36 ゼル先生の大予想 その2
「ネコくんが何で発動体を持ってたの?!」
「生き物の体内にあっても発動体って使えるんですか?!」
あれ…?
あたしとユーリさんの疑問は、どうやら別物だったっぽい…?
「まぁ、落ち着いてください。
と、その前に、ミアさん、ブレスレットを返していただけますか?
申し訳ないが、借り物ですから。」
「は、はい…」
ブレスレットを返すと、ゼル先生は、布に包んで懐に仕舞った。
ユーリさんが、3人のカップにお茶を注ぎ足してくれる。
3人とも何となくお茶をすすって一息ついて、落ち着いたけど…
「さて、まずユーリエくんの疑問の方からいきましょう。
これに関しては、小さな生き物であれば実証されています。
ペットが誤って魔石を飲み込んでしまったときに、ペットを通して魔石が反応したという実例が報告されていますから。
大きな動物では実例報告を聞いたことがありませんし、誰も好き好んでそんなことをしようとは思いませんからね。」
「何だか意外だわ…」
「ゼル先生…魔石って何ですか?」
「あぁ、すみません。魔石とは発動体に組み込まれる石のことです。
ミアさんの疑問にも関わるところですが、魔石はつくることができます。
それぞれのマナと相性の良い石、主にはその色の石になりますが、それに魔法をかけることでつくりだすことができます。
ただ、ある程度の力量のあるものでないとできませんが。」
「そっか、石が重要だったんですね。」
「でも先生、それがミアちゃんの疑問とどう関係があるの?」
「はい、実は魔石は自然界でもつくられることがあるのです。」
「えぇっ?そうなんですか?!」
ユーリさん、さっきから驚いてばっかりだね。
あたし?だってよくわかんないし…
「あまり知られていませんが、長い時間をかけてマナが結晶化したものがあるそうです。
まぁ、ほとんど見つかることはない上に、質が高いので、希少価値も高く、目にすることはほとんどありませんが…」
「一般人には縁のない世界なのね…」
「そうですね。
おっと、話が逸れてしまいました。
ミアさんの言うネコが、もしかするとそういったものを誤って飲み込んでいたという可能性はなくもないかと思いましてね。」
「さすがにそんな偶然は…っていっても、それくらいしか説明つかないかも…」
「ネコくん、だいじょぶかな…」
もしそんなの飲み込んでたら、ネコくん変なことになっちゃうとか…
「ミアさん、心配そうですね。
大丈夫ですよ。魔石自体には害はないはずですから。
それに、飲み込んだものならそのうち出てくるでしょうし…」
「そっかぁ…よかったー…」
「…でてくるのよね、やっぱり。」
あれ、ユーリさんどうしたんだろ?
何か遠い目してる…
「ところでミアさん、もし本格的に魔法を使ったり勉強したりするならば、ギルドに入るなり、治療師に習うなりということになりますが、どちらにせよ発動体が必要になりますね。」
「あ、そっか。自分の発動体がいるんですよね。」
「はい。ギルドでは使える魔法の発動体しか売ってもらえませんので、ミアさん自身が所属するか、ギルド所属の治療師にお願いするかしかありませんね。
私では白色の発動体は買うことができませんので。」
ゼル先生だと、青色と緑色しか買えないんだね。
魔法、使えるのはわかったけど、使えそうにないかも…
お勉強に行く時間は取れそうにないもんね。
「ゼル先生、ありがとーございます。
あたし、魔法が使えるのがわかっただけで十分です。
宿のお手伝いもあるし、今はギルドとかもいいです。」
「そうですか。今後何かお手伝いできることがあれば協力させていただきますよ。」
「ほんとにありがとーございます!」
ゼル先生は、この後借りてきてくれた発動体を返しに行くから、先に帰ることになった。
あたしもそろそろ、夕方の準備に行かなきゃいけないから、おいとますることにした。
「ユーリさん、あたしもそろそろ帰りますね。」
「うん、気をつけてね。
あ、それから、一応確認が取れたし、クルトさんとマリーさんにはちゃんと報告してね。」
「はーい。ユーリさんもいろいろとありがとーです!」
「いつでも頼ってね。あたしに協力できることならまかせといて。」
もしかしたら、魔法が使えることは、あたしの忘れちゃった記憶の手がかりなのかな。
でも、思い出せなくてもいいかなって今は思ってる。
だって、毎日とっても幸せだから。
帰ったらマリーさんとクルトさんに教えてあげるんだ♪
2人とも、びっくりしてくれるかな?
ちょっと中途半端でしょうか…