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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
27/130

26 お祭りの日に その2

今日は建国祭の2日目。

昨日の食堂は、夜もいつもよりお客様が少なくて、楽だったんだけど、お泊まりは満室になったよ。

今朝は昨日からの続きで屋台の準備も早いみたいで、朝ご飯を取らずにお祭りに向かうお客さんもいるみたい。

おかげで朝の食堂も、いつもより少し余裕があったんだ。



「今日も、お昼は閉める予定だったんだけど、私はギルドに行かなければならなくてね。」

「そうなんだ…。」

「だから、今日はわたしと2人だけど、一緒に回りましょ。」

「せっかくのお祭りなんだし、そんなにしょげないように。私の分まで楽しんで来てくれればいいよ。」

「うん、ありがとークルトさん。」


ちょっと残念だけど、お仕事じゃしょうがないよね。

部屋に戻って準備して、降りてきたときにはクルトさんはもう出かけちゃったあとみたい。

マリーさんと、戸締り確認して、いざお祭りに出発~!

今日もまずは広場まで行ってみることになったんだけど、大通りに出ると、もうすでに大賑わい。


「昨日よりも、人が増えてる気がしますー…」

「そうね。はぐれないように注意しなきゃね。」


マリーさんと手をつないで、大通りをゆっくりと進んでく。

屋台や露店も昨日より増えてるみたいで、みんなとっても楽しそう。


広場につくと、ステージには『力自慢!腕相撲大会』の横断幕がかかってる。

何人もの人がステージ上に立ってて、台の上で腕相撲してるのを、司会の人が盛り上げてるとこだった。


「あの人、おっきい声ですねー。」

「んー、多分魔法で大きな声にしてるんじゃないかな?

 あらっ?ミア、ちょっと前まで行ってみましょ。」


何かに気づいたマリーさんに引っ張られて、人ごみの中を進んでく。

前の方まで来て、マリーさんが指さす方向を見ると、知ってる人がいた。


「あ、ラルフさんだ!」

「出てたのね。わたしに内緒だなんて、どうしてやろうかしら。」


急な言葉にびっくりしてマリーさんを見たけど、いたずらっぽい笑顔だったから、一安心。

そうこうしている間に、ラルフさんの順番になった。

名前が呼ばれて、相手の人と組んだところで、マリーさんがつんつんとつついてきた。


「はひっ?」

「ミア、ラルフのこと、応援してあげよっか。ふふっ♪」

「え、う、うん。」


みょーに楽しそうなマリーさん。

でも応援してあげるのはいい案だよね!

おっきく息を吸って、ステージに向かって叫んでみた。


「ラールーフーさーーん、がーんーばってーー!!」


声に反応して、ラルフさんがこっちを見てくれた。

司会の人が「かわいい応援団も来ているようです!」っていうと、会場がわーっとわきあがって…

あれ、ラルフさん、顔が赤くなった。てれやさん?


「ラルフー、負けたらわかってるわよね?」


っていうマリーさんの声に、今度はビクッてなるラルフさん。

「前置きが長くなってしまいましたが…」という司会の人の一声で、再びわきあがる会場。

そんなこんなで、勝負が始まったんだけど、ラルフさんは割と余裕で勝ってた。


そのあとも順調に2回勝ち進んで、次がいよいよ優勝決定戦っていうとこまできちゃった。

相手の人はラルフさんよりごっつい人で、ちょっとラルフさんピンチな感じ…


「さぁ、いよいよ今回のナンバーワンが決まるときがやってきました。

 冒険者を引退し、鍛冶屋として新たに邁進するラルフか、それとも前回チャンピオンのギッシングか。

 注目の一戦、レディ…ファイト!!」


司会の人の合図で、勝負は始まったけど、2人の腕はほとんど動かなかった。

それでも、お互いに全力の力を込めてるのは、ぱんぱんに張ってる筋肉が小刻みに震えてるので、見てる人にも分かったんだと思う。

会場は、今までにも増して盛り上がってるし、あたしも全力でラルフさんに声援を送ってるんだけど、当の2人はまだ動かないまんま。

ふっと横を見ると、マリーさんは静かに勝負を見てた。けどその表情はちょっと困った顔…?


会場の声がさらに大きくなったから、ステージを見てみたら、ラルフさんが少しずつ押されてた。

そのきつそうな表情を見てると、何だかあたしまで緊張してきた。

応援したいのに、声が出なくなっちゃったみたい…

そしてラルフさんはそのままじわじわと押されて、とうとう負けちゃった…


「勝者はギッシング、これで3連覇だ~~~!おめでと~~~ぅ!!」


司会の人の宣言で、会場はすごい拍手と歓声に包まれる。

ラルフさん、負けたのに笑顔で相手の人と握手してる。

悔しくないのかなぁ?


表彰式も終わってラルフさんがあたしたちの方に来てくれた。


「マリーさんもミアちゃんも、応援ありがとうございました。

 来てるとは思いませんでしたけどね。」

「まぁ、いいじゃない。

 それにしても、強くなったわねー。あのころとは大違いだわ。」


ふふっと嬉しそうに笑いながら、マリーさんがラルフさんの腕をぽんぽんって叩いた。

2人とも、負けたことをあんまり気にしてないみたい。


「ラルフさん、負けたのにあんまり悔しくないみたいですね?」

「ん?あぁ、今の俺の全力でぶつかった結果だからね。

 悔しくないわけではないんだけど、それ以上に全力を出せたことがよかったかな。」

「ふみゅー…」

「ま、もちろん次は負けるつもりはないけどね。」


そういって、ラルフさんが見た先には、みんなに祝福され続けてるチャンピオンのギッシングさんがいた。

そのラルフさんの表情は、とっても楽しそうだった。

マリーさんは、そんなラルフさんを見ながらうんうんとうなずいてる。

よくわかんないけど、悔しいだけよりは、楽しい方がいいよね。

そんなラルフさんを見ると、何だかあたしもいろいろがんばろって勝手に思っちゃいました。

無事帰ってこられました。

累計2000PVありがとうございます!


お祭り、もうちょっと続きます。

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