43 もしかしてこれが
真っ白な
どこまでも真っ白な世界に
あたしは立っていた
何となく、これが夢だってことがあたしにはわかった
でも
今日の夢はいつもと違ってた
目の前には黒いネコ
ネコくん、夢でも来てくれるんだね
とととっと歩いてくるのを、しゃがんで待ちうける
ネコくんは、あたしのすぐ前でとまって、右手(前脚?)をちょいと差し出した
何となくその手を握ってみる
にくきゅう、ぷにぷに
夢だけど、何だかリアルな感触
そうやって遊んでいると
ふいにネコくんが走り出した
追いかけるあたし
逃げるネコくん
何だかうまく追いかけられなくて
全然距離が縮まらないけど
不安は感じない
ネコくんはあたしをどこかへ連れて行こうとしてる気がする
気がつけば真っ白だった周りが暗くなってた
もう夜よりも暗い感じだけど
なぜかネコくんははっきり見えてる
そしてとうとうたどり着いたのは
闇に浮かぶ大きな姿見の前
こんなに大きなものは見たことがないかも
あたしの全身が映ってた
でもよく見るとそれはあたしと少し違う
背の高さも
髪の長さも
着てる寝間着も一緒だったけど
姿見の中のあたしは眼の色が深い赤色
あなたは…だれ?
問いかけの返事はもちろんなかった
けどあなたは示してくれた
言葉ではなく
態度で
両手を重ねて胸の上に置き目を閉じる
それを見てあたしはなぜか自然に同じ姿勢をとっていた
あたしの中にほわっとしたあったかさを感じる
そしてあたしはふわっと抱きつかれた
目を開けるとあなたが抱きついてきてる
とっても懐かしくてとっても安心する感じ
あぁ、あたしはあなたを知っている
自然と目が閉じる
そのときあたしはあたしの中に
大きな力を感じた
これが…あたし…
目を閉じているのに
まぶしくて
暗い
まぶしい…
まぶ…しい?
「はひっ?!」
…ベッドの上。…雨戸、ちょっと開いてる。
昇りはじめたおひさまの光が雨戸のすき間から差しこんで、ちょうどあたしの枕もとを照らしてた。
「そっか…夢、だよね。」
そう、夢だったんだけど、できた気がしたんだよね。
あたしの中のマナを感じることが。
両手を胸に当てて目を閉じて、そう、夢の中で抱かれていたときのように心を穏やかに…
「………あ。」
あたしの中にある大きなほわっとした、だけど力強くある何かを、はっきりと感じることができる。
これがあたしのマナ…
…なのかな?
確かアリサさんは、マナを感じながら魔法を使うと、マナが減るのがわかるっていってたけど…
ケガしてないのに、魔法使えないよね。
今日もアリサさんが来てくれるはずだし、そのときに聞いてみようかな。
「あ、早くいかなきゃ!」
ちょこちょこやってるうちに、おひさま少し昇りはじめてる。
慌てて着替えて降りようとしたんだけど、慌てるとなかなかうまくいかない…
何とか着替えて、髪を束ねて結んで、準備完了!
まだお客様は寝てるかもしれないから急ぎたいけど、静かに歩いて階段を降りてくと、もうマリーさんが食堂の準備はじめてる。
「おはよーございます。遅れてごめんなさいー。」
「おはよう、ちょっと疲れてた?」
「ううん、起きてからちょっとぼーっとしちゃってて…
すぐお手伝いしますー。」
「じゃ、テーブルどんどん拭いていってね。」
「はーい。」
厨房に入ると、クルトさんももう作業中。
「おはよーございます。」
「はい、おはよう。」
邪魔にならないように、端っこを通って水場で布巾をしぼる。
念のために2つ持っていこう。
食堂に戻ったら、もうイスは全部降ろしてあった。
「あ、ミア、布巾もう1つ持ってきてくれる?」
「えと、2つ持ってきてます。」
「あら、ばっちりね。
それじゃ1ついい?わたしはカウンターから拭いていくから、ミアはテーブルからお願いね。」
「はーい。」
端っこのテーブルからどんどん拭いていく。
今日は何だか朝から調子いいかも。
「ミア、何だか楽しそうね?
何かいいことあった?」
「んー…
あ、夢を見たの。」
「夢?どんな夢?」
…ちょっと説明難しいよね。
「えっと…何か変な夢?」
「…それなのに楽しいの?」
「えへへ…」
マリーさんは笑ってるあたしを見て、不思議そうだったけど、あたしは今から、アリサさんの授業が楽しみなんだもん♪
でも、お仕事するときは集中しなきゃね。
今日も元気にいっちゃうからね!