表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
25/130

24 いつもの朝?

「はれ…?」


いつもの朝。

いつものあたしのベッド。

いつものあたしの部屋。

いつものあたしの寝間着。


そう、おかしなところなんて何もない。

昨日の記憶がないこと以外は…



……

うん、順番に思い出そう。


昨日もいつもみたいににぎやかな夜だったよね。

わたわたと走り回ってお給仕してたよね。

酒屋のおじさんが配達に来てくれて、応対したよね。

そのあともお給仕したよね。

お客様が帰ったあとにお片付けしたよね。

あとはいつものようにお茶…

お茶したっけ?


とか考えながらちゃんと着替えてたんだよ。

準備完了!朝のお仕事いきますっ!



「あら、おはようミア。大丈夫?」

「おはよーございますマリーさん。」


…あれ?大丈夫って…?


「昨日は大変だったもんねぇ…」

「マリーさん…」

「ん?やっぱり調子悪い?」

「……すみません、何があったか覚えてません…っていうか、あたし何かしちゃいました…?」


マリーさんが苦笑い…してる、よね。

はぅー、何だろ…


「ミア昨日、お酒飲んだの覚えてない?」

「おさけ…ってあのお酒、だよね…?」

「もちろんそうよ。それでね…」






「お茶持ってきましたー。」

「ミア、ありがと。今日もお疲れ様。クルトは?」

「もう来ると思います。」


ミアが言い終わるか終わらないかというところで、クルトも食堂から入ってきた。

カップと、陶器のビンも持ってきているけど、どうしたのかしら?


「クルトもお疲れ様。」

「待たせたかな。」

「それは?」

「あぁ、酒屋の親父さんが持ってきてくれたんだよ。新しくつくったものの1つだそうだよ。」

「なるほど。試してみるのね。」


笑顔で答えて、クルトが自分の分とあたしにビンの中身を注いでくれる。

カップの中身は赤く透き通って、割と嗅ぎなれた香りがする。


「これ、紅茶?」

「みたいだね。リュートくんのアイデアかな。」

「あ、甘いんだ。割と飲みやすいわね。女性にも受けそうねー。」


うん、女の子のお客様も来るし、こういうのがあってもいいわね。

クルトもうなずいてるし、新メニューかも?

他の新作も気になるところだけど…


「クルトさん、あたしもちょっと飲んでみていい?」

「えっ?んー…ミアにはちょっと早い気もするけど…」


ミアの残念そうな顔に、わたしもクルトも弱いのよね…


「ちょっとくらいならいいんじゃない?」

「そうだね。でも無理そうならやめとくんだよ。」

「はいっ!」


この子、ほんとにうれしそうな顔するなぁ…

っと、カップ2個しか持ってきてなかったのね。


「ごめんね、カップとりに行くのも面倒だし、わたしの残りでもいい?」

「わーい、いたたきますー。」


カップを両手で持ったミアは、まずくんくんとにおいをかいでる。

何となく、ミアって子犬っぽいところがあるのよね。素直でいい子だし。

あ、ちびちび飲んでる。


「わ、甘ーい。おいしーかも!」


もぅ、そんなにニコニコして…って一気に飲んじゃった?!


「ミア、そんなに一気に飲んだら…」

「クルトさん、これすっごくおいしーですよ!」


…割とお酒強いのかしら?

横を見ると、クルトもちょっと驚いてるみたい。


「ま、ミアも飲めるくらいだし、新メニュー候補、かしら?」

「そうだね。ま、今日はもう休もうか。片付けだけしてしまうよ。」

「あ、わたしも手伝うわ。ミアは先に休んでていいわよ。」

「えー、お手伝いしますよー?」


ミアの気持ちは嬉しいけど、初めてのお酒も入ってるし、休ませてあげた方がいいわよね。

もうやる気満々でカップ重ねてるけど…


「いいから、今日は先に上がってね。」

「うー、はぁい。マリーさんありがとれす♪」


カップを取り上げたら(もちろんやさしくね?)、ミアも素直にうなずいてくれたし。

クルトも、先に持っていった分を洗ってるだろうし、洗うのと拭くのを手分けしてやったらすぐよね。


「よし、これで終わりっと。あれ、ビンは?」

「あ、まだ持ってきてないわ。取ってくるわね。」


ミアからカップだけ取り上げてそのまま持ってきちゃったから…

クルトがカップを棚に片付けてくれている間に行きますか。


「あれ、ミアまだいたの?」


テーブルに座ったままだったみたいだけど…

あれ、反応がない?


「ミア?」

「あ、まりーさん。ふあふあー。」

「ミア…ってあんた、酒臭い…」

「ごめんらさひー、びんがたおれれ…」


よく見たら、テーブルの上に倒れたビン、ミアはお酒まみれ…

で、酔ったってこと…?


「ミア、大丈夫?ちょっとべたべただし、流しに行ける?」

「かたづけましゅー…くぅー…くぅー…」


寝ちゃったし…やっぱりお酒は早かったかしら…






「で、体拭いて着替えさせて、クルトにベッドまで運んでもらったんだけど…」

「ごごごごめんなさいぃぃぃ…」


とんでもないことしてるあたし…

どうしよ…どうしたらいいの…?


「ミア、落ち着いて。大丈夫だから。ごめんね、わたしたちも飲ませちゃったんだし。

 頭痛いとか、胸がムカムカするとかない?」


マリーさんがぎゅってしてくれたから、ちょっとだけ落ちつけたみたい…


「だいじょぶです。頭も痛くないし、ムカムカもしないです…」

「それならいいわ。じゃ、今日もがんばりましょ!」

「は、はい!」


次にあたしができることは…食堂まで駆けこむことだった。


「クルトさん!」

「あ、ミア、おはよう。大丈夫かい?」

「お、おはよーございます!だいじょぶです!」


クルトさんもマリーさんも、あたしの体調気にしてくれてる…ほんとごめんなさい。


「昨日はほんとにすみません!」

「ミアが大丈夫ならいいんだよ。今日もしっかり頼むよ?」

「はい!あ、食堂の準備まだだから先に行ってきますね。」


まだテーブルとか準備してなかったから、食堂に戻ろうとしたら、クルトさんが呼びとめた。


「あ、ミア、1つだけ…」

「はい?」

「しばらくお酒禁止。」


あうぅ…しばらく飲みたいなんて言いません…




「ところで、頭痛かったりしない?」

ミアちゃん、お酒に負けちゃうの巻でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ