31 風邪
「うん、やっぱり熱があるわね…風邪かしら?」
「あぅー…」
「あとでユーリちゃんに来てもらうから、眠たくなくても目を閉じて横になってるのよ。」
「はいぃ…ごめんなさぃ…」
「大丈夫よ。さ、部屋に戻って休んでて。」
今朝、起きたら何だか体がすごくだるかった。
昨日もちょっと暑くて寝つけなかったし、寝不足なのかなって思ってた。
着替えて降りてったら、マリーさんが「ミア、どうしたの、顔真っ赤じゃない!」って。
そのままおでこに手をあてたマリーさんに促されて部屋に戻ってきたところ。
お手伝いできなくて迷惑かけるけど、このまま行っても役には立てないよね…
ちゃんと寝て治さなきゃ…
もっかい寝巻に着替えてベッドにもぐりこむ。
横になってても、体が何だか重たくなった気がする…
「…………ア、………ミア。」
「ほぇ…?」
まだ何かぼーっとしてるけど、声がする方を向いてみた。
マリー、さん…?
何だか声がぼんやりしてるし、まぶしくて見えないよ…
「封……乱れ…………な…、…憶を………せる……し………」
よく聞えないよ…
それに体が動かない…の…
マリーさん…!
「ごめんね、起こしちゃって…」
「あれ…マリー、さん…?」
あたしはベッドに寝てた。
隣りにマリーさんが座ってる。
おでこがちょっとひんやりしてた。
「大丈夫?タオル替えたとこだけど、ちょっと汗もかいちゃったみたいね。
1回着替えた方がいいわ。いける?」
「ん…」
ベッドの上で体を起こすと、寝巻が体にぺっとりくっついてた。
ちょっと脱ぎにくくてもぞもぞしてたらマリーさんが手伝ってくれる。
「ありがとです。」
「ううん、ちょっと体拭いちゃうからじっとしててね。」
動けるほどの元気もなく、ぽーっとベッドの上に座ってたら、マリーさんが硬く絞ったタオルで体を拭いてくれる。
ちょっとくすぐったいけど、ぺとぺとしたのが拭ってもらえて、さっぱりする。
「はい、じゃこれ着てね。」
「うん…」
もぞもぞしながら、マリーさんに手伝ってもらって替えの寝間着に着換えることができた。
「それじゃ、もうちょっと寝てようね。ユーリちゃんももうすぐ来てくれると思うし。」
「ん…」
横になったら、マリーさんがお布団をかけてくれた。
そして、もっかい新しいタオルをおでこに乗っけてくれる。
「マリーさん…いそがしいときにごめんなさい…」
「ミア、気にしすぎよ。それに、あたしたちこそ、気付かなくてごめんね。」
「ううん、そんなことない…そんなことないよぅ…」
そっと手を握ってくれたマリーさん。
ほっとした瞬間、涙が出てきて止まらなくなった。
「うー…っくぅ……うぅー…」
「よしよし…もう少し休もうね。
しばらくはここにいるから、心配しないで。」
「う…ん……ひっく…」
マリーさんがお布団の上から、ぽんぽんって叩いてくれてるのが心地よくて、少しずつ涙も落ち着いてきた。
目を閉じても、マリーさんがずっといてくれるのがわかるから、とっても安心できる…
あれ…何かいる…
黒い…人影…?
いつの間にか周りに何人も…
見られてる…気がする…
どうしていつも…
「…アちゃ…、…アちゃん、ミアちゃん…」
「大丈夫?うなされてたみたいだけど…」
「はれ…ユーリさん?」
夢…っか。
心配そうにのぞきこむユーリさんに、何とか笑顔で答えた。んだけど…
「無理しないの。ちょっと確認させてね。」
そういって、おでこや首をさわったり、口の中を見られたり…
一通り終わったところで、カバンの中からいくつかの包みを取り出してる。
「お薬、持ってきてるから。飲めそう?」
「ん、だいじょぶだと思いま…ふぃ」
体を起こそうとしたらふらっとして、起きれなかった。
「急に動いちゃだめよ。ちょっと下で煎じてくるから待っててね。」
そういって、ユーリさんがパタパタと走っていった。
いつのまにか寝ちゃってたんだね…
何かやな夢見たような気がするけど、さっきよりちょっとは楽になってる…気がするかな…?
少し待ってると、すぐにユーリさんがマリーさんと一緒に戻ってきた。
ユーリさんはカップを持ってきてる。
きっとお薬だよね。
「はい、じゃこれ飲んでね。
むせないように注意してね。」
カップの中身は、黒っぽくて、何か不思議な香りがした。
こく。
一口飲んだら…
「うー…」
「がんばって、ミアちゃん。」
とっても苦い…
鼻をつまんで一気に飲み込んだけど…苦いのが口の中に残ってるよぅ…
「はい、ミア。」
「うー?」
マリーさんが続けてカップを渡してくれた。
今度は何だろ…?
「心配しなくても、ただのお水だから大丈夫よ。」
よっぽど変な顔しちゃったのか、マリーさんもユーリさんもちょっと笑ってた。
もらったお水で口をゆすぐように飲んだら、ちょっとにがにがも治まった。
「あとは寝てれば、夕方にはだいぶ落ち着くと思います。」
「ユーリちゃん、わざわざきてもらってごめんね。」
「そんな、マリーさんたちにはうちもお世話になってるし、ミアちゃんのためですから。」
「ユーリさん、ありがとー…」
「うん、さ、あとはしっかり寝てね。」
「はいー。」
もっかいベッドに横になったら、マリーさんがお布団をかけ直してくれた。
そして…あっという間に…
「にゃー。」
あれ…ネコくん、いつの間にここに…?
でも周りはぼんやりとしてる。
もしかして夢かな…
っていうか、何かネコくん、白く光ってない?
あの時の…魔法使ってるアリサさんみたいに…
じっとこっちを見ているネコくんの目を見てると、何か伝わってくる気がする。
早く元気になって、っていってるような…
何だか体が楽になっていく気がするよ…
ありがとー、ネコくん。
みんなが優しくしてくれたから、きっと明日は大丈夫だよね…?
風邪ってつらいですよね…
夏風邪は特にしんどいっていうけど。
ちょっとミアちゃんをいぢめてしまった気がする…(-_-;)