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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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79 お呼ばれしました その2

宿から出てきた人(もちろんこの人も上品な服を着てる…)に案内されて中に入ると、ぶ厚いじゅうたんがしいてあるロビーが広がってた。

置いてある調度品も高そう…

やっぱりあたし、場違いな気がする…


そのままついていくと、廊下を通って部屋の扉の前にたどり着いた。

案内してくれた人がノックして中に声をかけてる。


「ミア様をお連れしました。」

「いいよー。」


中から声がして、案内してくれた人が扉を開けてくれた。

促されて中に入ってみると、そこは応接室みたい…宿なのに…

そして、ソファーに座ってたのは、アルくんとメリーちゃんだった。


「ミアねーちゃん、久しぶりー!」

「わーい!」

「アルくんもメリーちゃんもほんと久しぶり、元気だった?」

「うん、メリーも僕も元気だよっ!」


アルくんとメリーちゃんが、ソファーから駆けよってきた。

はー、知ってる人に会えて、ちょっとほっとしたよー。

アルくんやメリーちゃんにとっては、これが普通なんだろね…


「坊ちゃま、私は表に控えておりますので、何かありましたらお呼びください。」

「あ、うん。

 そうだ、お茶を用意しておいてよ。」

「かしこまりました。」


んー…やっぱりアルくんはいいとこのお坊ちゃんなんだね…

召使いさんとかいるのも普通なんだ…

その人が出ていって、あたしたち3人だけになったところで、あたしは両手を2人につかまれて、ソファーまで引っ張っていかれた。


「きゃっ、ちょっとそんなに引っ張ったらあぶないよー。」

「まずは座ってもらわなきゃ、な、メリー。」

「ねー、おにーちゃん!」


何だろ?2人が何かを考えてるっぽいのはわかったけど…

そのままソファーに座らされたあたしの前に、2人が並んで立った。


「ミアねーちゃん。」

「おねーちゃん。」

「この間はほんとに」

「ほんとーに」

「「ありがとーございました!」」


…最後のところは2人できれいに声をそろえてお辞儀してる。

この間って、迷子のことよね…

もしかしてこれを言いたかったってことかな?


「ううん、別にあたしは何もしてないよ。

 一緒に教会に行っただけで、あとはシスターさんとか衛兵さんとかがやってくれたんだから。」

「そんなことないよ、ミアねーちゃんがいなかったら、僕たちずっとあそこにいたかもしれなかったし。」

「ん、でも無事戻れてほんとよかったね。」


何となくでみんな笑ってしまった。

うん、あのときのことがどんどん思い出されてきたけど、ほんとによかったよね…

そんなお礼の儀式?が終わったところで、扉がノックされた。


「お茶をお持ちしました。」

「入ってー。」


扉が開いて入ってきたのは、さっきと違って女の人だった。

きれいな模様のカップをテーブルに並べて、同じ模様のポットからお茶を注いでく。

そして、同じ模様のお皿に乗った、パンみたいなものも並べてる。

並べ終わったら、お辞儀して出て行っちゃった。

2人と相談して、とりあえずお茶しながらお話することに。


「ミアねーちゃんって、あの宿で働いてるんでしょ?」

「そうだよ、白枝亭っていうの。」

「父上に聞いたんだけど、冒険者の宿っていうんだよね?」

「うん、普通のお客様も来るけど、冒険者さんがたくさん来るよ。」

「へー、すっごいよねー…

 僕たちも、街から街に移動するときは、冒険者を雇うことがあるんだ。

 魔獣とか出たら、馬車の窓もちゃんと閉めないとダメなんだけど、1回だけ見てたことがあるんだ。

 すっごい強いよね、冒険者って。」


アルくんは、冒険者にちょっとあこがれがあるのかな?

んー…あたしも一応冒険者なんだよね。

冒険したこともないし、依頼を受けたこともないけど…

これは内緒にしておいた方がいいよね、きっと。


「それでさ、魔法で火とかぶつけたり、剣で戦ったりするんだ。

 かっこよかったなー…

 でも途中で父上が気づいて、窓を閉められちゃったんだ。」

「ふーん…あ、魔法ならあたしも使えるよ。」

「えーっ?!」


アルくんがびっくりしたのか、急に大きな声をあげた。

いつの間にかあたしの膝の上に乗ってたメリーちゃんがその声にびっくりして目がまん丸になってるし、外からも声がかかる。


「坊ちゃま、どうなさいました?」

「え?あ…何でもない、ちょっと驚いただけだ。」

「左様でございますか。」


外からの声はそれで終わりだった。

何かすごいなあ…

そこからアルくんがちょっと声をひそめて尋ねてきた。


「ミアねーちゃん、ほんとに魔法使えるの?」

「うん、あ、火を出したりは無理だよ?」

「じゃあどんなのが使えるの?」

「つかえるのー?」


アルくんのまねをしてメリーちゃんまで聞いてくる…

んー…これ、言ったら使わないとダメになるよね…

ま、《ライト》くらいならだいじょぶかな?


「えっとね、光が出せるよ。」

「光?それって強い?」

「強いって…ただの光だよ。」

「うーん…でもそれ使ってみて!」


やっぱりね…でも1回くらいならいいよね。

服の下に入れてある発動体ペンダントを出して、左手で触れて、右手を上げて集中…

もう《光》なら詠唱なしでだいじょぶだもんね。


「《光》!」

「うわぁ…ほんとに出た!」

「おねーちゃんすごーい!」


ただの光だったけど、2人には大好評だったみたい。

そのあとも、いろいろ質問されたけど、どうやって使えるようになったかって言われても…

素質の話とかしてみたけど、アルくんにはちょっと難しかったみたい。


そのあともいろいろお話したんだけど、そろそろ戻らないと夜の食堂の準備が始まっちゃいそうだったから、帰ることにした。

メリーちゃんは、もう帰るのー?ってだいぶ不満そうだったけど、アルくんはあたしが仕事してるのがわかってくれてるから、外にいる人に声をかけてくれた。


「お呼びですか?」

「ミアねーちゃんが帰るから、送ってあげて。」

「かしこまりました。

 すぐに馬車を用意いたします。」

「えぇっ?!別に歩いて帰るからいいよー?」

「ダメだよ、ミアねーちゃんは僕たちのだいじなお客様なんだから。」


歩いて帰れるってだいぶいったんだけど、アルくんは譲ってくれなくて、結局馬車で帰ることに。

またちょっと恥ずかしいかも…

少ししたら、さっきの人が戻ってきて、馬車の用意ができたことを教えてくれた。

アルくんたちは部屋を出ちゃダメみたいだから、ここでごあいさつ。


「ミアねーちゃん、また遊びにきてほしいな。

 僕たち、ずっと宿だと暇なんだ。」

「うん…

 また来れたら来るね。」


そうだよね、きっと前の件があったから、ますます宿に閉じこもりっぱなしになるんだろね…

いつまた機会があるかわかんないけど、そのときはまたお話しできたらいいな。


またあの豪勢な馬車で白枝亭まで送られたあたしは、玄関でフェリックスさんとレックスさんが出てくるところに鉢合わせて、2人が目をまんまるにして固まってしまったんだけど、その横をすっと抜けて宿に入る。

だって、食堂の準備が始まるもんね!


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