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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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94 とりあえず解決?

「ミア、大丈夫?!」


両肩を持たれて、誰かに揺さぶられてる…

あれ、そっか、目をつむってるから暗いんだ。

ゆっくり目を開けると、目の前にマリーさんの顔が見えた。


「あれ…?」

「大丈夫?何ともない?」

「はひ…何とも…ないと思う…」


クルトさんもレイアさんもフィランダーさんも心配そうに見てる…

えっと…杖を持たせてもらって…目の前が真っ白になって…


「どうなったの…?」

「とりあえず、杖を置きなさい。」

「ふぇ?…あ、うん。」


マリーさんに言われて、まだ杖を握ってたことに気がついた。

よく見ると、杖の模様のゆらゆらがさっきより明るい…よね?

どこに置こうかときょろきょろしたらレイアさんが声を掛けてくれた。


「ミアちゃん、預かるわ。」

「はい、おねがいします。」


レイアさんに渡して、手を放すと、杖はまた元の明るさに戻っちゃったみたい。

んー…何なんだろう?


「ふう…とりあえず座りなさい。

 レイアさんも座ってくださいね。

 なぜこうなったかはわからないけれど、何が起こったのかはたぶんわかるわ。」

「それはいったいどういう…」


マリーさんの言ったことに、フィランダーさんが慌てたように聞き返してる。

えと…つまり…なぜっていうのはあたしのせいなのかな…

どうしよう…大変なことになってたら…


「ミア、落ち着きなさい。

 別に大きな問題ではないはずよ。

 なぜかはわからないけれど、[揺らめく赤フレアレッド]はミアと契約がなされた状態になっているわ。」

「「「「えええっ?!」」」」


…何かきれいにそろった。

でも、あたしはもちろん、フィランダーさんもレイアさんもクルトさんもびっくりしたのは間違いないよね…


「大丈夫よ、ミアが同意すればちゃんと引継ぎはできるはずだから。」

「そ、そうか…いや、夜に大きな声をあげてしまって申し訳ない…」

「しょうがないわよ…わたしだって驚いたもの。

 わたしのときは、契約の儀式、とでも言うのかしら、そういったことをしたんですけどね。」


えと、何だかやっぱりあたしが変なのかな…

うー…どうなっちゃうんだろ。

すっごく不安だよ…


「とにかく、先に引き継いでしまいましょう。

 レイアさん、魔法士ソーサラーよね。」

「は、はい、そうですけど。」

「それなら〈魔法語ルーンワード〉に問題はないでしょ。

 わたしは覚えるのに苦労したんだけどね。

 ミア…ミア?」

「は、はひっ?!ごめんなさい…」


ちょっといろいろ考えたら、自分の世界に入っちゃってたかな…

うつむいてたら、マリーさんがぎゅってしてくれた。


「はいはい、あんまり不安にならないの。

 きっと大丈夫よ。

 とりあえず[無垢なる白イノセントホワイト]の引継ぎのときにやったことを[揺らめく赤]に置き換えて説明するから、ミアもレイアさんもしっかり聞いてね。」

「「はい。」」


あたしとレイアさんはもちろん、フィランダーさんもクルトさんも真剣な顔でマリーさんの言葉を待ってる。

ちゃんと聞いて、ちゃんと引継ぎしないとね。


「まずは引き継ぐ側、つまりミアが[揺らめく赤]を持って、こう言うの。

 〈我、[揺らめく赤]と契約を交わす者なり。

  今ここに、[揺らめく赤]を新たな契約者へと引継がんとす。

  新たなる契約者はここへ。〉

 ミアも〈魔法語〉大丈夫だし、いけるわね?」

「うん、だいじょぶ、ちゃんと覚える。」


よっし、間違えないように…

しっかりと…

覚えるぞっ。


「たぶんこのとき、さっきみたいに杖が光るから、引き継がれる側、つまりレイアさんのことね。

 それを確認して杖に触れてください。

 そして、2人で触れた状態で、今度はレイアさんがこう言うの。

 〈我、[揺らめく赤]を引き継ぎ、新たな契約を交わす者なり。

  [揺らめく赤]よ、我を受け入れたまえ。

  我が名はマリー、赤とともに歩む者なり。〉

 いけそうですか?」

「は、はい…でも…」

「でも?」

「あの…途中でマリーさんの名前が出てきたんですが…」


…うん、我が名はマリーって言ってるよね。

マリーさん、あって顔になってる。


「ごめんなさい、わたしは〈魔法語〉知らないから、契約の練習したときに自分の名前しか覚えてなかったのよ…

 だから、そこに自分の名前を当てはめればいいわ。」

「そ、そうだったんですね…びっくりしました。

 でも、それなら大丈夫だと思います。」

「我ながら、よく覚えてたもんだわ…

 内容なんてもう忘れるとこだったわよ…

 とにかく、先にやってしまったらどうかしら?」


レイアさんの方を見ると、笑顔でうなずいてくれた。

だいじょぶだよね。

よし、それじゃまずは杖を持つんだよね。


「あ…」

「どうしたの?」


杖を持ったときに、頭に何か浮かんだ気がした。

ううん、違う、杖が何か教えてくれているような…

その教えのままに杖を振っていくと、杖の先から出た赤い光が線になって残っていく。

そしてきれいな模様みたいなものが完成した。

これは…悪魔の攻撃を防ぐための力なの?


「ミア…もしかして使い方がわかったの?」

「んー、何か杖が教えてくれたみたいな…

 悪魔の攻撃を防ぐための力?」


みんなが目を丸くしてこっち見てる…

何か恥ずかしい…

って思ったら、光の線でできた模様が消えちゃった。


「意識を集中していないと維持できないものなのかしら…

 とにかく、引継ぎをすませてしまいましょう。」

「うん。

 えっと…〈我、[揺らめく赤]と契約を交わす者なり。

  今ここに、[揺らめく赤]を新たな契約者へと引継がんとす。

  新たなる契約者はここへ。〉」


言い終えると、マリーさんの言った通り杖がさっきみたいに明るくなった。

それを確認してレイアさんが杖の先をにぎる。


「〈我、[揺らめく赤]を引き継ぎ、新たな契約を交わす者なり。

  [揺らめく赤]よ、我を受け入れたまえ。

  我が名はレイア、赤とともに歩む者なり。〉」


レイアさんが言い終えたときに、杖はさらに明るく一瞬だけ輝いた。

そして、すぐに元の明るさに戻ってる。


「はい、もう大丈夫のはずよ。

 それにしても、[揺らめく赤]が親切なのかしら…?

 [無垢なる白]のときは、そんな簡単に使い方までわからなかったのに…」

「あ、でもわたしにも杖の意思みたいなものが感じられます。

 ミアちゃんがやったことと同じことはできそう。」


ふう…とりあえず無事お返しすることができたみたい…

みんなもちょっとほっとしたみたいでよかった。


「それ以上に詳しいことは、もうギルドにお世話になるとかしか無理じゃないかしらね。」

「いえ、こんなにわかってしまうだけでも十分です。

 本当にありがとうございます。」


レイアさんがフィランダーさんと一緒にマリーさんにお辞儀してる。

けど、マリーさんはちょっと困ったように笑ってる。


「まあ、よくわからないことだらけですけどね。

 とにかく、今日はこれでお開きにしましょう。」


そいえばだいぶ遅くなっちゃってる。

レイアさんとフィランダーさんには先に上がってもらって、ぱっと片付けなきゃ。

2人におやすみなさいのあいさつをして上がるのをお見送りしてから、カップを重ねようとしたら、クルトさんがカップを持ってくれた。


「ミア、私がやっておくから今日はもう上がっていいよ。

 しっかり休んで、明日はまた仕込みの方も手伝ってくれるかな?」

「クルトさん、ありがとです。

 仕込みもがんばるね。

 それじゃおやすみなさいです。」

「ああ、おやすみ。」

「おやすみ、ミア。」


何だかいろいろありすぎでもう疲れちゃった。

今日はすぐ寝ちゃいそう…おやすみなさい…



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