64 発表って何だろう?
昨日はあのあと、宿のお手伝いをずっとしてた。
アリサさんたち、帰ってきてすぐだったから、疲れてたら悪いなって思って、授業はお願いしなかったんだ。
今日は時間があればお願いしてみようかな。
朝の食堂が終わって片付けしてたら、何だか表が騒がしい。
思わずマリーさんと顔を見合わせちゃう。
「何かあったのかしら?」
「ちょっと見てきます。」
扉を開けると、近所の人たちが集まって何か話してた。
こんな道の真ん中でどうしたんだろ?って思ってたら、近所のおばさんが声をかけてくれた。
「ミアちゃん、聞いた?」
「えと、何…でしょうか?」
「広場で何か発表があるそうよ。
お昼前ってことだけど…」
「ほへ…マリーさんたちにも伝えますね。」
「でも宿も忙しいだろうし、うちの人が行ってくれるから、あとで連絡回すわね。」
「あ、ありがとーございます。」
おばさんたちにお辞儀して宿に引っ込んだんだけど、よくわかんないや。
とりあえずマリーさんに報告したら、ちょっと考えて、とりあえずクルトさんとも相談することになった。
厨房で同じことをクルトさんにも説明したら、クルトさんもちょっと考えてるみたい。
お昼の準備の時間っぽいもんね…
「とりあえず、マリー行ってきてくれるかい?
厨房は私がいないとだめだし、食堂の方は、ミアに入ってもらおう。
そんなに長くはならないだろうし、逆にいえばお客様も広場に集まってるだろうから、急ぎ目に戻ってくれば、十分間に合うさ。」
「そうね、それじゃミア、わたしが行っている間、ここよろしくね。」
「は、はい!」
急に大役が回ってきちゃった…
ドキドキして固まってるあたしに、2人ともそんなに心配しなくていいからって言ってくれるんだけど…
でもがんばらなきゃね。
マリーさんが出発するまでに、食堂の準備を前倒しで進めておいたおかげで、いつもより早めに終わっちゃった。
あとは厨房でお手伝いしてたんだけど、そろそろマリーさんが出かけることになったので、あたしは食堂に戻ってカウンターに入った。
「それじゃミア、あとはよろしくね。」
「はい、いってらっしゃいですー。」
マリーさんが出かけていった後、1人でカウンターの中にいると、何か不思議な気分、っていうかやっぱり落ち着かないよー。
でもよく考えたら、お泊まりのお客様もだいたいお出かけしてるし、やっぱりこの時間に来る人は少ないよね、きっと。
しばらくは誰も来ることもなく、じーっと待ってるだけの時間が過ぎていった。
もう、広場での発表は始まったっぽいよね。
っていうかもしかしたらそろそろ終わってるのかな?
なんてことを考えてたら、玄関の扉が開いて、常連さんがいらっしゃった。
「あ、いらっしゃいませー。」
「おろ、今日はミアちゃんが仕切ってるのかい?」
「えと、マリーさんが広場での発表を聞きに行ってて、その間だけです。」
「広場での発表…そういや、朝何かそんな話聞いたなぁ…」
そう言いながら、いつものカウンターの席に座る常連さん。
まずは注文の確認だよね。
「いつものでいいですか?」
「ん?ああ、頼むよ。」
「はい、少々お待ちください。」
ぱっと厨房に走って、クルトさんにランチプレート1つをお願いする。
そのまま走って戻って、またカウンターに。
んー…マリーさんとクルトさん、2人でやってたときってすっごく忙しかったんじゃないかな…
「それで、広場での発表ってどんなものなんだい?」
「はひ?えと…あたしも知らないんです…
発表があるっていうことだけ聞いただけなので…」
「そうかい、それじゃマリーさんが帰ってきたら聞いてみるとするよ。」
「はい、おねがいします。」
常連さんとそんな話をしてたら、また扉が開く音が聞こえた。
今日はお客様の出足が早いかも…って思ったんだけど、入ってきたのはマリーさんだった。
「おかえりなさいー。」
「ただいま。
あら、今日はちょっと早めにいらっしゃったんですね。」
カウンターに来てた常連さんに気付いて、マリーさんが声をかける。
常連さんも軽く手を挙げて返事してる。
やっぱりマリーさんがいないと、だよね。
マリーさんがそのままカウンターに入ってくれたので、あたしは厨房の方へ、お料理を取りに行くことにした。
きっとそろそろできるころだよね。
「あ、ミア、ちょうどよかった。
今持っていこうかと思ってたところだよ。」
「じゃ、持っていきますね。
マリーさんも今帰ってきました。」
「了解、それじゃいつもと同じように頼むよ。」
「はーい。」
お料理を持って食堂に戻ると、お客様も少し増えてきてた。
マリーさんが注文は聞いてくれてたので、厨房に伝えに戻る。
さあ、忙しくなりそう。
ここからが本番だね!
それにしても、広場での発表って何だったのかな?
お客様に聞かれてもだいじょぶなように、あとで教えてもらわなきゃ。