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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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62 雨の日の過ごし方

マーケットも3日目って思ってたんだけど、今日はもう開かないみたい。

昨日でだいたい商品が売れちゃってるのが1つの理由で、もう1つは…


「しかしよく降るわねー。

 こんなに降るのも久しぶりだわ。」

「夜中からずっとだもんね。」


お昼も終わって、マリーさんとぼーっと窓の外を見てる。

今日はずーっと雨が降ってるんだ。

しかも、結構強い雨。

この雨のせいか、今日のお昼はお客様がとっても少なかったの。

お泊まりのお客様も今日は出歩かずに宿にいるから、そのお客様たちくらいで、他はほとんど来なかったんだよね。


「やれやれ、こんなに降るなんてね。

 とりあえずお茶にしようか。」

「あら、今日はちょっと贅沢ね。

 シナモンだなんて。」


クルトさんが持ってきたお茶をカップに注いでくれた。

ちょっと甘くて不思議な香りがしてて、とってもおいしそう。

でも、香辛料って高いから、普段のお茶とかに使うことはないんだけど、今日は特別ってことだよね。

クルトさんが淹れてくれたお茶には、もうミルクが入ってるみたいだった。


「あれ?もうミルクも入ってるの?」

「お茶と一緒にシナモンを入れて沸かして、そのあとミルクを入れて温めたたからね。

 甘さは自分で調節したらいいから。」


こうしてしばらく、ちょっとぜいたくなお茶会を楽しんでたんだけど、雨は一向にやむ気配がない。

どうしようかな…何ができるかな?

料理の練習は…ちょっとこないだ怖かったし…

お掃除も割とちゃんとしてたもんね…

あ、魔法の練習かな…?

慣れると口に出して唱えなくてもいいって言ってたもんね。

これなら1人でもできるし。


「この後、あたし、部屋に戻っててもいい?」

「ん?別にかまわないよ。

 夜の準備はいつもくらいの時間に始めるつもりだから、そのときまた降りて来てくれるかな?」

「はーい。

 ごちそうさまでした。」


先にカップだけ片付けようと思ったんだけど、クルトさんがまとめてやってくれるってことだったから、お願いして部屋に戻ることにした。

2階の廊下を歩いてると、部屋の中から話声が聞えたりする。

お客様たちも、やることがなくて大変かもしれないね。


部屋について、扉の鍵を開けて入って、明かりをつける。

ベッドでいいかなって思ってたら、何だか窓がカリカリ音がする…

もしかして…って思って、ちょっとだけすき間を開けてのぞいてみたら、黒い塊が。


「うぁ…ちょっと早く入りなよ…」

「にゃ…」


ネコくんが通れるくらいのすき間を開けて呼んだら、返事して入ってきてくれた。

少し開けてただけなのに、床がちょっとぬれちゃってる。

やっぱり雨が強い。

だいぶぬれて、ネコくんいつもよりしぼんでるみたい。

布でくるんでふいてあげた後、膝の上で毛布をかけてあげたら、そのまま丸くなっちゃった。


「もうだいじょぶかな?」

「にゃー。」


毛布の上からなでてあげると目をつむったまま答えるネコくん

顔だけが毛布から出ててかわいいなあ。

でもこのままじゃ、ちょっと練習できないし、ベッドで休んでてもらうことにして、抱き上げた。

ネコくんは嫌がるでもなく、おとなしくだっこされてくれたので、そのままベッドの真ん中に寝かしてあげる。


「さてっと、やってみよっかな。」


あたしが今、使えるのは4つ。

でも《負傷治癒ヒーリング》は、ケガしてないしダメだよね。

それに、たぶん簡単なのから始めた方がいいような気がする。

ってことは、《ライト》から、かな?


「あ、発動体忘れてたや…」


ちゃんとペンダントをつけて、と。

意識を集中して、心の中で〈魔法語ルーンワード〉をなぞっていく。


「《光》!」


差し出した指先に、ほわっと明るい光の玉が現れた。

んー、できちゃったみたい。

心の中でなぞるのを、ぱっとできるようになれば、すぐに使えるようになるのかな?

光を消して、そのあと何回か試してみたら、何となくうまくできるようになってきた気がする。

この調子なら、他のもできるかな?


時間もまだ少しいけるみたいだから、ちょっと背伸びして、《聖光ホーリーライト》の方を試してみることにした。

もしも、ほんとにもしもだけど、何か変なのに会っちゃったら、ぱっと使えないとだめだもんね。

…っていうか、時間かかってたらその間にやられちゃったりしたら怖いし。


「会うわけないんだけどね…うん。」

「…にゃ?」

「あれ、口に出てた…ごめんね、まだ寝てていいよー。」


んー…練習しよう。

えっと、何だっけ、これはちょっと長かったよね。

〈真白き光、清らかなるもの、世界に仇為す邪悪なるものを押しとどめる力となれ〉だよね。

これ、魔法が増えると思いだせなくなりそう…

アリサさんもゼル先生も、本を持ってるのはそういうことなのかな…

あたしも今度つくった方がいいかもしれないし、アリサさんに相談してみよう。

それはともかくとして…やってみよっと。

また意識を集中させて、しっかりイメージを持って心の中でなぞっていく。


「《聖光》!」


ネコくんがまぶしくないようにって思って、ベッドと反対側に手をかざしておいたんだけど、今度もちゃんと成功したみたい。

前にやったときと同じように、真っ白な光がふわっと広がった。

でも、ちょっと時間かかっちゃったかな?

これも慣れればぱっとできるようになるかな。

もうちょっと練習しようと思ったけど、そろそろ準備の時間も近そうだし、今日はここまでにしておこっと。


ネコくんはまだ丸まってたからそのままにして部屋を出て鍵をかけようと思ったんだけど、お仕事の途中で起きたらかわいそうだよね…

んー、ちょっとだけ部屋の扉開けておこっか。

もし降りて来ちゃったら、そのとき何とかすればいい…よね?


それじゃ、準備がんばるぞっと。

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