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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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3 一人でお使い

「やぁっ!」


カコンッ


小気味良い音を立てて薪が真っ二つになる。

これはあたしのお気に入りのお仕事の1つ。



朝食時の片付けも終われば、次はもうお昼の準備に取り掛からなきゃいけない。

でもあたしは、料理はあんまり得意じゃなかったみたい…(あまりにも包丁の扱いが危なっかしくてクルトさんにすぐに止められたの…)

だから、チェックアウトした部屋のお掃除や薪割り、お買い物なんかでお手伝いしてる。



薪割りは、クルトさんのお仕事のようすを見てたときに、何となくできそうな気がしたからちょっと試させてもらったら、意外と上手くいったんだ。

以前にやっていたのかもしれないし、何か思い出せたらってことでさせてもらってる。

っていっても、あんまりたくさんはできないんだけどね。



割るのは楽しいのよ?でも…

ある程度の量を作ったら、薪を束ねて裏にそろえておかなきゃいけないの。

実はこれが大変で、薪って束ねるとすっごく重くなる。

ふらふらしながら運んでいるのを見て、クルトさんは

「斧の扱いは割と様になってるのになぁ」って笑ってた。

一応女子だもん…力持ちの方だとは思うけど。

ま、包丁でケガするよりは運んでる方がいいし、がんばらなきゃね!



「ふぃ、おっしまい♪」


汲んでおいた水で手を洗って、お勝手から宿に戻ったら、クルトさんがお昼の仕込み中だった。


「薪割りかんりょーです!」

「はい、ご苦労様。戻ったらマリーが来てくれって言ってたよ。」

「はーい。いってきまーす。」



とてとてとカウンターの方に向かったんだけど。

マリーさんはいなかった。

「はれ?マリーさーん!」

「あ、ミア来てくれた?ちょっと待ってね。」


上からマリーさんの返事が。待ってるとすぐにマリーさんが降りてきた。


「もうお昼も近いし、クルトは手が離せないだろうし、あたしも出られないからちょっとお使いお願いね。」

「はーい。何か買ってくるの?」

「いや、頼んでくるだけでいいよ。こないだ一緒に行った市場の酒屋さんに、またいつものやつ1樽っていえばわかるから。」

「ん、それじゃいってきますー。」

「お昼前には戻ってこれるようにちょっと急いでね。」

「はーい。」



市場まではそんなに遠くないけど、だいぶお日様も高くなってるしちょっと小走りしていくことにした。


道も簡単だし、すぐに市場には到着。


「酒屋さんは…あっちの方だったかな?」


ばっちり正解。ちゃんとありました。

店頭には初めて見るお兄さんがいた。こないだはおじさんがいたのに。


「すみませーん。」

「いらっしゃいませ。初めてですか?」

「えと、この前一度来て、白枝亭のお手伝いをさせてもらってて…」


とそこにこないだ見たおじさんが奥から出てきた。


「おう、嬢ちゃん、お使いかい?」

「あ、こんにちは。お願いします。」


そのやり取りを見てお兄さんがおじさんに声をかける。


「親父、この方は?」

「白枝さんとこでこないだから手伝いしてるって嬢ちゃんだよ。」


とおじさんが紹介してくれたし、あいさつあいさつ。


「はじめまして。白枝亭のお手伝いすることになったミアです。よろしくお願いします。」

「そうですか。僕はリュートです。これからもごひいきにお願いします。」

深々とお辞儀をするお兄さん。丁寧な人だなぁ。



リュートさんのあいさつが終わったらおじさんが声をかけてくれた。

「それで、注文は何だい?」

「あ、そうだった。えと…いつものやつ1樽お願いします。」

「届けるのもいつもの時間くらいでいいのかい?」


はれ?時間…?!なんて聞いてないよー…


「えと、えと…特に何も言われなかったからそれで大丈夫…かな?」

「おいおい、大丈夫かい?」

と酒屋のおじさんに笑われてしまった。


「ま、もし急ぎだったりしたらまた連絡に来な。こいつに運ばせるから。」

そういっておじさんはリュートさんの肩をバンバン叩いて笑った。


「ありがとーございます。それじゃお願いします~。じゃ、ちょっと急ぐので…」

ぺこりと頭を下げて走る。


「ありがとうございました。」

背中からリュートさんの声が聞こえた。

ん~、おじさんと全然違うなぁ…

そんなことを考えながら走ってたから、宿に帰るまでにこけてしまったのは内緒…

うー…いたかった…

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