50 不安をなくすいい方法
結局昨日はマリーさんが一緒にいてくれたこともあって、あのあとってほとんど覚えてないくらいにすぐ寝ちゃったみたい。
悪い夢を見ることもなくて、すっきり目が覚めたんだけど、マリーさんはもういなかった。
今は明るいし、1人でいても、不安は全然ないかな。
あ、あんまりぼーっとしてたら準備に遅れちゃうから、手早く着替えて降りなきゃね。
今日も1日、がんばるぞー!
朝の食堂で、アリサさんが今日の午後、また時間取れるなら魔法のお勉強したいって言ってくれたから、今日は午後の休憩は授業してもらえることに決定。
その分午前中の休憩は短めにして、できることやっとかなきゃね。
何だか、元気も湧いてきてた気がしたから、薪割りをがんばったんだよ。
お昼の食堂営業が終わって、軽くご飯すませたら、今日はあらかじめ、お茶の用意をして部屋に戻った。
窓を開けっぱなすと、さわやかな風が吹き込んでくる。
今日はお外も気持ちよさそうだね。
しばらくすると、コンコンと扉がノックされて、アリサさんの声が聞こえた。
扉までお迎えに行って、いつもどおりアリサさんがイスに、あたしがベッドの端っこに座って、今日の授業が始まった。
「さてー、今日はー、一度に2つの魔法をー、教えちゃおうとー思っていますー。」
「一気に2つですか?!」
あんまり魔法を一気に教えるようなことはない感じだったんだけど、どうしたんだろ。
アリサさんはあたしを見て、クスッと笑うと、理由を説明してくれた。
「それはですねー、ミアちゃんがー、ある程度の魔法ならー、きっと簡単にー、扱えてしまうと思うからですねー。
この前のー、様子を見てるとー、きっと今日も大丈夫ですよー。」
そういえば、前のときも、《光》の魔法はすぐに使うことができたんだよね。
でも、だんだん難しくなると大変そうだよね。
今日もちゃんと使えるようになれるかな?
「それとー、もう1つはー、ミアちゃんのー、不安が解消できればとー、思いましてー。」
「え、と…?」
「以前にー、光という特性がー、悪魔に対抗する力にー、なるって言いましたよねー。
使うことはー、きっとないでしょうけどー、使えればー、不安が少しでも解消できるかなーって思いましてー。
ただー、少しこちらはー、マナの消費量も多くてー、扱いが難しいかもしれませんー。」
アリサさんたちも、昨日のあたしの様子が変なことに気付いてたんだね…
でも、もしかしたらこれでもっと不安解消できるかもしれないよね。
それならちょっとくらい難しくても、覚えてみたいなって思ったから、あたしはアリサさんに「よろしくお願いしますっ!」ってお辞儀した。
「はいー、それではー、まず1つめですー。
この間覚えてもらったー、《光》の魔法がー、ありましたよねー。
《光》はー、しばらくは持ちますがー、明るさはー、さほどなかったですよねー。」
「そいえば、昨日、夜に明かりにしてたら途中で消えました。
でも、ちゃんと周りが見えてましたよ?」
「ロウソクのー、灯りくらいにはー、明るいですからー。
この魔法はー、光が長持ちしますよー。」
っていうことは、昨日みたいに途中で切れてびっくりしたりはしないってことよね。
とっても便利かも?
またアリサさんの本を見せてもらって、〈魔法語〉をなぞる。
そしてそのイメージ、光がそばにあって照らし続けてる感じ…
「さっそくいってみましょうー。」
「はい。
〈光よ、我に寄りそいて照らし続けよ…《持続光》〉」
ほわんと指先に光の玉が現れる。
見た目は《光》と同じだけど…違うんだよね?
たぶん…
「これはー、だいたいー、半日くらいは持ちますねー。
あとー、物に対してかければー、そのものの一部が光り続けますよー。」
「夕方に使ったら、朝までいけちゃうんですね。」
「そうですねー。
とりあえず今ある光を消しましょうー。
消すのはー、術者がー、念じるだけでできますー。」
言われた通り、消えてって思ったら、光はすっと消えてしまった。
ほんとに便利な気がする。
《光》がなくてもいけるのかなって聞いてみたら、マナを使う量が《光》よりちょっと多いから、使い分けた方がいいんだって。
「それでは次に行きましょうー。
実はー、この魔法がー、ミアちゃんの不安をー、やわらげてくれるかもー、しれないですー。」
「悪魔に対抗できる魔法…?」
「はいー、ただー、その中でもー、一番弱いーものなのですがー、それでもー、今までのものよりー、マナの消費はー、多くなりますのでー、注意が必要ですー。」
さっきのところから少しページをめくって、開かれたとこにある〈魔法語〉を読んでみる。
今までよりも少し長い感じがする。
〈真白き光、清らかなるもの、世界に仇為す邪悪なるものを押しとどめる力となれ《聖光》〉
こんな風につづられていた。
「この魔法はー、悪魔が現れた後になってー、使われるようになったー、魔法だといわれていますー。
悪魔はー、現れた時からー、この世界のー、敵ですしー、それ以前はー、必要のないものですからー、きっとー、そうなんでしょうねー。
このようにー、前に手をかざしてー、唱えてみてくださいー。」
「はい、やってみますね。
〈真白き光、清らかなるもの、世界に仇為す邪悪なるものを押しとどめる力となれ…《聖光》〉」
そうすると、かざした手のひらから、真っ白な光がふわっと輝いた。
すぐに消えてしまったけど、今までの光よりもたしかに清らかな感じがする…気のせいかな?
そして、マナの減りもちょっと感じられるかなっていうくらいだけど、《光》や《持続光》よりも多いかな?
「ミアちゃんやっぱりすごいですねー。
この魔法もー、一発で成功だなんてー。
やっぱりー、以前はー、魔法が使えてたのかもー、しれませんねー。」
「ありがとーございます。
でも、こんなので効くのかなぁ…?」
「これはー、一番初歩のー、魔法ですからー。
でもー、ちゃんとー、効果はありますよー。
もちろんー、使うことにはならないとー、思いますけどー。
これでー、少しはー、安心してもらえるとー、うれしいですー。」
そっか、そうだよね。
使うことはないと思うけど、覚えてたら安心だよね。
何だっけ、こういうの誰かが言ってたよね。
備えれば嬉しい…だっけ?
何か違うかも…
とにかく、こうしてまた1つ、不安をやわらげるための優しい気持ちを感じることができたんだ。
アリサさん、ほんとにありがとです!