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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
83/130

82 おっきな音が苦手なの

ゴロゴロゴロッ!

大きな音が聞こえて思わず耳を押さえてしまう。


「あうー…」

「それにしてもひどい雨になってきたわね。

 ミアちゃん大丈夫?」

「うー…」


今日はユーリさんのとこに遊びに来てたんだけど、急に空が暗くなって、強い風が吹き始めて、雨が降り出した。

そこまではよかったんだけど、雷が鳴りだしてしまって、とっても怖い…


「ちょっとうるさいけど、建物の中ならたぶん大丈夫よ。」

「でもでも…」

「しばらく待ってれば、きっと雷も治まって雨もやむわ。」


笑いながら、ユーリさんはあたしとゼル先生のカップにお茶を注ぎ足してくれた。

でも、あのおっきい音はほんとに怖いんだもん…


そのとき、また扉の隙間がピカッと光ってゴロゴロゴロッてすごい音がする。

両手で耳を押えても、音は聞こえるんだよね…


「自然の雷には敵いませんが、魔法でも雷をつくることができるのですよ。」

「ええっ?!そんなのいらないです…」

「これは随分と嫌われてしまったみたいですね。」


ゼル先生がそう言って苦笑して、ユーリさんもクスクス笑ってる。

もしかして先生は雷の魔法が使えるのかな…


「それでは、ミアさんの気が少しでも紛れるように、魔法の話でもしてみましょうか。

 雷の話も出てきてしまうので申し訳ないですが…」

「はう…でもお願いします!」

「わかりました。

 私が青と緑の魔法を使えるのは以前にお話ししましたね。

 青は水や守りを象徴し、緑は風、奪取を象徴しています。

 ですから単独で使えば…」


そこで言葉を切って、先生はカップに残ってるお茶を飲んでしまって、ワンドを取り出す。

カップの上にワンドをかざして集中する。


「《水作成クリエイトウォーター》」


ゼル先生が唱えると、ワンドの先から水が流れ出してカップにたまっていく。

そしてあふれそうになる前に軽くワンドを振ると水の流れが止まった。


「このように、象徴するものを扱う魔法が使えるわけですね。

 では、ここに緑を加えるとどうなるか…たとえば青の魔法で《保護プロテクション》というものがありましたね。

 この守りの力に、奪取するという緑の力を加えると…

 ユーリエくん、何か適当なものはないですか?」

「適当なものって…あ、ゆで卵でもいい?」

「なるほど、いいですね。

 お願いします。」


ゆで卵…がどうなるんだろ?

って思ってたらユーリさんが奥からゆで卵を持ってきて渡してくれた。


「さて、持ってきてもらったのは普通のゆで卵です。」

「はい…そですよね?」

「これに魔法をかけてみましょう。

 テーブルに置いてもらえますか?」


ゼル先生の指示通りにゆで卵をテーブルに置いた。

ゼル先生がワンドをかざして集中する。


「《防御弱化ウィーケン》…もう一度、卵を持ってみてもらえますか?」

「はひ…」


ゼル先生が魔法をかけたゆで卵は、見た目はあんまり変わった感じがしない。

でも、手に取ったときにその違いがわかった。

ちょっと力が入っちゃっただけなのに、殻が簡単に割れちゃったんだ。


「ゼル先生…これって…」

「はい、守りを奪われたわけですね。

 このように2つの色の象徴するものを合わせた魔法が使えるようになるわけですが、さらに違った特性も表すことができるのです。

 例えばこのように…と、ここではまずいですね。」

「先生…うち、壊さないでね?」


ゼル先生が止まってしまって、ユーリさんは何か思い当たったみたい。

一体何をしようとおもってたんだろ?


「今日は実演はやめておいた方がいいですね。

 外は雨ですし…

 実は、青と緑を重ねることで、新しく2つの特性を扱うことができるのです。

 その1つが、先程ミアさんが怖がっていた雷の力ですね。」

「ふぇ…ゼル先生、雷が出せるんだ…」

「そうですね。

 まあ、主に敵を撃つような魔法になるので、めったに使いませんが…

 大丈夫ですよ、ミアさんに向けて撃つことなんて絶対にありませんから、そんなにイスの端に寄ってしまうと落ちてしまいますよ?」


うん、でもやっぱり何となく怖いよね…

ゼル先生、実はすっごい強いんじゃないかな?


「そして青と緑を重ねて扱えるもう1つの特性が、破術です。」

「破術?」

「はい、例えば先程のゆで卵は、魔法の効果が切れるまでは、軟らかくなってしまっているわけですが、その効果を無理やり打ち消してなくしてしまうような力のことですね。

 この系統の魔法を極めると、強力な結界を破ったりすることもできるそうです。

 私はそこまでの力を扱うことはできませんがね。」


ふーん…何だか、すごくたくさんの種類の魔法が使えるんだね…

あ、だから2色以上だと魔法士ってことになるのかな?

きっとそうだよね。


「さて、少しは気が紛れたでしょうか?

 いつの間にか雨もだいぶ弱くなってきていますね。」

「あらほんと、音があんまり聞こえないわ。

 よかったわね、ミアちゃん。」

「はい!

 ゼル先生もありがとーです。」


お話を聞いている間、ちょっと雷のこと忘れられてたかも。

最後に思い出しちゃったけど、結局あの後は雷鳴らなかったのかな?


「ずいぶんと長居をしてしまいましたね。

 私はお先に失礼させてもらいます。

 ユーリエくん、ごちそうさまでした。」

「おそまつさまです。

 また来てね、先生。」


にっこり笑って会釈して出ていく先生が開けた扉の向こうでは、もう雨が上がりそうだった。

あたしも夜の準備があるし、そろそろ帰らなきゃね。


「ユーリさん、あたしもそろそろ帰るね。」

「そっか、準備しないとね。

 ミアちゃん、がんばってね!」

「はーい、ありがとです!

 それじゃ、またですー。」


手を振るユーリさんにあいさつして、お店の外に出た。

外は雨も上がって、だいぶ明るくなってきてる。

ふと空を見て、あたしはとっても素敵なものを見つけてしまったから、今出てきた扉の中に声をかけた。


「ユーリさーん、おっきな虹が出てるよー!」



この後、ちょっとだけ帰るのが遅くなっちゃったけど、準備にはちゃんと間に合ったんだからね?

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