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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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66 マリーさんの昔話 その1

「さてと、何から話したらいいかしらね…」

「じゃあ、どうして冒険者になったの?」

「そこから?!

 まあいいわ…」


今度って言ったマリーさんの昔のことをどうしても聞きたくて、夜にお願いしたら、寝るまでのちょっとだけならいいって言ってくれたんだ。

だから、お茶しながらって思ってたんだけど、クルトさんはお茶だけ用意して、クスクス笑いながらごゆっくり、って部屋に戻っちゃった。


「わたしはここの出身じゃなくて、マルハウっていう港町で育ったの。

 父は商隊を率いる商人で、うちにいる方が少ないような人だったわ。

 だから、いつも母と、兄が2人いたから、3人で暮らしてるような感じだったの。」

「お兄ちゃんがいたんだ。」

「ええ、でもいつも母は1人で家を切り盛りしてたから忙しくて、2人の兄がよくわたしの面倒を見てくれたから、影響を受けたのかしら?

 割とおてんばだったのよね。」


ふーん…マリーさんのお兄ちゃんとか、どんな人なんだろう?

似てるのかな?だったらかっこいいのかなー…

お母さんも、きっと美人さんだよね。


「それで、兄たちも大きくなって、家族で集まって、この先どうしていくかって言う話をしたことがあったの。

 父は、兄たちのどちらかに仕事を継いでほしいって思ってたんだけど、上の兄は自分にはあまり向いてないって言って、辞退したの。

 それで、下の兄が仕事を継ぐことになったんだけど、上の兄もずっと家にいるわけにはいかないからって、自分で自信のあった剣の腕前を生かして、冒険者になるって言ったのよ。」

「マリーさんじゃなくて、お兄さんが冒険者になったんだ…」

「先に言いだしたのは兄だったわ。

 父はそんな不安定なものはだめだって言ったんだけど、兄は家を出てでも冒険者になるって言ってきかなかったの。

 それで、結局いろいろあったんだけど、最終的に父も認めてくれたのよ。」


冒険者って危険とかもあるから、お父さんも心配したのかな…


「ところがそれで終わりじゃなかったのよね…

 しばらくして、父はあたしに縁談を進めてきたの。」

「えんだん?」

「そうね…簡単にいえば、結婚相手を勝手に探してきたのよ。」

「ふぇ…」

「急にそんなこと言われてもピンとこなかったし、わたしは断ろうとしたんだけど、父もなかなか退いてくれなくて…」

「もしかして、それってクルトさん?」

「え?あー全然違う人よ…知らない人。」


むー、そっか…

もしマリーさんがその人と結婚してたら、あたしがここに来ることもなかったんだよね…

何か変な感じだけど、ほっとした気がする…


「それで結局、父とケンカみたいになっちゃって、半分家出みたいな感じになっちゃったのよ。」

「ええっ?!大変…」

「全然当てもなかったものだから、どうしようかって思ったんだけど、冒険者になってた上の兄が、面倒見てくれることになって、そのとき冒険者になったの。」

「そなんだ…冒険者になるぞーってなったんじゃなかったんだね。」

「きっかけとしては変なものだったわね…

 でも、結局後から聞いたら、父が心配して兄に面倒見てやってほしいって頼んでくれてたみたいなんだけどね。」

「ケンカしててもお父さん、心配だったんだね…」


やっぱりマリーさんのお父さんなんだね…


「さて、これでいいかしら?」

「ふぇ、もう終わり?

 そのあとどうなったの?」

「ミア、そろそろねむくなったりしないの?」

「まだだいじょぶだから…もうちょっとだけ!」


ほんとにまだ眠くないし、続きが知りたかったから、一生懸命お願いした。

マリーさん、ちょっと考えたけど、しょうがないわねって続きを話してくれたの。


「しばらくは兄が一緒にいた冒険者のグループで、いろいろ依頼をこなしたりしてたわ。

 もちろんいつもうまくいってたわけじゃないけど、それなりにって感じかしら?」

「依頼ってどんなのがあったの?」

「街の近くに住みついた魔獣をやっつけるなんてのもあれば、旅をする人たちの護衛なんかもしたわ。

 学者さんに頼まれて遺跡に行ったりもしたわね。」

「いろんなことするんだね。」

「そうね、冒険者って割と何でもやさんだから。

 それであるとき、魔界につながる道っていわれてる洞窟の1つに挑戦してみることになったのよ。」

「ええっ?!

 どうしてそんなとこ行くことになったの?」


だって、魔界って悪魔がいるんだよね…

そんな怖いとこ行ったってしょうがないのに?


「わたしたちが行ったのは遺跡のようなところだったんだけど、宝物なんかも見つかることがあるから、挑戦する冒険者も結構いるのよ。」

「そーなんだ…

 悪魔とかもいたの?」

「そうね、何体も出会ったし、戦ったわね。」


やっぱりすっごい怖いとこだ…

宝物があるって言ってもそんなの…危なすぎると思う…


「でも、結局わたしたちも途中で引き返すことになったの。

 広すぎて手に負えなかったのよね。

 ただ、そのときに1つの剣を手に入れたの。」


剣…もしかして、フェリックスさんが持ってる剣かな?

お昼にそんな風に言ってたよね。


「っと、その顔はわかったってことよね。

 そう、今リックが持っている剣がそのとき見つけたもの。

 ミアは実際に見たことはないわよね。」

「うん、フェリックスさんが戦ってるとこなんて見たことないから。」

「あの剣の刀身は、真っ白なの。

 きっといいものに違いないってことで、魔法士ギルドで鑑定をしてもらったんだけど、そのときに名前がわかったのよね。」


剣に名前がついてるんだ?

作った人がつけたのかな…剣が大好きな人…?


「古い時代に作られたものの中には、今では再現できないようなものもあるんだけどね、隠された名前がつけてあったりするのよ。

 魔法をかけたりして調べるみたいね。」

「ほへ…」

「それは[無垢なる白イノセント・ホワイト]という名前の剣だったんだけど、いろいろ相談した結果、わたしが持てばいいってみんなが言ってくれて、わたしが使うことになったのよ。

 さ、それじゃ今日はここまでね…もう遅いしそろそろ休まないといけないわ。」

「えー…」

「また今度続きは話してあげるから、今日はちゃんと休みなさい。

 でないと、約束してあげないわよ?」

「あぅ…ちゃんと休むから、今度またお願いします…」


うー、早く次のお話の機会をつくってもらわなきゃ!


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