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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
59/130

58 いろんなお客様

「いらっしゃいませー…あ、ギルドのお姉さん!」

「ミアさん!

 はわわ…あ、あの…こんにちは…」


お昼の営業も真ん中くらいかなってときに、お昼前にギルドでカウンターにいたお姉さんが来てくれた。

最初見たときはテキパキしてる人だなって思ったけど、急にあわあわなっちゃってるよね…

あたしのせいかなぁ…


「すみません、お忙しいとは思ったのですが、先ほどの依頼の件をお伝えしたくて…

 マリーさんいらっしゃいますか?」

「はい、いますよー。

 カウンターへどうぞ。」


お客様も減りはじめてたとこだし、カウンターの開いてる席へとお姉さんを案内した。

今ならあたし1人でもいけそうだし、マリーさんはお姉さんとお話してもらってだいじょぶだよね。

もう、来てるお客様みんなに配膳終わってるから、お勘定と食器の片付けくらいだし。

って思ってたんだけど、新しく注文が。


「ミア、ランチプレート1つね。」

「はーい。」


お姉さんが、注文してくれたみたい。

急いで厨房に戻って、クルトさんに追加をお願いする。

持っていくのはクルトさんがしてくれるってことだったから、また食堂の方に戻ってくと、マリーさんがだいぶお勘定すませてくれてたみたいで、空いた席も増えてた。

食器をまとめて水場に運んだり、テーブルを拭いたりしてたんだけど、いつの間にかお客様はお姉さんだけになってた。


「ミア、ちょうどいいからちょっとこっち来て。」

「はーい。」


だいたい片付いたところでマリーさんに呼ばれて、カウンターの中に入る。

何かなって思ったんだけど、お姉さんを紹介したかったみたい。

お姉さんが、ご飯を食べる手を止めてこっちを向いた。


「ミアもこれから行く機会増えるかもしれないから、挨拶しとかなきゃね。

 こちらは、ギルドの職員のリゼルさんよ。」

「よろしくお願いしますー。」

「こちらこそよろしくお願いします。

 先程は本当にすみませんでした。」


だいぶ気にしてるみたい…別にあたしは何もなかったのにね?

マリーさんも笑ってるし。


「いつも白枝亭の分は、マリーさんかクルトさんが来ていただいていたし、ミアさんはわたしが見たことなかったから、てっきり新しく登録に来た冒険者の方だと思い込んでしまって…」

「リゼルさんは、人の顔や名前を覚えるのがとても早くて、仕事もテキパキこなすんだけど、たまにこういうことあるわよね、うふふ。」


リゼルさん、赤くなっちゃってるし…

何でも、普通はこっちから依頼を受けてもらえるかを確認に行くはずなんだけど、さっきのことがあったから、わざわざお昼の休憩を使ってきてくれたんだって。

それでマリーさんがご飯を進めたってことみたい。


「まあ、そういうことで、今度からミアが行くこともあるから、よろしくね。」

「はい、わかりました。

 あ…もしよかったらミアさんもギルドの依頼を受けていただければって思います。

 危険なものは進められませんが、治療師ヒーラーへの依頼って、それなりにありますので。」

「ふぇ?!あたしなんて何もできないです…!」


急にそんなこと言われても困っちゃう…

宿のお手伝いもあるし…


「あ、もしも空いている時間でできるものがあれば、っていうことですので、そんなに深く考えないでくださいね…」

「そうね、もしかしたらミアにとってもいい経験になるかもしれないし、危なくないものならばいいかもしれないわね。」


何か、マリーさんの方が乗り気な気がする…

とにかくそんな感じで、ギルドのお姉さん、リゼルさんとマリーさんとお話してたら、玄関の扉がノックされて開いた。


「ごめんください、ミアさんはいらっしゃいますか?」


入ってきたのは衛兵さんだった。

何かあったのかな?

マリーさんは衛兵さんを見て、「今日はいろんな人が来るわねー。」って言ってるけど。

とりあえずカウンターから出て玄関の方に向かう。


「はい、ミアはあたしですけど、何かご用でしょうか?」

「は、はじめまして!…じゃなくて…

 あの、自分はファングボアにやられたときにミアさんに助けていただいたエーリッヒであります!

 その節は本当にお世話になり、ありがとうございました!

 ミアさんが来ていただけなかったら自分はどうなっていたかわからなかったそうです。」

「は、はひ…」


衛兵さん、元気そうなのはよかったけど、声もすっごく大きいし、勢いのある人だったのね…

思わず後ろを向いたら、マリーさんもリゼルさんも、さらには厨房の入り口からクルトさんまでこっちを見てた…


「助けていただいたのに、お礼に来るのが遅くなって誠に申し訳ないであります!

 できる限りのお礼をさせていただきたいのであります!

 何か自分にできることはないでありますか?」

「え、そんなお礼なんて…

 別に普通のことしかしてないです。」

「いえ、命の恩人に何もしないなんて、そういうわけにはいかないのであります!」


ひぅ…お礼なんていいのにー!

勢いに負けそうになってたあたしの横に、いつの間にかリゼルさんが来てた。


「エーリッヒさん、お久しぶりですね。」

「これはギルドのリゼルさん、お久しぶりであります。」

「ところで、どうなさったのですか?

 ミアさんも何だかお困りのようですけど…」


尋ねられたエーリッヒさんが、リゼルさんに説明してる。

あ、隊長さんが来たときにお礼を受け取ってもらえなかったことまで…


「そうだったのですか。

 とにかくエーリッヒさんが無事で何よりです。

 ところで、こちらのミアさんですが、ギルド所属の冒険者さんなんですよ。

 ミアさんもお礼は結構だと仰られていますし、今回はミアさんのご厚意ということでよいのではないでしょうか?」

「しかし…」

「ギルドが間に立ってもよいのですが…そちらの方にもご迷惑になると申し訳ないですし、できればわたしからのお願いとして収めていただければ…」


エーリッヒさんは、リゼルさんに言われて少し考えてたけど、あたしの方を向いてお辞儀した。


「すみません、自分の気持ちばかりを押し通そうとしてしまい、ご迷惑をおかけしてしまったのであります。

 今回の件は、ミアさんのご厚意をいただいたということでよいでありますか?」


すっかり変わっちゃった…

固まってるあたしの肩がとんとんって叩かれる。

横を見るとリゼルさんがウインクしてた。


「は、はい。

 えと、その…いつも街を守ってくれてる衛兵さんに協力できて、あたしもよかったです。

 これからもがんばってください!」

「いえ、お忙しいときに失礼しました。

 自分は仕事に戻ります。」


そういって敬礼してエーリッヒさんは帰っていった。

何か…すごかった…

それにしても…リゼルさんの方を見ると、あたしが見てるのに気づいて、ちょっと照れ笑いしてた。


「仕事柄、いろいろな人と面識があるんですよ。

 少しはミアさんにお詫びできたのなら幸いです。」


うん、とっても助かりました!

リゼルさん、ありがとう!

普段使わない口調だと、どういうふうに言うのかがわからなくなってしまいます。

言い回しとかおかしいところいっぱいありそうですね…

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