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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
71/130

70 夜みたいな昼に来たのは

ご飯を食べて、片付けしてしまってから、お客様の部屋を全部回って、明かりの確認。

夜みたいに暗くなるみたいだから、ないと困るみたい。


マリーさんとクルトさんと3人でお泊まりされてる部屋を手分けして回ってく。

あたしも2つ回ったけど、どっちの部屋にもちゃんと明かりが灯ってた。


「さて、それじゃしばらく休むとしようか。

 ミアはどうする?」

「んー…部屋でお休みしときます。」

「そうか、私もマリーも、下の部屋にいるから、もし何かあったら来てくれればいいからね。

 夜の食堂の準備の前にはまた明るくなるから、いつもくらいの時間にまた準備を頼むよ。」


マリーさんとクルトさんはそのまま、階段を降りて行ったから、あたしは廊下の一番奥の自分の部屋に戻ることにした。

窓を開けてみたけど、まだ全然暗くなってない。

でも、いつもより街は静かな気がする。

もう出歩いてる人も少なそう。


それにしても、何したらいいのかな…

部屋でじっとしてるのもつまんないよね。

っていってもあたしの部屋って、何にもない。

あ…本とかあったらよかったのかなー。

こないだ連れてってもらったミルファム教会は本がたくさんあったよね…


そんなことをぼーっと考えてたら、何となく外が暗くなってきたみたい。

窓から外を覗いてみると、空の下の方が夕方みたいで、上の方がぼんやり暗くなってきてた。


「うわぁ…何だか不思議な空…」


ずっと見てると、ほんとにゆっくりだけど、暗くなっていってるみたい。

しばらくその不思議な景色を見てたんだけど、急に声をかけられてびっくりした。


「にゃー。」

「ひぇっ…ってネコくん?」


ネコくんは屋根からぴょんと跳んで、窓から入ってきた。

そのままベッドの上で丸くなってる…

何だか自分の部屋みたい?


「ま、いっか。

 1人で何しようか困ってたとこだし。」


窓を閉めて、《持続光デュラブルライト》の魔法を使う。

あたしの部屋は、魔法の練習も兼ねて、明かりは魔法でつけるようにしてるんだ。

小さな石に明かりを灯せば、暗くしたいときも箱の中にしまったりすればいいから、使いやすいんだよね。


「さって、ネコくん…って?」


魔法をかけた石をテーブルに置いて、ベッドの方を振り返ると、何かネコくん、寝てる…?

遊びにきてくれたんじゃなかったの?!


「勝手にきてくつろぐだけなんて、ちょっとずるいよー。」


ベッドの端に座ってネコくんに声をかけたら、耳だけがぴくぴく動いたけど、丸くなったまんまだし。

もー、しょーがないなー…

ネコくんと一緒に、ベッドにごろんと寝転んで、ネコくんをなでると、最初ちょっと顔をこっち向けたけど、すぐに目を細めてしまった。

たぶん飼い猫じゃないだろうけど…毛並つやつやさらさらだ…

もしかしてあたしのとこみたいに、いろいろ遊びに行ったりしてるのかな?


そうやって、ネコくんの毛並を楽しみながら、あたしも何だか眠くなってきてたんだけど、急にネコくんが動いたから目が覚めちゃった。

ネコくんは窓のとこまで歩いて行ってこっち向いてる。


「外に出るの?」

「にゃ。」


帰っちゃうんだ…残念。

窓を開けると、入ってきたときみたいにぴょんと跳ねて、器用に窓辺に着地した。

そのまま屋根の上にでて、真上を見上げて、またあたしの方を向いた。


「にゃ。」

「ん?どうしたの?」


上を見たけど、空が真っ暗になってて…あ、星が見えてる!

ほんとにお日様隠れちゃったんだ。


「すごいねー!

 星まで見えるなんて…」

「にゃっ!」


空に見とれてたら、ネコくんがまた鳴いた。

今度は器用に右手で手招きしてる。

屋根に出てこいってこと?

暗いし、ちょっと危ない気がするけど、ネコくんはじっとこっち見てるし…

そっか、明かりを持ってくればいいんだ。


「ちょっとだけ待ってね。

 明かりを持ってくるから。」

「にゃにゃー。」


あれ、今度は首を横に振ってる…

何かネコくんとお話できてる…よね?


「明かりはだめなの?

 じゃ、ちょっと目が慣れるまで待ってね。」


今まで部屋の中ちょっと明るかったから、急に暗いところは見えないんだよね。

光ってる石を箱の中に入れて、窓辺に戻ると、ネコくんはまだちゃんと屋根の上にいてくれた。

そのままちょっとだけ待ってると、暗いけどだんだんと屋根の様子とかが見えてくる。

これならいけるかな?

窓枠に足をかけて、屋根の上にゆっくり降りる。

あんまり勢いよく降りたら音がして、マリーさんたちがびっくりしちゃうもんね。

ネコくんのとこまで行って、しずかにしゃがみこむ。


「おまたせ。

 次はどうしたらいいの?」

「にゃっ。」


また上を見るネコくん。

そんなに変わらないと思うけど…

そう思って見上げたあたしは、びっくりしちゃって、そのままぺたんと座っちゃった。


「何あれ…ゆらゆらしてる…」


頭の上の方で見えたのは、白いもやっとしたものがあって、その真ん中にくっきりと黒い円盤みたいなもの。

部屋の中からだと見えないとこに、こんなものがあったなんて…


「ネ、ネコくん…これ見せてくれようとしてたの…?」

「にゃー。」


上を見ながら声をかけたけど、ネコくんは返事してくれた。

あれが隠されたお日様…だよねきっと。

その神秘的な空を、あたしは屋根の上であおむけになって見てた。

どうしてかわからないけど、心が研ぎ澄まされていくような感じがする…


「にゃ。」


また不意にネコくんが鳴いた。

よく見ると、しろいもやもやが、かたよってきてる気がする。

って思った瞬間、黒い円盤の端っこ、もやもやが増えてきてたとこが急に強く光った。


「ひゃう、まぶし…」


目がくらんで、光から目をそらして目をつむる。

何かちょっとちかちかするけど、だいじょぶだよね。

ゆっくり目を開けると、少しずつ光が増えてきてるみたい。

お日様、出てくるんだね。


「すごいねー、こんなの初めて見たよー。

 ってあれ、ネコくん?」


周りを見てもネコくんはいないみたいだった。

どこ行っちゃったんだろ?

帰っちゃったのかな…

んー…まあ、お礼は次のときでもいいよね。


そういえば、夜の準備もあるんだっけ…

とりあえず落ちないように部屋に戻って、ちょっと休憩したら準備に行こうかな。

だんだん明るくなってきて、さっきとは違うけど力がわいてくるみたいな気がする!

夜もきっと、お客様たちおなかペコペコでくるよね。

忙しくなりそうだし、しっかり準備しなきゃね!

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