84 お出かけの約束
昨日厨房で見た[火結晶]のことを、ゼル先生に尋ねようと思ってたんだけど、もっと身近に聞ける人がいたんだよね。
朝の食堂のときに、アリサさんを見かけて、ちょっとお話が聞きたいってお願いしたら、お昼前の休憩のときに、時間をつくってもらえたんだ。
「[火結晶]ですかー?
確かにー、魔法士ギルドにはー、あると思いますがー、あれはー、普通の人はー、買えませんよー?」
「[火結晶]や[光結晶]以外にも、魔法が使えるものってあるんですか?」
「ありますよー。
[水結晶]やー、[闇結晶]などですねー。」
「それって、どんな効果があるんですか?」
「[水結晶]はー、《水浄化》ですねー。
汚れてる水でもー、きれいにすることがー、できるのでー、冒険者だとー、持っている人もー、いますよー。」
そっか、確かにいつもきれいなお水があるとは限らないもんね。
[光結晶]や[水結晶]は、結構便利に使えそう。
「[闇結晶]はー、《闇》ですがー…何かをー、隠したりするのにー、使えるー…のかしらー?」
「ふぇ…?《闇》ってどんな魔法なんですか?」
「黒色はー、わたしにー、あまり縁がないのでー、詳しくはー、ないのですがー、光をー、遮る空間をー、つくるみたいですよー。」
「んー…ただ暗いだけじゃないんですか?」
「そうですねー、ロウソクやー、ランプの明かりではー、照らせないそうですー。
《光》などのー、魔法の光ならー、打ち消し合うそうですー。」
ふーん…何だかいまいちイメージがわかないや…
そいえば、妖魔族の人たちは、黒色魔法が使えるんだよね…
もしかして、鱗妖のレイアさんとか、翼妖のエメットさんなら使えるのかな?
今度泊まりに来ていただけたら聞いてみようかな。
「もしー、ミアちゃんがー、興味ありましたらー、魔法士ギルドにー、行ってみますかー?」
「ほへ?ギルドに入ってなくても行っていいんですか?」
「大丈夫ですよー。
でないとー、ギルド外の人がー、お買い物することがー、できないのでー。」
「あ、そっか。
んー、ちょっと行ってみたいです。」
「わかりましたー。
それではー、午後のー、休憩のときとかはー、どうでしょうかー?」
今日は特に予定もないし、だいじょぶだよね。
あ、でも一応マリーさんたちに聞いておいた方がいいかな。
「たぶんだいじょぶだと思いますけど、マリーさんたちにも聞いておきます。
アリサさん、お昼もうちで食べますか?」
「はいー、そのつもりですよー。」
「そしたら、そのときにちゃんと返事しますね。」
「わかりましたー。
それではー、ちょっと今からー、出かけてきますねー。
お昼ご飯にはー、戻ってきますのでー。」
「はーい、ありがとーございました。
いってらっしゃいです。」
アリサさんをお見送りして、結構時間が過ぎてたことに気付いた。
もうちょっとしたらお昼の食堂の準備にかからなきゃいけないし、下に降りとこ。
エプロンをつけて、自分の部屋を出て鍵をかけたら、そのまま食堂に直行した。
ちょうどマリーさんも来たところみたい。
「マリーさん!」
「あら、ミアもちょっと早めに来てくれたのね。」
「うん、もうすぐだったし。
えっとね、今日って午後の休憩のときに、お出かけしてもだいじょぶかな?」
「大丈夫だと思うわよ。
あ、でもクルトにも聞いておいてね。」
「はーい、
じゃ、先に聞いてくるね。」
テーブルをふいたりするのに、布巾も絞ってこなきゃいけないし、ちょうどいいよね。
厨房に入ると、クルトさんもそろそろ準備に入ろうとしてるとこだった。
「あれ、ミア、まだちょっと時間あったんじゃないかい?」
「うん、でもちょうどよかったからいいの。
今日の午後の休憩のときに、お出かけしてもだいじょぶかな?」
「ん?別にかまわないよ。
そんなに急ぐ仕事もないし。」
よかった、アリサさんが来たら報告しなきゃね。
クルトさんにもありがとーって言ったら、ふと気付いたようにつけたして言った。
「そういえば、マリーにはもう聞いてるかい?」
「うん、マリーさんもだいじょぶって。」
「それなら問題ないよ。
ま、そろそろ準備しようか。」
「はーい。」
水場で布巾を2つ絞る。
あたしの分とマリーさんの分。
テーブルをふいたら、今度は厨房のお手伝いがあるし、早めにどんどんやっていかなきゃね。
さあ、しっかりお手伝いして、お片付けもがんばって、できるだけ早くお出かけできるようにしなきゃ!