伝説の司祭もグリュクたちだけを狙うという訳にはいかないようだった。
グリュクが呟き、改めて構える。
「このレグフレッジの輪の中心に向かって撃てばいいんだね」
「うん……多分、だけど」
裁きの名を持つ霊剣は虚空に浮いて微動だにしない。グリゼルダは少し躊躇しながらも、何が彼の手助けになればとその肩に手を添えた。
直接撃つわけではないグリゼルダの胸にも、何か確証めいたものが閃く。
これが、これほどまでのものが、霊剣に隠された真の力だというのか。
(否。吾らが記憶の継承を続ける限り――思い出と使命を忘れぬ限り!)
(霊剣は君たちを守るために、曇りなき技を捧げ、限りなき威力の武器となるだろう!)
「レンズが……見えた!」
「――――!!」
暗い月面の影側の地平の向こうに、薄っすらと見える巨大な弧。
ほんの僅か、軌道レンズが太陽光を反射しているために見えるのだろう。
グリゼルダが触れている剣士の肩の筋肉が照準のために動くのが、表面の硬い船外活動服越しにも分かる気がした。
すると、船外活動服の顔面を覆う透明な樹脂風防の窓が、黒ずんでいく。
『射線上に味方なし。対閃光防御措置を起動します。こうなれば、あなた方の未知の力を見せて頂く他ありません』
「トリノアイヴェクス、助かるよ。
あと、セオ殿下とキルシュブリューテさんを安全なところまで誘導しておいてくれ。戦ってる最中だろうから、難しいかも知れないけど」
グリゼルダの視界を覆う樹脂風防にも、グリュクのそれに表示されているらしい様々な図形が見える。
月の向こうに逃げ去ろうとしている巨大なレンズの輪郭や、最も効果的な狙撃目標がどこかといったことが、事細かに表示されているのだ。
弓となった霊剣から金色の粒子が放出され、渦巻き、天船の周囲に滞留を始めた。
それを構える剣士が、一声を発する。
「撃つよ、グリゼルダ」
「! うん!」
二振りの霊剣ではなく、彼女への呼びかけ。
グリゼルダは答えて、天船の補助で彩られた彼方の輪郭を凝視した。
そして、軌道上に閃光が溢れる。
「輝け――!」
意思の名を持つ霊剣から発した光の螺旋は、円環と化した裁きの名を持つ霊剣の内側を通過して、その見た目の径は何万倍にも肥大した。
意思の名を持つ霊剣単独で放った一撃を輝線とするならば、こちらはまさに、閃光の爆流。
亜光速で突進する縺続性超対称性粒子の奔流は一瞬で軌道レンズに突き刺さり、差し渡し1500キロメートルの透過鏡体部分を貫通する。
光は更に意思を持つかのように分岐を始め、レンズの隅々にまで威力を行き渡らせて――そして始原者復活の要となる超巨大祭器はばらばらに粉砕された。
ただそれも、月の影と月面の反射する輝きに紛れてしまい、地上においては観測を続けていた極僅かな者以外、それに気づくことはなかった。
「やった――!」
『いえ。レンズは破壊出来ましたが、僅かに遅かった』
「え……?」
背後を振り返ると、合体天船の巨大な観測・管制塔がちかちかと光信号を発している――それを読み取った船外活動服が、彼女の音声を再生しているのだ――のが見える。
『月面で還元弾が作動したようです。恐らく、最低限の降臨が可能なよう、1400年前にこの惑星に到着した時から予備を残しておいたのでしょう……』
「――!」
背筋を走る冷気に不安になって月面を見遣れば、飛散したレンズの破片の三分の一ほどが月へと突入を始めていた。
静かにかき回された水底の泥のように、月の裏側の日の当たる部分が小さく煙るのが見える。暗い部分も、大きな破片が衝突すると一瞬だけ落下点が光った。
「…………」
グリュクも、彼女と同じように月面を見つめている。
月面を走る、昼と夜の境目を。
いや、正確には、月の丸みに沿って伸びているはずのその境界に生じた、不自然なくぼみを。
月の直径の1/5ほどもあろうかという、巨大な径のクレーター。そこにも陽光が差し込んでいるため、暗い部分が湾曲のように見えたのだ。
月の裏側のことなど歴代の霊剣使いの記憶になどないのだから、あの巨大なすり鉢も元からあったものなのだろうと考えそうになったその時、更に奇妙な地形が目についた。
クレーターの中心から、日時計の針のように、何かが突き出ている。
「え……あれが……?」
『全高推定300キロメートル、推定重量2兆8千億トン……あれが始原者です』
翼を畳んで佇む鷹。それは半ば月面に埋没したようになってはいるが、確かに隕石霊峰で見た未来視での形状に似ていた。
意思の名を持つ霊剣が、刃噛みする。
(許してしまったか、再臨を!)
『ですが、地表への現出は防ぎました。現在最大効率で加速器を修復再生中です。残り18.67時間。完了次第、最大出力で攻撃を――』
その瞬間、始原者が閃光を発した。輝度を抑えようと樹脂風防が黒ずむと、どうやら始原者の麓らしき場所で巨大な爆発が生じているらしいことが分かる。
『始原者は核衝撃推進で月の重力圏を離脱するつもりのようです! お二人共、先ほどの連携、もう一度可能ですか!』
(すまない、無理っぽい感じだ)
(吾人に至っては意識を保つのがやっとだ……すまぬ)
気がつけば、二振りの霊剣はいずれも元の形態に戻っていた。
グリゼルダが宙に浮いていた相棒を握ると、彼も意思の名を持つ霊剣も、息絶え絶えといった様子で答える。
「核衝撃っていうと……状況から察するに、強烈な爆弾か何かを爆発させて、その反動で宇宙に上がろうとしてるってことかな? でもあれ、2兆8千億トン? くらいあるって言ったよね」
グリュクが推測と疑問を口にすると、始原者から再び閃光が生じる。
「……! また爆発した……?」
『タイミングを合わせて複数を、何度にも分けて起動するのです。月にはほとんど大気がないため、気化した弾体と岩盤が熱で膨張する圧力と光圧のみで上昇させる訳ですが……それでも次第に速度は上がり、あの青い星へと突入する軌道に入ることでしょう。大質量の内の数千分の一も使えば可能なことです』
「グリュクくん! グリちゃん!」
天船の説明を聞いていると、船外活動服の音声再生機能がキルシュブリューテの声をグリゼルダたちの耳に届けた。文句を言うつもりはないものの、グリゼルダに対する呼び方は引っかかるものがあったが。
「霊剣たちもお疲れ様! すごい威力だった……だけど」
『残念ながら、始原者の復活を許しました。これより、本船の全戦闘力を持って始原者の地上への降臨を阻止します。ご協力ください』
「具体的にはどうするつもりだ」
セオが尋ねると、希望を取り戻しつつあるらしい天船が説明する。
『現在断続的に閃光を生じている始原者の底部、あそこでは原子核融合の原理を使用した激烈な推進力が作用しています。まずはあの機構を停止し、始原者最大の移動手段を止めます。軌道変更さえできなくしてしまえば、始原者の急所に一撃を見舞う見込みがあると考えます』
今度は、グリュクが質問した。
「その隙に地上が攻撃される可能性はないかな?」
『始原者といえど、活動には通常物質を大量に必要とします。軌道上で足止めされたまま、護衛船団もない本体単独で戦うことは避けたがるでしょう。攻撃を避けて、とにかく地表への降下を目指すはずです』
「その判断を信じてやるしかない、か……」
ただ、と、グリゼルダは懸念を述べる。
「どうしよう、肝心の武器が……レグフレッジはしばらくダメそうだし」
(すまない……でも記憶が吹き飛ばずに済んでるのが奇跡だよ、あの破壊力を私とミルフィストラッセとの二振りだけで生み出したことになるわけで)
『やはり体当たりで。脱出船の準備を続行します』
「そんな時間あるのか?」
「あーあの、それなら」
キルシュブリューテが手を挙げると、その場の全員が彼女に顔を向けた。
特に言い淀むこともなく、赤みがかった金髪の霊剣使いは先を続ける。
「私とアリシャフトと……それぞれの霊剣とで、似たようなことが出来るの。かなり近づかないと効き目がないけど」
通路にあふれていた金色の粒子は消え去り、仮初の肉体を得た太陽の名を持つ霊剣が天船に尋ねる。
(トリノアイヴェクス、聞こえているだろう! 今の状況を教えてくれ!)
『既に状況を把握しております。先ほど破壊された特殊砲に代わって、霊剣の戦士二名が軌道レンズを狙撃、破壊に成功しました』
「え、ホントですか」
「朗報ね」
唐突にもたらされた吉報に素直に反応できたのはフェーアとカトラだけで、他の面々はアダも含め、どう反応していいかわからない有様だった。
「え、じゃあ……任務は終わり?」
『いえ、まだ悪い知らせがあります』
救出されたヴィットリオが拍子抜けしたように尋ねると、天船が凶報の内容を切り出した。
『始原者自体は再臨してしまいました。月の裏で還元弾が作動し、レンズが破壊される直前にそれを材料に月面に現出したようです。
現在、始原者は月面を離陸し、地上に降下してこの星の全てを滅ぼすつもりです』
設備の整っている管制指揮室ではないため、気の利いた図像表示の類は無い。
天船の話し方がやや冗長と感じたか、今度はタルタスが質した。
「追うのだな」
『はい。そのため本船は全エネルギーを防御に割き、まずは推進装置の破壊を試みます』
「特殊砲無き今、破壊の手段は?」
『あるようです。ですが、フォンディーナ突入班の皆さんで共有して頂いた方が話が早いかと思います』
「そういうことなので、ここから先は任せてもらいましょうか」
いくつかある減圧室の扉が開き、そこから出てきた霊剣使いの女が、思いがけず集まった一同に概要を説明した。
「分の良い賭けと言ったら、言い過ぎかも知れないけどね」
「キルシュ、ホントにやるの?」
「やるしかないでしょ」
少年の問いかけに、魔女が答える。
「命の危険を厭わず戦った先人たちがいるからこそ、今の私たちと、霊剣の系譜がある。
それだけは、たとえ始原者でも揺るがせない事実だと思うから」
(主よ、吾人も最後の力を振り絞るぞ……!)
意思の名を持つ霊剣も意気込むが、グリュクはそこで、釘を差した。
「お前は無理するな。俺たちが何を守りたくて戦ってるのか、忘れたわけじゃないだろ」
(む、それは……)
「御大層な言葉になるけど、いつの間にかこれは、人類の歴史を守る戦いになってた。
そして霊剣は、言ってみればその生き証人みたいなものだろ? お前はたった700年だとか言いそうだけど……
始原者を倒して、俺たちは死なずに明日からも生きていく……っていうのは、虫のいい話かも知れないな。
でもそれをやって見せなきゃ、俺たちが旅をしてきた意味が無くなる。
この先も、俺や俺に力を貸してくれた人たちの記憶を、受け継いで行ってくれよ」
(ぐ……いきなりそれっぽいことを言いよってからに……!)
「俺何も悪いこと言ってないよね!?」
苦情を呈すると、フェーアやカトラなど、複数が笑った。
それが収まるのを見計らっていたかのように、天船が全員に聞こえるように通信を行った。
『それでは、最終作戦を決行したいと思います。私から作戦案を提示しますが、簡素ながら打ち合わせを行いますので、提案があれば教えて下さい』