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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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74 旅立ちの日に

レイアさんたちは、今朝の朝食もお部屋でとることになってる。

ちょっと遅くていいからってことで、食堂の方が落ち着いてから運ぶことにさせてもらったんだ。

ちなみに今日も食堂はいつも通りにぎわってる。


だいぶ落ち着いてきたところで、マリーさんと一緒にお食事を持って2階に上がる。

今回もマリーさんが3つ持ってくれているので、あたしは自動的にレイアさんとエステルさんのお部屋に行くことになった。

扉をノックするとエステルさんの元気な返事が返ってきた。


「はいはーい、今開けるねー。」


少し下がって待ってると、勢いよく扉が開いて、エステルさんが顔をのぞかせた。

あたしの持ってるトレーを見てすっごくにこにこしてる。


「やった、ごっはん~♪

 ミアちゃんありがとね~♪」

「中まで持っていきますね。」


エステルさん、何か鼻歌歌って踊りながらついてくる…

レイアさん、ため息ついてるけど…

とにかくテーブルにトレーを置いた。


「ん~、おっいしっそ~♪」

「エステル、落ち着きなさい…」

「だって~、お腹すいたんだも~ん。」


こんなにうれしそうだと、何だかあたしまでうれしくなっちゃうね。

ご飯の邪魔しちゃだめだし、下もまだお仕事あるからお辞儀して戻ろうとしたんだけど、エステルさんが話しかけてきた。


「にぁひゃん、あひょれ…」

「エステル、ご飯食べながらしゃべらないで…」

「もごもぐ…んぐ…ふひぃ…

 あ、えとねミアちゃんあとでうちの部屋寄ってね。

 昨日行ってた子紹介するから。」


うん、それはわかったけど…エステルさん…ちょっとすごかったよ…

食堂に降りるとお客様も減ってて、そのままあたしも片付けに回る。

食器を水場に運んで食堂に戻って、っていうのを何度か繰り返しているうちに、お客様はみんないなくなってた。


「だいたい終わったわね。

 ミア、上もたぶん食事終わってるだろうし、食器回収頼んでいい?」

「はーい、いってきます。」


階段を上がって見てみると、今朝はエステルさんとレイアさんの方だけトレーが出てる。

ついでに、扉も開きっぱなしだった。

トレーを回収しようとしたら、中からエステルさんの声が。


「あ、きたきた。

 ミアちゃんちょっとだけいい?

 エミーを紹介してあげる。」

「ふぇ?」

「昨日言ってた翼妖の子だよ。」

「もう、エステルってば…ミアちゃんまだ仕事中ですよ?

 それに、エメットはその呼ばれ方あんまり好きじゃないのに…」


レイアさんの声をよそに、エステルさんは隣の部屋の扉をノックしてる。

いいのかな…


「わたしだよー、開ーけーてー。」

「エステル、周りに迷惑だからもうちょっと声を押さえて。」


いつの間にかレイアさんも隣に立ってた。

ちょっと間があって、扉が小さく開いて、昨日見たリーダーの男の人が顔を出した。


「ねね、エミー呼んでよ。」

「…宿の人もいるじゃないか、それにその呼び方はやめてやれ。」

「ミアちゃんなら大丈夫よ。

 昨日もレイアの水浴びに付き合ってもらってるし。」


男の人はあたしの方を見て、ほぉ…って言って、エステルさんをじっと見てる。

そして、扉を大きく開けて中を指差してる。


「ありがと、ミアちゃんおいで~。」

「は、はひ…」


中に入ると、テーブルにはきっちりと重ねられたトレーがあって、その周りで荷物をまとめてるお兄さんと、背中に大きな翼のあるお兄さん、っていうか男の子?がいた。

エステルさんが、とてとてっと走っていって、翼の生えた男の子を連れてくる。


「何すんだよ!」

「も~、エミーったら怒らないの。

 こっちこっち、ミアちゃんにごあいさつしてね。」

「エミーって呼ぶなって言ってるだろ…

 で、ミアちゃんって何だよ。」


うー…だいじょぶかな…

何だか忙しそうだし…


「この宿の子だよ。

 レイアもお世話になったんだ。

 ミアちゃん、この子がエミーだよ。」

「あの…えと…はぅ…

 お、おはよーございます!」


…………

………………………何でこんなに静かになるんだろ…

って思ったら、目の前の翼のある男の子…エメット…くん?がちょっと笑った。

それにつられてなのかな、周りのみんなも何となく笑ってる。

ちょっと恥ずかしい…


「あんた、おもしろいやつだな。」

「ちょっと、エミーってばミアちゃんに失礼だよ。

 はい、謝って。」

「何でだよ、おもしろいからおもしろいって言っただけじゃん。

 あと、俺はエメットだ、女みたいな呼び方するな!」

「そこまでだ。」


後ろからリーダーさんの(さっきよりもちょっと低い…)声が聞こえた瞬間、エステルさんもエメットくんも、ピタッと動きを止めた。

リーダーさんがゆっくりと2人に近づいてく。


「ようし、ちゃんと学習してるな?」

「「はい…」」

「レイアがこれだけ普通にいられるってことは、このお嬢さんはできた人だってことは間違いない。

 が…仮にも仕事中のやつを捕まえてこの騒動はないわな。」


エステルさんとエメットくんが、そろって首を縦にぶんぶん振ってる。

リーダーさんは2人の後ろに回って、2人の首をつかんでぐっと押し下げた。


「お嬢さん、すまねぇな、うちのやつらが迷惑かけてしまって。

 まあ、エステルもこっちに来てからあんまりレイアやエメットにふつうに接してもらえることがなかったから嬉しかったんだとは思うが、こいつはよく暴走するもんでな…」

「いえ、そんな…あたしも昨日誘ってもらって嬉しかったですから…」

「エメットもこんな口の利き方してるが、割と繊細なやつでな。

 とにかく、仕事の邪魔しちまって申し訳ない。

 お前らもちゃんと謝れ。」

「「ごめんなさい…」」


リーダーさんすごい…

思わずあたしも固まっちゃったんだけど、レイアさんが肩をポンポンと叩いてくれて、ちょっとほっとしたら、まだ頭下げてる2人が目に入った。

もうリーダーさんは首を放してたんだけど…


「えと、えとぜんぜんだいじょぶですから。」

「ぅありがと~みあちゃ~ん!」


エステルさんがちょっと涙目になってた…

エメットくんも荷物整理に戻ってる。

そして、リーダーさんはそろえたトレーを渡してくれた。


「これを取りにきてたんだろ?出すのが遅れてしまったな。」

「あ、ありがとーございます。

 それじゃ持っていきますね。」

「ああ。

 そうだ、エステルもレイアも準備急げよ。」


みなさんにお辞儀をして、とりあえずトレーを引き上げる。

ずいぶん長居しちゃった気がする…急がなきゃ。



水場の片付けが終わって、食堂でちょっと休んでたら、エステルさんたちが降りてきた。

レイアさんとエメットくんは来たときと同じフード付きのマントを着てる。

きっと出発するんだね。

カウンターにいるマリーさんに、あいさつしてるみたい。

ぼーっと座ってたら、そのままみなさん、あたしのとこまで来てくれたから、あわてて立ってお辞儀する。


「世話になったな。

 帰りにまた寄らせてもらうことにしたから、そのときはこいつらともどもまたよろしく頼む。」

「ふぇ…は、はひ、ありがとーございます!」


エステルさんとレイアさんが前に出てきて握手してくれた。


「ミアちゃん、ちょっといってくるね。

 また帰りにね~。」

「ありがとうございました。

 帰りに寄ったときも、ぜひ夜の散歩に付き合ってくださいね。」


マリーさんもカウンターから出てきてたので、玄関でみなさんをお見送りする。

みなさんの冒険がうまくいくように願いを込めて。


「ありがとーございました!

 いってらっしゃいですー!」

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