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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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48 不安な報告

「マリーさん、ただいま。」

「あら、エリカ、とレックス。おかえり。」

「こんにちはッス。」

「お2人とも、おかえりなさいですー。」


お昼もそろそろお客様が帰りはじめたころに、エリカさんたちが帰ってきた。

一昨日の朝一番で出発したから、何となく帰ってくるの夜かなって思ったけど、早かったんだね。

にしても、2人だけ…?

フェリックスさんとアリサさんはついてきてないみたいだけど…

マリーさんも同じこと考えてたみたい。


「そういえばリックとアリサは?」

「あ…リックはギルドの方に…アリサも魔法士ギルドです。

 ちょっと報告に…あとでマリーさんにもお話すると思います。」

「…何かあった?」

「はっきりと、ではないですが…気にかかります。」


何だか急に難しそうなお話に…マリーさんの表情も何だかちょっと険しい感じ。

あ、あっちでお客様が呼んでる。行かなくちゃ。


「すみません、おまたせしました。」

「あ、いやいや、いいんだよ。

 お勘定頼むわ。」

「はい、ありがとーございます。」


お代金を受け取って、挨拶して見送ったら、食器のお片付け。

厨房に持っていこうとしたら、マリーさんが「ランチ4人分通しておいて。」って。

きっとみなさんの分だよね。



「クルトさん、4人分追加です。」

「こんな時間に珍しいね。」

「たぶん、フェリックスさんたちのかなって。

 今、みなさん帰ってきたとこです。」


「なるほど。」ってうなずきながら、すでに準備に入ってるクルトさん。

行動、早いです!

その後も何度か食堂と厨房を往復して片付けてる間に、フェリックスさんとアリサさんも合流してた。


「よし、できた。

 私も2つ持つから、ミアはあと2つを頼むよ。」

「はいー。」


もう新規のお客様も入ってないから、クルトさんと2人でみなさんの分を運んでいくことになった。

食堂に入ると、フェリックスさんたちがテーブルについてて、マリーさんも一緒に座ってた。


「お待たせ。」

「どうぞです。」


みなさんの前に、ランチのプレートを並べていく。

少し遅めのお昼だったから、みなさんおなか減ってたみたいで、すぐにご飯に取りかかってる。

フェリックスさんたちならいいからって、マリーさんにいわれて玄関のプレートを準備中に替えてきた。


戻ってきたら、クルトさんがいなかったんだけど、マリーさんに座っててって言われたから、フェリックスさんたちの隣のテーブルに座ってることにした。

ランチは量がそんなに多くないから、フェリックスさんたちのご飯もそんなに時間はかからなかった。

ご飯が終わるころに、クルトさんがみんなの分のお茶を準備してくれてたみたいで、そのままみんなでお茶することに。

人数が多くて、大きめのポットで淹れるみたいだから、その間にあたしとマリーさんで、食器を水場に運んでおく。

うん、連携プレー。



「さて、みんな揃ったわね。

 それで、いったい何があったの?」

「あぁ、実は今回俺たちは護衛だったんだけど、少人数で割と急ぎたいのと、貴重品だからってことで指名があったんだよ。」


マリーさんが切りだして、フェリックスさんが答えてお話が始まった。

何となく雰囲気が楽しそうじゃないんだよね…

一体どうしたんだろ?


「護衛自体は問題なく終わったんだけどな…

 前に話したことがあったと思うんだけど、どうも噂どころじゃないかもしれないんだ。」

「前って…あれよね。」

「あぁ、今回、行きがほぼ1日で、帰りが若干早かったけど…

 こんな短い行程で、2回遭遇、しかも街道沿いでだよ…

 偶然だとはちょっと、な…」


何か変なものに会ったのかな…

あれ、わかってないのあたしだけかな…

でもこのままじゃ何だかよくわかんないし。


「あの…遭遇って?」

「ん、ああ…悪魔族だよ。

 そんなに強くはなかったけどね。

 あれ、こないだミアちゃん話に入ってなかったっけ…」


あくま…って…

何でそんなのがでてくるの…?

普通に暮らしてたら会わないっていってたのに…


「ミア。」

「ひぅっ…」


隣りに座ってたクルトさんが、あたしの手を握ってくれてた。

でもあたし、自分の手をぐっと握っちゃってて、うまく開くことができない…

何だろう…怖いような、許せないような、何か緊張してよくわからない…

クルトさんがゆっくり手を開いてくれたけど、あたしの手のひらには自分でつけたつめあとがくっきり残ってる。


「大丈夫だよ。

 ここにいるわけじゃないんだから。」

「うん…」

「さ、ちょっとお茶のお代わりを淹れに行こうか。」

「ん…」


きっとまだお茶は残ってると思うけど、あたしはクルトさんの提案に甘えさせてもらうことにした。

だって、みんな心配そうな顔してる。

だいじなお話なのに、あたしが止めちゃだめだから。


「ご、ごめんなさい。

 ちょっとびっくりしちゃいました。

 おいしいお茶淹れてきますね。」


それだけ言って、クルトさんと一緒に厨房に向かった。

だいじょぶだよね…

何も起こらないよね、きっと。

そう思いたいけど、どうしても一度膨らんだ不安は消えてくれない…


厨房に入ったけど、クルトさんはお茶を淹れようとはせずに、あたしをイスに座らせて、隣りに座ってくれた。

クルトさんが繋いでくれてる右手だけが少し安心してる気がする。

うん、きっと、きっとだいじょぶだよね。

少しいつもののほほん雰囲気ではありませんが…

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