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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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65 マリーさんの報告

お昼の食堂の時間が終わったけど、フェリックスさんたちは朝に出かけて行ったっきり、戻ってきてない。

アリサさんに授業してもらえるかって思ってたんだけど、忙しいみたいだね。

ちょうどいいからって、お茶しながらマリーさんが聞いてきた発表の内容を、クルトさんと一緒に聞くことになった。


「まあ、あんまりいい報告ができるわけじゃないんだけどね。

 王都から国中への通達だったわ。」

「国中ってまた大事じゃないか。」

「ええ、この間から、頻繁に悪魔が見られるようになったとか、リックたちも言ってたでしょ。

 それとも関係があるみたいなんだけど、クオート公国の小さな村が襲われたらしいのよ。」

「なるほど、たしかに急を要するわけだ。

 クオート…というと、グラキナの向こうだね。

 ここからはだいぶ遠いが、そこまで活動的になっているとは…」


2人の会話を聞いてたけど、大変なことになってるっぽいのはあたしでもすぐわかる。

普通は遺跡とかに隠れて住んでいるようなやつらが、そんなことするんだもん…


「それで、最近のいろいろなことも含めて、もしかしたら、魔界につながる道の封印が弱まってるんじゃないかっていうのが、王都の見解らしいんだけど…」

「私たちには何か指示があったのかい?」

「そこまで厳重なものはなかったけど、できるだけ不必要に外に出ないとか、外に出るときはできる限り集団でとか、街道を外れないようにとか、そういったことをもっと注意してほしいってことだったわ。」

「まあ、今までとそこまで大きく変わるわけでもないようだね。

 物流とかに影響は出そうだけど…」

「あ、でも各地の衛兵とかは派遣数を増やすみたいよ。」


ふむ、とうなずくクルトさん。

クルトさんの言い方だと、そんなに心配しなくていいのかな…?

あ、でも…


「街はだいじょぶかな?…襲われたりしない?」

「うん、ここは大きな街だし、そう簡単には手出しができないさ。

 悪魔は魔獣なんかと違って悪知恵が働くからね。

 無謀なことはしないと思うよ。」

「そうね、それにここは襲われた村からずっと遠くだし、衛兵もいるし、冒険者もたくさんいるから安心よ。」


そっか…でも小さな村とかの人は大変なことになりそう…

それにしても封印が弱まってるってとんでもないことなんじゃないのかな…?


「封印って、昔の人たちがしたんだよね?」

「そうだよ。

 私たちのご先祖様たちが協力することで、魔界へ続く道と言われている洞窟に封印したんだ。」

「洞窟ってどこにあるの?」

「一応この大陸にあるんだけど、詳しい場所が分かってないんだよ。」


答えてくれたクルトさんもちょっと困った顔してるけど、詳しい場所が分かんないって、どゆことだろ?

秘密なのかな?


「それっぽいって言われている洞窟がいくつかあるのよ。

 自然にできてるようなものもあれば、何かの遺跡のようなものもあるし…

 でも、魔界へつながっているって確かめられたことはないの。」

「ふぇ…どしてですか?」

「奥までたどり着いた人がいない、ってことみたいね。

 だから、どの洞窟がそうなのかもわからないし、もしかしたら全部違ってるかもしれないわ。」


何だか変な話…

それなのに封印がどうなってるかとかわかるのかな…


そんな話をしてたら、フェリックスさんたちが帰ってきた。

この時間ってことはお昼は外で済ませてきたのかな。

あら、何だかお疲れ気味っぽいけど…


「ただいま。

 堅苦しい話は疲れるわ…」

「みんなお帰り。

 お昼は済んでるわよね。

 お茶淹れるから座ってて。」


マリーさんが答えたときには、あたしとクルトさんがもう動き出してた。

振り返ったマリーさんがちょっと驚いて、そのあと笑って、よろしくって言ってくれた。

クルトさんにポットの方を任せて、あたしはカップの用意をする。

っていっても棚から出すだけなんだけどね。

ポットの方が準備できたから、クルトさんと一緒に食堂に戻って、みなさんにお茶を注いで回った。

全部そろったところで、あたしとクルトさんも座ってお話の続き、かな?


「ギルドの方にも、国からの依頼って形でいろいろ来てたよ。

 魔界への道も進めるって話が出てるみたいだし。」

「へえ…本格的に進めるのね。

 大丈夫かしら…」


フェリックスさんたちは冒険者ギルドに行ってたみたいだった。

何だか結構有名みたいなんだよね…ご指名の依頼とかもあったし。

そんな人たちに魔法を習ったりしてるあたしは、ぜいたくなことしてるのかな…


「そーいえばー、マリーさんはー、わたしたちと組む前にー、行ったことあるんですよねー?」

「ええ、それはそのとき見つけたものだし。」


マリーさんが指さしたのは、フェリックスさんの剣だった。

っていうか、マリーさん、フェリックスさんたちと冒険者やってたんだ…

じーっとマリーさん見てたら、気づいてくれた。


「ミア…どうしたの?」

「マリーさんって、フェリックスさんたちと冒険者してたの?」

「あら、言ってなかったっけ?」

「聞いてなかったと思う…

 あ…『白の舞姫プリマ・ホワイト』って言う名前だけは…」


って言ったら、マリーさん、顔が赤くなってガクっとなっちゃった…

そいえば前もこんなことがあった気がする…

はぅー…失敗しちゃったかも…


「ミア、今度ちゃんと教えてあげるから、その二つ名だけは言わないで…」


はひぃ…ごめんなさい…

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