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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
58/130

57 かんちがい?

「もっとおっきいと思ってたけど…うちの宿よりちっちゃいや…」

「ま、宿と比べちゃだめよ。」


今日は、ユーリさんと冒険者ギルドに来てる。

何でこんなことになったかっていうと、話は今朝に戻るんだけど…





朝の食堂も、お客様もいなくなって片付けっていうときに、玄関の扉がコンコンとノックされた。

こんな時間にくるお客様なんてほとんどいないから、マリーさんと顔を見合わせる。

扉が開いて、ひょっこりと顔をのぞかせたのはユーリさんだった。


「おはようございます。

 もしかして変な時間に来ちゃいました?」

「おはよう、ユーリ。

 今から朝の片付けだけど…昨日の件かしら?」

「あ、マリーさんも知ってるのね。

 うん、何かわかったかなって思って。」


ユーリさんは昨日あたしに言ってた変な植物の魔物のことを聞きにきたみたい。

ばっちり情報は手に入ってるもんね。


「えっとね、昨日…」

「あ、そうだミア、ちょっとお使いお願いしていい?」


ユーリさんに話そうとしたら、マリーさんが急にそんなお願いしてきた。

突然どうしたのかなって思ったんだけど…


「ユーリに説明するにしても、まだしっかり確認できてないじゃない。

 だから、直接冒険者ギルドに行ってきたらいいわ。」

「へ?でも…お片付けは?」

「うん、だからついでにギルドの新しい依頼聞いてきてもらうのと、ここで頼まれた分を受けてもらえるかを報告してきてもらえば、ちょうどいいじゃない。」


そう、だから、お使いだったんだ。

マリーさんたちで片付けの方をやっておくから、ユーリさんと行ってくればいいって提案してくれたから、2人で冒険者ギルドまで出かけることになった。

マリーさんから、うちに持ち込まれた依頼の詳細を書いたメモを預かって、さあ出発ー!

って思ったら、冒険者ギルドの場所をあたしが知らなかったり…

結局地図まで描いてもらったんだけど、ユーリさんも大まかな位置ならわかるってことで、今度こそギルドに向かうことになった。

ユーリさんがいたし、地図もわかりやすくて、ギルドまでは特に問題なくついたんだけど、あたしのイメージではもっとおっきいのかなって思ってたってわけで…





「とにかく入ってみましょ。」

「はいー。」


入ってみると、結構人がたくさんいてちょっとびっくりした。

みんな冒険者さんなのかな?

入ってすぐのとこが広くなってて、奥のカウンターで、何人かの人が代わる代わるお話を聞いてるみたい。

右側の壁にはいろんなメモが貼ってあって、何人もの人たち(冒険者さんだと思う)がメモを見てたり、そのメモをはがしてカウンターの列に並んだりしてる。

とりあえずは、マリーさんに言われたことを先にしなきゃね。


「ユーリさん、あたし先にマリーさんに言われたことをすませてくるね。」

「あ、うん。

 じゃ、あたしは植物の魔物の依頼探してるね。」


ユーリさんと別れてカウンターの列に並ぶと、前に6人ぐらい並んでる。

でも、カウンターの人も2、3人いてるから、きっとすぐだよね。

少し待ってたら、列は1人、また1人と用事をすませて減っていった。

カウンターの人たち、テキパキしててすごく早いよ。

そして、いよいよあたしの前には誰もいなくなった。


「次の方、どうぞ。」

「あ、はい。」


呼んでくれたお姉さんのとこに行ってイスに座って、マリーさんから預かったメモを出す。


「あ、依頼の方ですね。

 ギルドカードはありますか?」

「ほへ?カード?」

「お忘れだと受けられませんが…」


カードって何だろ…マリーさんそんなこと言わなかったよね?

でも受けてもらえないと困るんだけど…


「あの…カード持ってません…」

「あら、すみません、それでは登録からですね。

 こちらの用紙に記入をお願いします。」


お姉さんが紙とペンを渡してくれる。

名前とか、種族とか…職業クラス

名前は…ミア、と。

種族って…人間、でいいんだよね。

職業って何…?


「あのー、すみません、職業って何を書いたらいいんですか?」

「何って…あなたの職業ですが…」

「宿のお手伝い、でいいのかな?」

「いえその…例えば戦士ファイターとか…ではなさそうですね。

 もしかして魔法士ソーサラーとか…」

「あ、白色魔法使えます。」

治療師ヒーラーだったんですね。

 それではそのように書いてください。」


ふみゅ…治療師っと。

これでいいのかな?

お姉さんを見ると、紙をチェックしてうなずいてる。


「はい、それではこれでお受けしますので、しばらくそちらのベンチに掛けてお待ちくださいね。

 できましたら、お呼びいたしますので。」

「あ、はい、ありがとーございます。」


何とかなりそうかな?

とりあえずベンチで待たせてもらおっと。


「ミアちゃん、いけた?」

「あ、ユーリさん。

 うん、何とかなりそうです。」

「何とか?何か面倒なことでもあったの?」

「…よくわかんないけど、たぶんだいじょぶだと思います。」

「そっか。こっちも見つけたよ。

 ちょっと詳しいこと聞きたいから、並んでくるね。」


そういって、ユーリさんも列に並んだ。来たときよりちょっと人も減ってて、列も短い。

すぐにユーリさんの番になって、カウンターでお話を聞いてる。

そのとき、「ミアさーん」って、さっきのお姉さんが呼んでくれた。


「はい。」

「お待たせしました。

 登録が済みましたので、こちらをお渡ししておきますね。

 ギルドは各国共通なので、この身分証カードでどのギルドでも依頼を受けることができます。

 また、登録がタレイアギルドになりますので、何かあればこちらの方に連絡が回るようになっています。」

「は、はい…」


何か大変なのね…依頼を受けてもらうって。


「それでは先ほどの依頼をお預かりしますね。

 分かっていますけど、一応形式ですので、依頼を受けるときは身分証も一緒にご提示くださいね。」


今もらったばかりの身分証と、マリーさんから預かってきたメモを一緒にお姉さんに渡した。

お姉さん、メモの内容を確認してくれてたんだけど、急にびっくりしたみたい…どうしたんだろ?


「ミアさん…これって…」

「あ、えと、依頼です。

 マリーさん…じゃないや、白枝亭に持ち込まれた分ですけど、引き受けていただけるか確認をお願いします。」


マリーさんに教わった通りに伝えたんだけど…お姉さん固まってる…

お話が終わったのか、ユーリさんがこっちにきてた。


「ミアちゃん、どうしたの?」

「お姉さんが…」

「ぁぅ…その…ごめんなさい、わたし、勘違いしてました…

 ミアさんは、白枝亭に持ち込まれた依頼を受けてもらえるかということでいらっしゃってたんですね?」

「え…そです…けど?」

「きゃー!すみませんー!!」


お姉さんが急にがばっと頭を下げて…ゴチンって…カウンターに…

うぁ…すっごい痛そう…

周りにいた人もみんな見てるよ…

あ、お姉さん、おでこを両手で押さえてカウンターの上にうずくまってる…


「~~~~~~っ!!」

「だ、だいじょうぶですかっ?!」


ユーリさんもびっくりしてるし…

あ、そだ、こんなときにも魔法かな?

うずくまってるお姉さんのおでこを押さえてる両手の上から手をかざして意識を集中した。


「《負傷治癒ヒーリング》」


ほわっとあったかい光があふれる。

上手く行けたかな?


「う~~…重ね重ねすみません…」

「だいじょぶですか?」

「はい、ありがとうございます…」


そういったお姉さんの目には涙がにじんでたけど…とりあえずおでこはだいじょぶっぽいかな?

それにしても、どうして大慌てしたんだろ?


「あれ…ミアちゃん、その身分証って…」

「あーーー、すみません…

 実はミアさんが冒険者に登録して依頼を受けたいのだと勘違いしてしまって…」

「冒険者登録されちゃったのね…」


ほへ?かんちがい…?

ってことは、依頼を受けてもらうのに登録とかいらなかったんだ…

でも、何か困ったことになったわけじゃないしいいよね。

お姉さん、すっごい落ち込んでたし、気にしないでくださいって言って、せっかくなので身分証ももらって帰ることにした。

たぶん使うことなんてないだろうけど。

依頼の方は、中身を確認してまた連絡くれるっていうことで、ユーリさんも、気になるお話はちゃんと聞けたみたいだしそのまま帰ることになった。


帰ってからユーリさんと2人で、マリーさんとクルトさんにギルドでのことを話したら、2人ともすっごい笑ってた。

お姉さん…ふぁいと!

でびゅー…?

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