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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
91/130

90 完成

「いらっしゃいませ。」

「おはよう、今日もいつもの頼むよ。」

「はい、かしこまりました。」


今日も朝の食堂はいつも通りのにぎわいです。

朝と夜がちょっと涼しすぎるかなって思うけど、そんなのには負けません。

だって…


「おまたせしましたー。」

「おっ、来たね、ありがとう。

 そういえばミアちゃんも今日から衣替えかい?」

「はい、朝がちょっと涼しいから。」


そう、袖の長い服に替えたんだよね。

生地はそんなにぶあついわけじゃないけど、袖があるだけで結構違うんだよね。

エプロンは一緒なんだけどね。


朝の食堂も無事終わり、お片付け。

せっかくの長袖も、水場でのお仕事のときだけは、ちゃんと袖をまくらなきゃいけないんだけどね。

油が冷えて固まったりしてるとお湯を使って洗い物をすることもあるんだよね。

でも洗うのに全部お湯を使うほど沸かしてられないっていうのもあって、水を使う方が多い。

あと、お湯ばっかりだと、手が荒れちゃうのが早いんだって。

ただやっぱり、お湯を使ったあとに、お水を使ったりすると冷たさがしみます…


片付けがだいたい終わって、次はお部屋の掃除と洗濯。

マリーさんと手分けして、お泊りのお客様が出発した部屋のシーツや布団をまとめて掃除をする。

布団を干したり、シーツを洗ったりもしなきゃいけないから、たくさん出発されると大忙しだったりするんだよね。

ちょうど掃除をしてるときに、クルトさんが上がってきた。


「ミア、今日のお昼の後、少し時間はあるかな?」

「今日は何も予定がないからだいじょぶです。」

「それなら、少し時間をもらっていいかな?」

「はい、いいですよー。」


それだけ確認してクルトさんは降りてった。

んー、何だろ?お買いもののお手伝いとかかな。






お昼の営業も終わって片付けも一段落。

ちょっと休憩してから、クルトさんと出かけることになった。

マリーさんも話を聞いてたみたい。

宿を出て進んでいく先は、市場とはちょっと違う方向。

こっちは…あ、もしかして


「鍛冶屋さんに行くの?」

「そうだよ。

 この間頼んでいた包丁が仕上がったって連絡があったからね。」


そっかー、どんな風になってるかな?

何だかわくわくしてきた。

鍛冶屋さんに着いて、中に入るとカウンターには小柄な女の人がいた。


「いらっしゃいませ。」

「こんにちは、エレインさん。」

「あ、クルトさん、お待ちしてましたよ。

 ちょっと待っててくださいね。」


そういうと、エレインさんは奥に入っていった。

今の人は誰だろう?

って思ってたら、ラルフさんが来た。


「クルトさん、こんにちは。

 父さんもすぐ来るので、先に物を確認してもらえますか?」


そういって、布にくるまれた物をクルトさんに差し出した。

包みを開けると、ピカピカの包丁。

あたしが持ってきたのとはだいぶ違う感じだけど、クルトさんはそれを握ってみたり、回していろんなとこ見てる。


「うん、さすがだね。

 この短期間で仕上げてくれるのはボルトさんとこだけだよ。」

「ありがとうございます。

 俺も早くできるようになりたいんですけどね。」

「ああ、期待しているよ。

 そうそう、マリーがこの間の剣は全く問題ないと伝えてくれって。」

「そうですか、よかった。」


そうこうしているとボルトさんと、エレインさんが戻ってきた。

ちょうどお仕事中だったみたいで、とっても暑そう…


「やあ、クルトさん、ちょうどとりこんでてすまない。

 母さん、お茶を頼む。」

「はいはい、いってきますね。」


…あれ?えと、エレインさんってボルトさんの奥さん?

ってことは…


「あの…エレインさんってラルフさんのお母さんですか?」

「へ?ミアちゃん知らなかったのか…

 俺の引退式のときも、白枝亭にいたんだけど…」

「はわわ…覚えてないです…」


あのときは、まだあんまり誰も知らなかったし、お客様が多くて全然覚えてなかったよー…

それに、ラルフさんのほうがエレインさんよりずっとおっきいんだもん…


「さて、クルトさん、仕上がりの方は問題ないですか?」

「ええ、いつも通りばっちりですよ。

 この品質でこの納期だから、ボルトさんのところに頼ってしまうんですから。」

「いやいや、わしらがつくったものをあそこまで使ってもらえるのは、わしらにとってもありがたいことでしてな。

 さて、もう1つの注文の方だが…ラルフ、出してくれ。」


ラルフさんが、さっきと同じような布の包みを出して、あたしに差し出してくれた。

ぱっと見てわかるのは、さっきのよりちっちゃいこと。

あたし用、ってそういうことなのね。


「とりあえず持ってみてくれるかな。」

「あ、はい。」


包みを開けて包丁を取り出して持ってみる。

クルトさんの包丁よりちっちゃいけど、あたしが使うにはちょうど良さそうな長さになってる。


「ふむ、まずまずといったところかの。

 にぎりが少しごついか…削ってみるかな。

 ミアちゃん、ちょっと貸してもらえるかの。」


ボルトさんに包丁を渡すと、その場でにぎるところを削ってく。

あたしはあんまり違和感なかったんだけど、ぱっと見ただけでわかっちゃうのかな?

それってすごいよね…


「ふむ、こんなものか…

 ミアちゃん、もう一度握ってもらえるかの?」

「あ、はい。

 …ふぁ…すごい、ぴったり!」

「いい感じだの。

 それじゃ、こっちはしっかりと仕上げをしておくからの。」


包みの布と包丁をボルトさんに返す。

今でも十分すごいのに、まだ仕上げが残ってるんだ。

大変なんだね…


「あらあら、もしかしてお話は終わっちゃいましたか?

 おまたせしてしまいましたね、どうぞ。」

「ああ、ありがとうございます。」

「いただきますー。」


ちょうどエレインさんがお茶を持って戻ってきたので、そのままちょっとお茶会モードに。

涼しくなってきたから、あったかいお茶がおいしい。

ボルトさんとラルフさんは冷たいお茶っぽい。

だって…カップの中で浮かんでるのって、きっと氷だよね。

ボルトさんは一気に飲み干してる。


「っふぅー、体に沁みる…」

「ボルトさんたちは冬でも冷たい飲み物が必要みたいですね。」


クルトさんがそんなボルトさんを見て言った。

そしたらボルトさん、はっはっはっておっきな声で笑って答えてる。


「まあ、1年中、火と向き合ってますからな。

 母さんのおかげで仕事もはかどるし、休憩も幸せですな。」

「ふぇ…エレインさんの?」

「母さんは魔法士ソーサラーなんだよ。

 赤と緑を使えるから、火も扱えるし、温度を下げて水を凍らせることもできるんだよ。」

「まあ、ラルフみたいに冒険者になったことはないですけどね。

 一応魔法士ギルドの一員なのよ。」


んー、もう何だかびっくりすることだらけで、いろいろ聞いてみたいとも思ったけど、お仕事の邪魔もできないよね。

クルトさんが包丁の代金を支払って、帰ることになった。

ラルフさんが外まで見送りに来てくれた。


「ミアちゃんの分は、仕上がったらまた届けますね。」

「ああ、悪いね、助かるよ。

 それじゃまた。」

「さよならですー。」

「ありがとうございました。」


短い時間だったけど、何だかいろいろあったりびっくりしたりでちょっと疲れちゃった。

夕方の準備まで、今日はちょっとお部屋で休憩にしようかな…

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