7 お願いごと
今日も晩ご飯のにぎやかな時間も終わり、後片付けも一段落した。
いつものように、厨房でほっと一息のティータイム。
ま、この後は休むだけだから、普通のお茶じゃなく、ハーブティーだけど。
普通のお茶は、飲みすぎると寝付けなくなるんだって。
絶対そんなことないと思うんだけどなぁ。いつもベッドに入ったらすぐ寝てるし。
「今日も無事終わったね。1日お疲れさん。」
「マリーもいつものでいいかな?」
「そうね、お願い。」
マリーさんが返事するよりも早く準備に取り掛かってるクルトさん。
さすがだよねー…。
「はい、おまたせ。」
「ありがと。」
手際よくお茶を淹れたクルトさんもテーブルについて、今日のことをあれやこれやと話してる。
まったりと過ぎるこの時間もあたしは結構好き。
ぼーっとしてると急に話を振られたりもするんだけど。
「でも、ミアもだいぶ慣れてきたねー。」
「ふぁ?えー、まだまだですよー…料理ダメだし…」
マリーさんからの急な振りにちょとびっくりしつつ、でもやっぱりあんまりできてないんだよね、あたし。
「そんなことないよ。ミアが来てくれてからお客さん増えても対応できるようになってるからね。」
「そうよ。助かってるわ、ほんと。」
「はぅ、ありがとーございます。」
2人からそんなにいわれるとちょっと恥ずかしい…けど嬉しいかも。
「また明日も頼むよ。」
そう言ってくれたクルトさんも、マリーさんもとっても素敵な笑顔を向けてくれた。
「さてと、それじゃそろそろ片付けて休みましょうか。」
「そうだね、あまり遅くなるとまた朝が大変だろうし。」
「あ…ちょっとだけいいですか?」
あたしから話を振ることはあんまりないから、2人ともちょっと不思議そうな顔をしてる。
実はこの間から、ユーリさんとのお出かけをお願いしそびれてたから、今日こそって思ったんだけど。
「えっと…」
話を振ったけど、ちょっと詰まってしまった。さっきあんなにほめてくれたのに、お出かけをしたいっていうのは、お休みさせてくださいってことになるから。
まだまだへっぽこなあたしを優しく見てくれている2人に何だか悪い気がしてきたから。
固まってるあたしを心配そうに見ている2人に気がついて、あわてて言葉をつないだ。
「あ、ごめんなさい。また今度でいいや。えへへ…」
笑ってごまかしてカップを片づけに立とうとしたんだけど、2人ともイスに座りなおしてる…。
「ミア。座ってちょうだい。」
「あぅ、でも…もう遅いし…」
「いいのよ。何かお願いでもあるんでしょ?」
「ふぇ?!」
びっくりした。まだ何もしゃべってないのに。
よっぽど変な顔でもしたのかな…2人とも普通に笑顔でいたのに、びっくりしたあたしを見て声をあげて笑ってる。
「な、何で知ってるの?」
「伊達に客商売をしてないってことよ。」
ふふっと笑うマリーさん、その横でやっぱり笑顔のクルトさん。
2人ともほんとにすごいなぁ…
「それで、どんなお願いかしら?」
「あぅ…えと、えとね、ユーリさんが今度の見回り強化期間に薬草採りにつれてってくれるって言ってくれたの。でもね、マリーさんとクルトさんがいいって言ってくれたら、なの。」
ふぅむ、と軽く息を吐いたクルトさんを、マリーさんが見る。
「えと、忙しかったらまた今度にお願いするから…」
「ま、いいんじゃないかな?マリーも構わないだろう?」
別にいいですって言おうとする前にクルトさんは口を開いてた。
マリーさんも笑顔でうなずいてる。
「ま、ユーリエちゃんが一緒なら問題ないだろうし。詳しい日取りが決まったらちゃんと教えるんだよ。」
びっくりするくらいあっさりの返事に、言葉が出ず首を縦に振り続けるあたしを見て、2人はまた笑ってたけど。
「それじゃ今度こそお休みましょ。ほんとに明日の朝、起きられなかったら、それこそ大変よ?」
「そうだね。あとは私がやっておくよ。マリーもミアも、先に休んでなさい。」
「あら、ありがと。それじゃお願いね。」
立ち上がった2人にあたしは後ろから思わず抱きついちゃった。
「マリーさんもクルトさんもほんとにありがとー!」
「あはは、ミアは何だか大袈裟だね。私たちだってがんばってるミアのお願いに応えることができてよかったよ。」
そう言って、頭をぽんぽんと叩いてるクルトさん。
「それじゃ、クルトに任せて先に休ませてもらっちゃいましょ。」
というマリーさんに連れられて厨房を出た。
真っ暗な食堂をランプで照らしながら階段を昇る途中で、あることを思い出してあたしは階段を降りた。
「ん?」
降りてくる気配に気づいたマリーさんが振り返った。
「マリーさん、おやすみなさい。」
ぺこり、と頭を下げたあたしに、マリーさんも「はい、おやすみなさい。」と返事をくれた。
街の外、今からドキドキしてる。
そして、マリーさんとクルトさんの気持ちが、あたしの心をホコホコにしてくれた。
この宿に来ることができてほんとによかったな♪