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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
28/130

27 お祭りの日に その3

腕相撲大会が終わったラルフさんとあたしたちは一緒に少しお祭りを回ることになった。

実はラルフさんも、鍛冶屋さんで出店してるんだって。

だから、ご飯だけ一緒に食べようってことになったの。

ラルフさんのお父さんも、腕相撲大会で優勝したことあるみたい。

それで今回ラルフさんも参加することにしたんだって。


「まぁ、じっくり鍛冶の修行しながら体も鍛えますよ。」

「それじゃ、次回はチャンピオンのラルフが見られるってわけね。」

「ラルフさんがんばってください!」

「はははっ、ちょっと気が早かったかな?」


そんな話をしながら、ラルフさんの屋台の方に向かってく。

途中の屋台で串焼きのお肉といろんな果物のジュースをみんなで分けたりもしたよ。

ちなみに、ラルフさんの屋台では、お父さんが包丁100本研ぎに挑戦中なんだって。

腕相撲といい、ラルフさんのお父さんは、何かに挑戦するのが好きなのかな。

そうこうしているうちに、ラルフさんの屋台についた。

周りには、近所のおばさんたちが輪になっててるとこだった。

中心はもちろんラルフさんのお父さん、包丁を研いでる真っ最中。


「父さん、ただいま。」

「こんにちは。ご精が出ますねー。」

「あぁ、おかえり。マリーさんもいらっしゃい。」


ちらっとこっちを見ただけで、また包丁に集中してる。


「で、どうだったんだ?」

「あー、チャンピオンには勝てなかったよ。父さんの方は?」

「う、む。73本目だ。少しかかり気味かな…」


そんな会話をしながらも、ひたすら包丁を研いでる…すごい。

その横で、ラルフさんは販売の準備を始めてる。

おうちで使えるような簡単なものを安く出売るみたいで、すでに人が並びだしてた。


「あんまりじゃましても悪いわね。わたしたちも戻ろっか。」

「はーい。ラルフさん、おじさん、またですー。」

「がんばってね。」

「すまないね、碌に鎌いもせずに。」

「マリーさん、ごちそうさまでした。」



忙しくなったラルフさんとこの屋台を後にして、そろそろ宿に戻ろうってなったんだけど、途中で1つやりたいことがあったからマリーさんに相談してみた。


「クルトにおみやげ?」

「うん、ちゃんと自分で持ってきたから…」


そういって、持ってきた小袋おさいふを懐から出して見せたら、マリーさん、ちょっと渋い顔になっちゃった…


「ミア、もしかして全部持ってきてる?」

「ふぇ?…うん、全部。」

「んー…ちょっと中身が多くて怖いんだけどね…」


お祭りのときは人が増えて、スリとかも多くなるからね…って、顔を曇らせたマリーさんを見てると、相談せずに持ってきちゃったの、大失敗…しょぼん。


「勝手に持ってきてごめんなさい…」

「ま、今日はわたしも注意してなかったしね。

 使わない分はわたしが預かれば大丈夫かな。

 それで、どんなおみやげにしたいの?」


マリーさんが頭をなでなでしながらそう言ってくれた。

ありがとーマリーさん…ぎゅむっと抱きついちゃう!

…そーいえば。


「…何がいいのかな?」

「考えてなかったのね…」

「はぅ…」

「そうねー…あ、昨日見た珍しい果物とかは?クルト結構好きだし。」

「じゃあ、それにします!」


ということで、小袋おさいふの中身は1枚銀貨8枚と、あとは銅貨だけにして、残りはマリーさんに預かってもらうことに。


「屋台の場所、覚えてるわよね?」

「だいじょぶです。」

「わたしはちょっとこのままうちに戻るから、気をつけて行くのよ。」


マリーさんは、夜の準備があるから一足先に帰ることになったけど、屋台はそんなに遠くないし、あたしも遅くならないようにしなきゃ。

確か、広場からちょっと行ったところが変わった果物いっぱいあったよね。


広場まで来ると、相変わらずの大賑わい。

ちょうど美男美女コンテストっていうのをやってるみたい。

腕相撲大会のときよりも人がいっぱいいるよー…

何とか人ごみを抜けて、ほっと一息。

ついたときに、前から来た人にどんって当たっちゃった。


「きゃうっ!」


ぶつかった衝撃と、びっくりしたのとでちょっとよろけちゃった…


「ぎゃっ!」

「に゛ゃー!」

「くそっ、このネコ何しやが…いだっ!」

「にゃにゃっ!!」


ちょっと先のところで、あたしにぶつかった人…だよね、と黒ネコが争ってた…

あれ、もしかしてあのネコくん…?

周りの人も、その争いを不思議そうに見てる。

そうこうしてるうちに、ぶつかった人はネコくんを振りはらって走ってった。

ネコくんは、あたしの方に向かってくる。


「どしたの?」


しゃがんで声をかけたあたしの目の前で、ネコくんは咥えてたものを放した。

チャリン。


「あれ…それ…?あーーー!」


懐にあったはずの小袋は、なぜか目の前に…。

もしかして取り返してくれたのかな…?

ネコなのに?!

小袋を拾い上げてあたしとネコくんを中心にちょっとした人だかりができてたんだけど、なぜか急に拍手が起こった。

「いやー、優秀なネコだ。」「使い魔だったりして?」「あんな小さな子が魔法士かぁ?」などとよくわからない周りのお話に、ちょっと居辛くなったあたしは、ネコくんを抱っこして逃げることにした。

ネコくんもおとなしく抱っこされてくれる。


「す、すみません通してください!」


広場の端まで走って、ちょっと一息つく。

あ、ネコくんがちょっとぐったり…ごめん、走ったときに揺れちゃったんだね。

ゆっくり降ろしてあげると、ちょこんと座った。


「ネコくん、あたしのおさいふとり返してくれたの?」

「にゃー。」

「ありがとね…」

「にゃ。」


言葉はわかんないけど、気持ちは伝わったかな…

このまま帰ろうかと思ったけど、もう屋台もすぐだし、お金持ってるのも何となく怖いから、予定通り果物を買っていくことに決めて歩きだしたら、ネコくんもついて来てくれた。

ちょっと心強いかも。



結局、屋台で変わった果物をいろいろと買い込んで、お金をほとんど使いきっちゃった。

屋台のおじさん、結構たくさん買ったから、あたしが持てるか心配だったみたいだけど、何とかいけそ。


「ネコくん、帰りにうちまで来る?お礼にミルク頼んであげるよ?」

「にゃ。」


たぶん、「いいよ」っていったんだよね。

それじゃ、落とさないように帰らなきゃ。



何とか宿まで帰り着いたんだけど、途中までついて来てたネコくんは、どこかではぐれちゃったのかな…

それとも、返事は「いらない」だったのかなぁ…

今度来てくれたら、しっかりお礼しなきゃね。

ミアちゃん、危機一髪。

ネコくん大活躍?!の巻でした。

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