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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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91 おかえりなさい その1

「いい感じみたいだね。」

「うん、とってもつかいやすいです。」


今日の午前中にラルフさんが届けてくれたあたしの包丁を、実際に使ってみてる。

大きさもちょうどいいし、にぎる部分もこの間削ってもらったあとで、ピカピカにしてもらってる。

これなら皮をむくのもちょっとは早くできるかな?


「それじゃ、準備しようかな。

 ミアも、食堂の方がすんだら手伝ってもらうからね。」

「うん、がんばるー!」


食堂の準備をするために、いったん包丁を片づけとく。

道具をしっかり管理するのもプロの心得なんだよ。

クルトさんが言ってたんだけどね。

水場で布巾を2つしぼって食堂に向かう。

食堂では、マリーさんがもう準備を始めてた。


「ごめんなさい、遅くなっちゃった。」

「大丈夫よ。

 新しい包丁、試してたんでしょ?

 どうだった?」

「うん、とっても使いやすいよ。

 あ、マリーさん、布巾どうぞ。」

「ありがとう、ミアも本格的に調理補助ね。」

「えへへ、がんばります!」


マリーさんにも布巾を渡して、あたしはテーブルを拭いていく。

そのとき、カランカランとベルの音がして、玄関の扉が開いた。


「「いらっしゃいませ。」」


マリーさんと声がそろっちゃった。

この時間ならお泊まりのお客様かな?


「たっだいまー。

 あ、ミアちゃん元気してた?」

「エステルさん!

 おかえりなさいー。」


この間、うちに泊まってくれたエステルさんだった。

あれ、でも1人かな?

他の人はどうしたんだろ?

って思ってたら、また扉が開いて4人入ってきた。


「エステル、勝手に走りだすんじゃない…

 ああ、女将さん、エステルが失礼した。

 また2部屋頼みたいのだが…」

「ええ、大丈夫よ。

 ミア、ここはいいからご案内お願いね。」

「はいー。」


カウンターで鍵を取って、エステルさんたちを案内する。

って言っても、前と同じ部屋が開いてるから、そこに入ってもらうことになったんだけど。


「それでは、ごゆっくりです。

 ご飯はどうしたらいいですか?」

「ん?ああ、そうか。

 君は気が利くな。」

「めずらしー、フィルっちがほめてるー。」


エステルさんがリーダーさんをツンツンつついて笑ってる。

んー、エステルさんはやっぱりエステルさんだ…


「…お前のこともほめてやりたいんだがな。

 そうさせてくれないのはなぜかな?

 人のことを勝手に略して呼ぶしなぁ…今晩は久々に特訓でもするか。」

「ぎく…え、えっと…フィランダー隊長、わたくし、体調が…」

「つまらんネタでごまかそうとするな…

 と、すまない、食事は前と同じようにしてもらえるかな?」

「かしこまりました。」


リーダーさんに確認をお辞儀してさがろうと思ったら、もう一度声をかけられた。


「あと…いや、いい。」

「ほへ…?」

「すまない、気にしないでくれ。」

「はひ…何かありましたらまたお声かけくださいね。」


んー、どしたんだろ?

でもこっちから聞いておせっかいだったらだめだもんね。

とにかく降りて準備をしなきゃね。

階段をトントントンと降りてくと、マリーさんがもうカウンターに入ってた。


「あ、ミア、ありがとう。

 もうこっちは大丈夫だから、クルトの方を…」


そのときあたしの後ろで、トントントンと音がした。

振りかえると、さっきのパーティーの人…名前知らないお兄さんが降りてきてた。


「どうかなさいましたか?」

「すみません、武具を修理したくて、鍛冶屋に行きたいのですが、場所を教えてもらえますか?」

「あら、それは大変ね…ミア、ラルフのところに案内してあげて。」

「忙しいのにそんな…地図か何かあれば…」

「いいえ、きっとこの子が一緒の方が早いと思いますから。

 それじゃミア、よろしくね。」

「はーい。」


お兄さんはちょっと迷ったみたいだったけど、丁寧にお辞儀してよろしくお願いしますって。

そういうわけで、お兄さんを案内することになった。


「えーっと、ミアさんだよね。

 わざわざありがとう。」

「だいじょぶです。

 えと…」

「ああ、ごめん、僕はクレメンテ、よろしくね。」

「クレメンテさん、よろしくです。」


そのあと、クレメンテさんとお話しながら鍛冶屋さんに向かったの。

クレメンテさんは斥候スカウトっていう職業クラスで、迷宮とかの罠を解除したり、逆に仕掛けたりみたいなこともするんだって。

他にもいろんなことを任されてるみたいだけど、難しいこともあるからって。

そんな話をしながら、鍛冶屋さんに到着した。


「あ、エレインさん、こんにちはー。」

「あら、ミアちゃん、包丁どうだった?」

「ばっちりですー。」

「よかったわ。

 そちらの方は?」


カウンターにいたエレインさんが、クレメンテさんの方に目を向けた。

わざわざあたしに案内するようにってマリーさんが言ってくれたんだから、ちゃんと紹介しなきゃね。


「あ、うちにお泊まりのお客様です。

 武具の修理をお願いしに来たんです。」

「そうですか、いらっしゃいませ。

 どのような感じになっておられるのでしょうか?」

「あ、これですけど…」


そういってクレメンテさんが持ってた剣と盾を見せて説明してる。

エレインさんがそれを聞いてメモを取って…

って何度かやりとりして、無事お願いできたみたい。


「白枝亭なら、またこちらからご連絡差し上げますね。」

「すみません、ありがとうございます。」

「いえいえ、うちも白枝亭には贔屓にしていただいてますので。

 ミアちゃんもありがとう。

 クルトさんとマリーさんによろしくね。」

「はいー、それじゃまたですー。」


エレインさんにあいさつして、クレメンテさんと帰ることにした。

クレメンテさんが心配してくれたから、ちょっと早足で帰ることになったんだけど、ちゃんと準備に間に合うように帰れるかな?

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