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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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46 かみさまのおみちびき その1

今日も午後の予定がないからお出かけの予定してたんだけど、ユーリさんは今日も採取にいってるみたいなんだよね。

お昼の片付けをしながら何しようかって思ってたんだけど、意外なお客様が来てくれたんだ。


「ごめんください、わたし、ミルファム教会でシスターをしておりますシャルテと申しますが…」

「あ、シャルテさん、いらっしゃいませ。」

「こんにちは、ミアさん。

 よかった、お店が違ってたらどうしようかと。」


シャルテさんがほっとした感じでそう言った。

買い出しに行った帰りにうちに寄ってくれたみたいだけど、どうしたんだろ?


「以前、教会に来ていただいたときに、魔法について知りたいと仰っておられましたよね。」

「は、はい…」

「実は教会の方で、魔法に関して書かれた古い本を見つけることができましたので、お知らせしようと。」

「はぅ!わ、わざわざすみませんです!」


あわわわ…こんなことでお手をわずらわせるなんて罰あたりかもしれない…

っていうか、シャルテさんすごくいそがしいんじゃ…

どどどどうしよー…


「あの…ミアさん?」

「は、はひ?!」

「どうされました…?」

「ミア、お客様の前で固まったりしてどうしたの?」


マリーさんが後ろから頭をポンポンってしてくれて、ちょっと落ち着いたけど。

あたしが勝手に聞きに行ったことで、ここまでしてもらうのは悪い気がする。


「すみません…お忙しいのにあたし何かのためにわざわざ来ていただいて…」

「いいえ、ミアさんがわたしのところに来てくださったのは、きっとご縁があったからですよ。

 それはとても大切なこと、ですからぜひにでも訪ねたかったのですよ。」


きっと忙しくないはずはないけれど、こんな風にいってもらえると何だか少し心が安らいだ感じがする。

教会にたくさん人が訪れるのは、きっとシャルテさんみたいな人たちがいるからだよね。


「ただ、その本は持ち出すことはできないので、もしよろしければまた教会まで足を運んでいただければと。」

「あ、ありがとうございます。」


マリーさんの方を見ると、「せっかくのお誘いだし、いってらっしゃい。」って言ってくれたから、片付けがちょっと残ってたけど、マリーさんにお任せして、一緒に教会に向かうことにした。



「そういえば、ミアさんはどうして魔法のことを調べていらっしゃるのですか?」

「あ、実はあたし、白色魔法が使えるんです。」

「まぁ、治療師ヒーラーさんだったのですね。」


…あんまり言っちゃだめだった気がする。

何かシャルテさんのおしゃべりの雰囲気に乗ってすらっと出ちゃった…

だいじょぶだよね…


「え、えとでもあんまり誰にも教えてないって言うかその…」

「すみません、変なことを聞いてしまいまして。」

「いえ、あの、その…」

「では、わたしも告白してしまいますね。

 実はわたしも魔法が使えるのです。緑色だけですが。」


「これで、お相子ですね。」って笑ってるけど…

その笑顔を見てると何だかだいじょぶな気がしてきた。うん。

教会までいろいろおしゃべりしながら歩いてく。

冒険者の宿のことや、あたしがどんなことしてるかとか、どうして白枝亭で働いてるかとか。

あたしが記憶喪失だっていうところで、シャルテさんの表情が曇っちゃった。


「すみません、辛いことを聞いてしまいましたね。」

「あ、いえ、そんなことないです。

 あたし、今がとっても幸せだから、もし記憶が戻らなくても平気だし、記憶がなくなったからみなさんに会えた気がするんでs。」


あたしのそんな答えに、シャルテさんはちょっと驚いた表情をしたけど、すぐに笑顔で「そうでしたか。」って言ってた。

そうこうしているうちに、教会にたどり着く。

今日も教会はたくさんの人が出入りしてるみたい。

入口近くで、シャルテさんはたくさんの人にあいさつされてた。

こんなに優しい人なんだもん。

みんな大好きなんだね、きっと。


中に入ったところで、いったん待つことになった。

すぐに戻ってきたシャルテさんは、鍵の束を持ってきてた。


「おまたせしました。それでは行きましょうか。」

「はい、よろしくお願いします。」


シャルテさんについて、脇の細い通路を通って教会の奥に進むと、上に上がる階段の奥に、頑丈そうな扉が見えた。

シャルテさんが鍵を差し込むと、扉の鍵はカチャリと音を立てて開く。

「よいしょ」って声をかけて開けるほど、扉は重そうだった。

すっごく分厚くて、あたし何か開けれるのかな…?


中は真っ暗だったんだけど、シャルテさんは入ってすぐのテーブルの上に並んでる、小さなガラスのビンのようなものを1つ取り上げた。


「それは…?」

「これは[光結晶ライトクリスタル]です。

 見たことはないようですね。」


シャルテさんが見せてくれたビンには、水晶のかけらみたいなものが入ってるけど…[光水晶]って言う割に光ってないよね?

って思ってたら、シャルテさんが〈魔法語ルーンワード〉を唱えた。


「〈光よ〉」


その瞬間、ビンの中の[光水晶]が光りだした。

そう、あたしが《ライト》で出したあの光と同じみたいな。


「シャルテさん、白色魔法も使えるんですか?!」

「これは魔法具の1つですね。自然にあるマナをとりこんで、簡単なキーワードで発動することができます。

 ただ、たまっているマナを使いきると、またたまるまでは使えません。

 ここは、火で灯りをとるわけにはいきませんので…」


シャルテさんが差した先は、[光結晶]からの明かりで照らされてる。

階段を少し下った先にはたくさんの本棚にぎっしりの本。

こんなに本があるの、初めて見た…


「さぁ、参りましょう。

 少し入ったところですからついて来てくださいね。」

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