44 2回目の授業
コンコン
部屋の扉がノックされた。
きっとアリサさんだよね。
「はい、どうぞー。」
声をかけると扉が開いて、予想通りアリサさんが入ってきた。
「こんにちはー。」
「いらっしゃいませ。今日もよろしくお願いします!」
アリサさんに入ってもらって、昨日と同じように椅子とベッドに分かれて座る。
あたしは待ちきれなくなって、報告することにした。
「アリサさん、あたし、できたかもしれないです。」
「はいー?」
「自分の中のマナを感じることが、です!」
「あらー、早かったですねー。
もしかしてー、夜も練習してたんですかー?」
「実は不思議な夢を見て…」
その中で自分の中の大きな力のようなものを感じたこと、そして朝起きて同じようにやってみたら、感じることができたことを説明した。
アリサさんはあたしの話をふんふんと聞いていてくれたんだけど。
「不思議なこともあるのですねー。」
「…は、はい。」
全然不思議そうに見えないんですけど…
とにかく、実際に魔法を使って試そうと思ったら、使える魔法がなかったってことを追加で報告。
「そういえばー、《負傷治癒》だけでしたねー。」
「はい。ケガもしてないから使うこともなくて。」
「そうですねー。それではー、簡単なものからー、覚えてみましょうかー。」
アリサさんが胸のペンダントに触れて少し集中して、前にも見せてもらった《光》を使った。
前と同じように、明るく小さな光の玉が空中に生まれる。
「まずはー、これにしましょうー。
白色の中でもー、一番イメージしやすくてー、マナもそんなにー、使わない魔法ですからー。」
「はい。」
アリサさんは光を消して、荷物から、本を取り出した。
ゼル先生と同じように、アリサさんも本を持っているんだね。
「えー…あー、ここですねー。
これを見てくださいー。」
「はい。」
テーブルに開かれた本は、〈魔法語〉が書き込まれてる。
アリサさんが指さしたところには、《光》の説明が書いてあった。
「魔法を覚えるときはー、イメージを間違えないようにするためにー、基本的にはー、書かれた文字をー、読んでいくことになるんですー。」
「じゃあ、この本があればいろんな魔法が使えるんですか?」
「そうですねー…人によるとは思いますがー、本の文字だけよりもー、誰かがー、イメージをサポートしてくれた方がー、早く理解できると思いますー。」
アリサさんに促されて、まずは読んでみることになった。
「〈礎となりし片割れ、我が手に輝け〉」
「問題ないですねー。
光はー、この世界を創ったといわれるー、二柱の神々のー、一柱そのものですねー。
ですからー、この世界の誕生時からー、ずーっと存在しているわけですー。
そのイメージを持ってー、今度は実際に使ってみましょうー。」
イメージ、世界の始まりからあった光…
きっとずーっと世界を見守ってくれてるんだよね。
「やってみます。
〈礎となりし片割れ、我が手に輝け《光》〉」
その瞬間、あたしの前に光の玉が現れた。
「できましたっ!」
「はいー、問題ないですねー。
それでー、マナはどうですかー?」
「えっと…あれ、減って…ない?」
《負傷治癒》のときほどじゃないけど、何か(たぶんマナ)を使った感覚みたいなのはあったんだけど…
「んー、おかしいですねー。
ミアちゃんから聞いた感じではー、合ってるような気がしたのですがー。
もう一度使ってみましょうー。」
アリサさんに言われて、2回目の《光》を使ってみたけれど、やっぱり減ってる感じがしなかた…
「アリサさん…ダメみたいです。」
「そうですかー…
しょうがないですねー、少し無茶かもしれませんがー…」
アリサさんの案は、《光》をさらに使い続けることだった。
《光》はマナをあんまり使わないから、初心者でも10回くらいは使えてしまうことがあるみたい。
「もし疲れて倒れてしまってもー、何とかしますのでー、張り切っていきましょうー。」
「は、はい…」
もうこうなったらやるしかないよね。
あたしは《光》を使い続けた。
3回目、4回目、5回目…
7回目、8回目…
9回目…
「あ…」
「だいじょうぶですかー…?」
「はい、ぜんぜんだいじょぶです。
あの…ちょっと減ってきたかも…」
「ちょっとだけですかー?」
うん、まだほんのちょっとだけど、減ってるっぽい感じがする。
よかったー…あたしの感じてたのはマナで間違ってなさそうだよね。
「これはー…もしかするとー、ミアちゃんは記憶を失う前はー、治療師だったのかもしれませんねー。
とてもたくさんのマナをー、中に持っているようですー。
詳しくはわかりませんがー、わたしとー、同じくらいかもー?」
「はひっ?!
そ、そそ、そんなことぜったいないでしゅよ…」
「あくまでー、想像ですけどねー。」
アリサさん、笑いながらいってるけど…まさかそんなね…
うん、絶対ないない…
とにかく、あんまりにもびっくりしすぎて集中力も途切れちゃったので、今日はここまでになったんだけど。
まさか、ね?
何だか大変なことになってきました…