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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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53 大騒ぎの日 その2

マリーさんとシャルテさんと3人で、教会へ急いでく。

広場の方が騒がしい感じで、この辺りは今は割と落ち着いてる気がするんだけど。

マリーさんとシャルテさんの表情は曇ってる。


「入られたみたいね。」

「はい、門で止められなかったようです。

 あまり被害が大きくならなければよいのですが。」


2人の話を聞けば、あたしにだって魔獣が街に入っちゃったってことはわかってしまう。

どうか、こっちに来ませんように…


しばらく細い道を進んで、大通りに出たら、魔獣の暴れた痕跡のようなものを見ることができた。

壊れた台車やタルの破片みたいなのがあったり、水か何かがたくさんこぼれたような跡があったり。

道沿いに被害が出てるみたい。

早足で進みながらマリーさんに聞いてみた。


「マリーさん、ファングボアってどんな魔獣なの?」

「簡単に言っちゃえば、大きなイノシシよ。

 ただ、名前の通り、牙が特に大きくてね。

 その牙で突進して体当たり何かされたら、そりゃもう大変なのよ。」

「実は教会に運ばれてこられた衛兵の方も、門を破ろうと突進してきたファングボアに引っかけられてしまったということで…」


シャルテさんの言葉を聞いて、マリーさんがうわぁ…って言ってる…

どうしよう、大変そうなんだけど…

その後も、いくつもの被害跡を見ながら、教会にたどり着いた。


「シスターシャルテ、おかえりなさい。

 お目当ての方は見つかったようですね。」

「はいシスター、引き受けていただけました。」


シャルテさんに声をかけたのは、シャルテさんと同じような服を着てる、だいぶ年上のおばさんだった。

おばさんは、マリーさんの方を向いてお辞儀したんだけど、シャルテさんがあわてて耳打ちしてる。

そしたら、おばさんびっくりしたみたいになって、あたしにお辞儀した。


「申し訳ありません、早とちりしてしまい失礼しました。」

「え、えぇっ?!」


おばさんと一緒に、シャルテさんも頭を下げちゃったから、どうしていいか困っちゃったんだけど、マリーさんが声をかけてくれて、2人とも頭をあげてくれた。


「とにかく、今はそれどころじゃないんでしょ。」

「は、はい。ご案内します。」


シャルテさんについて、奥に向かうと、ベッドがたくさんある部屋についた。

そして、そのベッドの1つで、衛兵さんがうめいてる。

まわりには、衛兵さんや、教会の人たちがいて、腕を布で巻いたり、汗を拭いたりしてる。

布はだいぶ赤く染まってて、ケガがひどいのがすぐわかった。


「すみません、前を空けてください!」


シャルテさんがそういうと、周りにいた人が隙間を空けてくれる。

マリーさんに背中を押されて、空いた隙間にあたしが進むと、周りにいた人たちは、ちょっとおどろいてるみたいだった。

けど、そんな余裕はあたしにはもうなかった。

大きなケガを前にして、体がすくんでしまって、声もうまく出せない…

どうしよう、って思ったとき、この場には何だか合わない、でも聞きなれた声が聞こえてきた。


「にゃー。」

「えぇっ、ネコくん?!」


周りの人も、急なネコくんの登場に固まってる。

けど、あたしはネコくんの声で少し落ち着くことができたんだ。

ネコくんは、横のワゴンからぴょんと飛んで、あたしの肩に器用に飛び乗ってきた。

何だか、がんばれって励まされてるみたい。


「うん、だいじょぶ、できるよ。」

「にゃ。」


そのとき、いつもよりたくさんマナを込めなきゃっていう考えが不意に浮かんできた。

いけるよね、きっと。

衛兵さんの傷口に、布越しに手をかざして〈魔法語ルーンワード〉を紡いでく。


「〈優しき光、包み込み、その傷を癒す助けとなれ…《負傷治癒ヒーリング》〉」


いつもよりマナを込めたからか、いつもより強い光が傷を包んでいく。

マナを使ったっていう感覚もいつもよりもおっきい。

光がおさまると、衛兵さんはぐったりしてしまった。

びっくりしたんだけど、教会の人が、様子を見て、寝てるようですって言ってくれた。


「きつかったんだろうね。

 ケガが治って、気がゆるんじゃったのよ、きっと。」


マリーさんがそう言ってくれて、ちょっと納得した。

教会の人が巻いた布を確認しながら外したけど、傷は見当たらないって言ってくれた。

ちゃんと成功…したんだよね。

周りもほっとした雰囲気になってる。

あたしもちょっとほっとしたら、何か急に力が抜けちゃって、その場に座り込んじゃった。

その拍子にネコくんは飛び降りてどこかに行っちゃった。


「ミア、大丈夫?」

「うん…何かほっとしたら力抜けちゃいました…」

「ミアさん、本当にありがとうございます。

 あとはわたしたちの方で看ますので。」


シャルテさんも、さっきまでの緊張した感じがなくなって、ほっとしてるみたい。

うん、力になれてよかった。

一緒にきてた衛兵さんが、お礼をって言ってたけど、別にそんなのいらないっていっておいた。

シャルテさんも、お茶を用意するから、少し休んでいったらって言ってくれたけど、宿も気になったから、せっかくだけど、遠慮させてもらったの。


教会の外に出ると、そこら中で片付けが始まってた。

さっきまでの緊張感がだいぶ薄れてる、かな?

マリーさんは、もう決着がついたんじゃないかって言ってた。

すこし落ち着いた街をマリーさんと手をつないで宿へ向かってく。


あたしは、よかったっていうことしか考えてなかったんだけど。

あとで、このことに絡んでちょっといろいろあったんだよね…

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