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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
88/130

87 修理できますか?

「こんにちはー。」

「いらっしゃいませ。

 お、ミアちゃん、どうしたんだい?」

「クルトさんのお使いです。」


そう、お使いで鍛冶屋さんに来てるの。

朝の食堂の営業が終わって、片付けしてたら、クルトさんに声をかけられたんだよね。






「ミア、ちょっとお使い頼まれてくれるかい?

 マリーには私の方から言っておくから。」

「はいー、何を頼んできたらいいですか?」

「うん、これを持って鍛冶屋さんに行ってきてほしいんだ。」


渡されたのは包丁だった。

でも、途中の刃が欠けてる。

どうしたんだろ?


「実は、昨日の晩、ちゃんと置いてなかったみたいで、今朝見たら床に落ちてたんだけどね…

 どうもそのときに欠けてしまったみたいなんだ。」

「はぅ…じゃ、修理してもらうの?」

「うーん…ちょっと欠けが大きいから、修理できそうなら頼んでもらいたいんだけど、無理そうなら同じものを注文してきてほしいんだ。

 これはボルトさんにつくってもらったものだからね。」


ボルトさんっていうのはラルフさんのお父さん。

つまり鍛冶屋のご主人さん。

そんなわけで、鍛冶屋さんへのお使いを頼まれたあたしは欠けた包丁を受け取って、すぐに向かおうとしたんだけど、また声をかけられた。


「そうだ、ついでにミアも自分の包丁をつくってもらってきなさい。」

「ええっ?!」

「最近、料理もがんばってるじゃないか。

 自分用の包丁を持つのも、上達するためのきっかけになるかもしれないよ。」

「そう…なの?」

「ああ、支払いの方は、今度私が行くからって伝えてくれればいい。」






とにかく、あたしも自分にあった包丁をつくってもらわなきゃいけない。

でもまずは持ってきた包丁を見せなきゃね。


「えっとね、まずはこれです。

 刃が欠けちゃったから、直せそうなら直してほしくて、無理なら同じのがほしいのです。」

「ん、ちょっと見せてくれるかな。

 …あー…厳しいかもしれないな…ちょっと父さんに聞いてみるよ。

 待っててくれるかな。」

「はーい。」


ラルフさんが、包丁を持って奥に入っていった。

奥は作業場になってて、とっても暑いっていってたけど、お店になってるここは全然暑くないよね。

壁際とか棚とかに、いろんなものが並べてある。

小さなナイフやお鍋、畑で使うクワとかも置いてあるね。

あ、カウンターの後ろにあるのって、剣かな…?

きょろきょろしてたらラルフさんが戻ってきてた。


「ミアちゃん、ここにあるものが珍しいみたいだね。」

「はいー。

 いろんなものがありますー。」

「父さんは何でもつくってしまうからなあ…

 自分の親ながら、大したもんだと思うよ、ほんと。」


そんな風に言ってるラルフさんは、ちょっと嬉しそう。

きっと、とっても自慢のお父さんだね。

ふとラルフさんが思い出したようにあたしの方を見た。


「ごめんごめん、包丁のことを聞いてきてたのに。

 やっぱりあれ、ちょっと研ぎ直すだけじゃ難しいみたいだから、新しいのつくるよ。

 出来次第、連絡入れるから。」

「はーい。

 あと、もひとつあるです。」

「ん?っても修理はあれだけだよね。

 何か足りないものでもある?」

「えっと、あたしの包丁もつくってほしいです。」

「ミアちゃんの?」

「はい、クルトさんにつくってもらったらいいって言われたの。」


ラルフさんが不思議そうな顔してる。

んー、やっぱりあたしが包丁とか変なのかな…

しょぼん…


「あ、ごめん、その年で自分の包丁とか、すごいと思って…」

「ほへ?自分の包丁って、すごいのですか?」

「そうだね…例えばクルトさんみたいに料理を仕事にしてるような人は大概持ってるけど。

 ま、クルトさんの見立てなら間違いないだろうし、どうせなら親父に見てもらいなよ。」


そういうと、またラルフさんは奥に入っていった。

今度はさっきよりすぐにボルトさんと一緒に戻ってきた。

ボルトさんは汗をふきふきしてる。

やっぱり奥は暑そうだよね…


「こんにちはです。」

「おう、こんにちは。

 ミアちゃん、自分の包丁だって?」

「はい、お願いしますー。」

「じゃあ、ちょっと手を見せてくれるかな。」


そういうと、ボルトさんはあたしの右手をとって、じーっと見てる。

たまに横に向けたり、また元に戻したり。

そして、顔を上げてあたしの方を見る。


「ようし、それじゃミアちゃんの分も合わせて打っておくから、楽しみに待っててくれい。」

「はいー、よろしくお願いします!

 あ、そだ…支払いは今度クルトさんが来るって言ってたです。」

「ああ、わかった。

 クルトさんにもよろしく伝えて置いてくれい。

 ラルフ、準備だ。」


ボルトさんはそのまま奥に入っていった。

それじゃあたしも白枝亭に戻らなきゃね。


「じゃあミアちゃん、またね。」

「はい、またですー。」

「あ、そうだ、1つ頼まれてくれるかな?」

「はひ?」

「この前の剣、問題ないかどうか、また教えてほしいって伝えてもらえるかな。」


この前の剣…ってそういえばラルフさんとボルトさんが協力してつくったっていってたね。

でも、マリーさん、受け取ってから使ってないんじゃ…

だって、剣って戦うために使うんだよね。

とにかく伝えればいいのかな?


「じゃ、マリーさんに伝えますね。」

「よろしく頼むよ。」


お店の前まで見送ってくれたラルフさんに手を振って、白枝亭に帰る。

自分の包丁っかあ…ちょっと楽しみだけど、その分がんばらなきゃね。

あれ、そういえばどれくらいで完成するのかなあ?

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