42 お仕事中は集中しなきゃね
結局、休憩の後もあたしは自分のマナの量を感じることができなかった。
アリサさんは、「一度ー、これってわかればー、あとはもう自然にできちゃいますからー。」っていってたけど。
最初が難しいのね…
コツ、かぁ…
「ミア!」
「はひっ?!」
「今、ボーっとしてたね。大丈夫かい?」
「あ…」
クルトさんの声に、意識が手元に向いた。
あたし、お皿を持ったまま、水場を通り過ぎてた…
これじゃダメだよね。
今はしっかりお仕事に集中しなきゃ。
「ごめんなさい、だいじょぶです。」
「わかった。それじゃ、できてるやつ運んでいって。」
「はいっ!」
夜の食堂は、一番忙しい。
宿のお客さん以外にも、ご飯を食べにきたり、お酒を飲みにきたりするから。
できあがった料理を、食堂に運んでいくと、マリーさんも急がしそうに動いてた。
お客様のイスの間を抜けて、注文されたテーブルに料理を運ぶ。
「お待たせしました。日替わりプレート2人前です!」
「おー、ミアちゃん、待ってたよ。」
「今日のも美味そうだなっ!」
常連さんはあたしのことをミアちゃんって呼んでくれる。
すっかり定着しちゃった感じかな?
慣れてないうちからいろいろと声をかけてくれるお客様が多くて、がんばる元気一杯もらったしね。
厨房に戻るときは、空いてるお皿やカップを回収していく。
重ねて積んでくれてたりすると、回収しやすいんだよね。
いくつかのテーブルやカウンターを回って回収したら、また厨房に戻る。
そして、水場の桶につけていく、っていうのが一連の流れかな。
席が埋まってある程度過ぎれば、少し余裕が出てくるんだけど、そのときに、マリーさんと交代で、ちょっとずつ水場の食器を洗っていく。
全部貯めちゃうと、後で大変なんだよね。
でも、ずっと洗ってるわけにはいかない。
だって…
「ミア、テーブル空いたから、お願いー。」
食堂からマリーさんの声。
お客様がお帰りになったら、テーブルのお掃除。
忙しいときは次のお客様がすぐに入ったりもするから、手早くしないとね。
食堂の空いたテーブルの食器をかためて、布巾でテーブルを手早く拭き上げる。
待ってるお客様がいるみたいだね。
食器を厨房に運んだら、ご注文を聞きに来なきゃいけないかな?
食器を持って動きだしたあたしにマリーさんが声をかけてくれる。
「注文はわたしが受けるから、水場、お願いね。」
「はいっ!」
戻って水場で洗い物してると、マリーさんから注文が届いた。
っていってもつくるのはクルトさんだから、あたしはお皿を用意したりするだけ。
早く料理もがんばらないとだめだよね…
何だかやることいっぱいだよー!
「はい、上がり。ミア、頼んだよ。」
「はいっ!」
できあがった料理を運んでいくと、新しいお客様は知ってる人たちだった。
「あ、フェリックスさん、エリカさん、レックスさん。
おかえりなさいですー。
お料理お待たせしましたー!」
「ただいま。
ミアちゃん、すっかり慣れたなぁ。」
「えへへ、ありがとーございます。
そいえば、アリサさんは?」
「何か用事があるって、別行動。
ま、そのうち帰ってくるだろうけど。」
「そですか。
それではごゆっくりですー。」
そのあとも、空いた食器を回収して厨房に戻ったんだけど、今夜の山は越えたみたい。
テーブルもカウンターもだんだん空いてきてる。
ここまで来たら、食堂の方はマリーさんにお任せして、あたしは水場に専念だね。
「はい、今日もお疲れ様でした。」
「お疲れ様。今夜も繁盛してたわね。」
「おつかれさまでしたー。」
片付けも一段落して、お茶で休憩。
今日も忙しかったけど、食堂もにぎわってたからいい感じだよね。
「そういえばミア、魔法の方は調子どうなの?」
「んー、むずかしーです。なかなかうまくいかないです。」
「そうかー、最初にあっさり使えてしまったみたいだから、簡単なのかと思ったんだけどそうでもないんだね。」
「はいー…あれ、そいえばアリサさんって帰ってきたのかな?」
「アリサ?そういえばあの子、リックたちが食事し終わったころに来てたわね。」
「ご飯、食べてないのかな…」
「どうかしら…外ですませてきてるかもしれないけど。
気になるなら、あとで果物でも持っていってあげる?
お世話になってるしね。」
「はいっ。そーしてみます!」
あたしだけ、お茶をちょっと早めに切り上げて、クルトさんに用意してもらった果物を持っていくことにした。
ほんとはあたしがやるべきなんだけど…あたしがやると時間かかりすぎるもんね…
「あとは私たちで片付けておくから、ミアはそのまま部屋に戻っていいよ。」
「ありがとーございます。
それじゃ、おやすみなさいです。」
果物をのせたトレーを持って、階段を上がってく。
喜んでもらえたらいいな♪
5000PV越え、ありがとうございます!
無事に魔法が使えるようになるでしょうか…