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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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72 お客様の秘密 その2

夜の食堂も落ち着いて、お客様もだいぶ減ってきたところでマリーさんに上の食器を片づけてきてほしいってお願いされた。

2階に上がると、廊下にトレーが出してある。

丁寧にお皿とトレーを種類ごとに重ねてあったから、回収も楽にできるって思ったんだけど、奥の部屋の方はまだトレーが出てなかった。

あとでもう一度見にこようかなって思ったそのとき、扉が開いて、ショートカットのお姉さんがトレーを持って出てきてくれた。


「あ、ミアちゃん、ちょうどよかった。

 これ、お願いね。

 あと、ちょっといいかな?」

「はひ?」

「まだ仕事もあるんだと思うけど、仕事が終わったらうちの部屋に寄ってくれないかな?

 お願いしたいことがあるんだけど。」

「お願い、ですか?」


何だろ?あとでじゃないとダメなのかな?

お姉さん、両手を合わせてお願いしてるし、お茶の時間にいけばだいじょぶかな。


「うん、無理なら無理で構わないから、あとでお願い。」

「んー、わかりました。

 片付けとかもあるからまだしばらくかかりますが、それでもいいですか?」

「あ、ありがとう!

 それじゃ待ってるね。」


お姉さんからトレーを受け取って、厨房に運ぶ。

食堂を通ったときに結構お客様がいなくなって片付けるものが増えてるのも見えたし、急いで回収に戻らなきゃね。

何度か往復しているうちに、お客様はみんないなくなってた。

あとは食堂と厨房のお片付けだけだから、あたしはいつも通り水場で洗い物。

途中からマリーさんも手伝いに入ってくれた。


「そだった…マリーさん、さっき上のお皿とか片付けるときに、お客様に片付け終わってからお願いしたいことがって言われたんだけど…」

「あら、何かしら?」

「わかんない、終わったら部屋に寄ってほしいって言われたの。」

「ふーん…それじゃあとで行ってみるわね。」

「あ…もしかしたらあたしが呼ばれたのかも…」


マリーさんはちょっと考えて、とりあえず2人で行ってみようかってことになった。

どうなるかわからないから、今日は終わった後にお茶の時間はとらないことに…

ちゃんと誰に用事なのか確認しとけばよかったね…

とにかく無事片付けも終わって、マリーさんとお客様のお部屋を訪ねることになった。


「でも、終わってからでも来てほしいってどういう用事なのかな?」

「何かしらね。

 まぁ、考えるよりお客様に聞いてみましょうか。」


マリーさんが扉をノックすると、中から返事が聞こえた。

何かドキドキしてきた…


「はいはい、今開けるね。」


この声は、ショートカットのお姉さんの方かな?

扉が開いて、出てきたのはやっぱりショートカットのお姉さんの方だった。

マリーさんを見てちょっとびっくりしたみたいだけど…


「あー、すみません、女将さんにも来てもらっちゃって。

 ミアちゃんにお願いできればって思ってたんだけど…

 ちょっと入ってもらっていいですか?」


あれ、やっぱりあたしに用事だったのかな…

マリーさんと顔を見合せて、とりあえず中に入れてもらった。


「女将さんにはうちのリーダーが話したと思うんですけど、レイアは…あ、この子は、鱗妖なんですよ。」


りんよう…?ショートカットのお姉さんは、もう1人のお姉さん…レイアさん?を指差してそう言った。

マリーさんの方を見たんだけど、あとでねって言われちゃった。

そのとき、ショートカットのお姉さんがぽんと手を叩いた。


「そっか、ミアちゃん知らなかったんだね。

 どうりであんまり反応なかったんだ。」

「ほへ?」

「レイアは、妖魔族の中でも、水に親しい種族の鱗妖なの。

 だから、耳のところにヒレがあるでしょ。」


そう言われて、レイアさんの耳のとこをよく見てみると、確かにお魚のヒレみたいになってる。

初めて見たけど、何だかきれいな飾りみたい…


「うん、やっぱりミアちゃんなら大丈夫そうだよ。」

「そうですね。」

「えっと…話が見えてこないんだけど…」

「あ、すみません、実はレイアが水浴びしたいんだけど、昼間は他の人の目が気になるから…

 それで、夜ならって思ったんだけど、ミアちゃんに案内してもらえいないかなって思って。」


そっか、だからあたしに終わってから来てほしいって言ってたんだ。

マリーさんは、しばらく考えてたけど、兄さんの紹介だし…ってつぶやいて、あたしに聞いてくれた。


「せっかくのご指名だし、ミアが行ってきてくれる?」

「うん、行きたいな。」

「それじゃ、暗いし気をつけて行くのよ。

 お2人の準備ができたら、食堂に来てちょうだい。」

「はーい。」


そう言うとマリーさんは下に降りて行った。

2人とも、マリーさんにお礼を言って、準備に取り掛かってる。

あたしは廊下で待ってることにしたんだけど、すぐに2人は出てきてくれた。


「ごめんね、お待たせ。」

「よろしくお願いしますね。」


あまりにうれしそうに言われたから、あたしも何だかうれしくなっちゃた。


「こちらこそよろしくです。

 レイアさんと…」

「あ、ごめん、まだ名前言ってなかったよね。

 わたしはエステルだよ。」


そういって手を握られてぶんぶんとちょっとおっきな握手。

とりあえずあんまり遅くなると困るからみんなで食堂に降りてった。


「準備できたみたいね。

 ミア、鍵を渡しておくから、帰ったらわたしたちの部屋に返しにきてね。」

「はーい、いってきまーす。」


マリーさんのお見送りで、エステルさんとレイアさんと3人で夜の街中へ出発~!





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