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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
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23 お祭りにむけて

今日は、クルトさんと市場に買い出しに来てるんだけど、何だかいつもより忙しそう。


「ん、ミア、どうかしたのかい?」

「クルトさん、今日は何だか市場全体が忙しそう。」

「あぁ、きっと建国祭のためだね。」

「ケンコクサイ?」

「そう、このミューゼスの国の誕生日をお祝いするお祭りだよ。」


そういえば、洗濯に行ったときに、近所のおばさんたちもお祭りのこと、話してたなぁ。


「まぁ、うちは宿だから、これといって何かするわけじゃないけど、近所のお店でもお祭りに向けていろいろ準備しているところはあるんじゃないかな。」

「ふみゅ、楽しそうです!」

「タレイアでは2日間だけど、王都では10日間ほどかけて、お祭りがおこなわれるそうだよ。」

「えーーーっ?!すごいです…」


よっぽど変な顔になったのかな…クルトさんがあたし見て笑ってる。

…でも、見に行く暇はないのかなぁ。


そのあと、何件かお店を回って食材を注文したり、直接受け取ったりと市場を回ってきて、最後に酒屋さんに寄ったの。

今日はリュートさんだけなのかな。おじさんは見当たらないけど。


「あぁ、クルトさん、いらっしゃいませ。ミアさんもお久しぶり。」

「こんにちは。リュートくん、この間言ってた新しいお酒はどうなってるかな?」

「順調ですよ。建国祭で少し出してみようかと思っています。反応がよさそうなものを量産、ですかね。」

「そうか、うちも新しいのを入れてみたいし、またよろしく頼むよ。

 あと、いつものをまた届けておいてほしいんだけど。」

「すみません、お急ぎでしょうか?」


リュートさんの顔が曇った。どうしたんだろ?

クルトさんも、不思議そうな顔をしてる。


「実は、建国祭前で注文が立て込んでしまってて…親父も手伝いの子も出ずっぱりなんですよ。」

「なるほどね。来れるとしたらいつくらいになるんだい?」

「夜にはお伺いできると思いますが…お忙しいですよね…」

「いや、それでかまわないよ。

 ただ、さすがに表からというわけにはいかないから裏口においてもらえればいい。

 大変だろうけどお願いするよ。」

「いえ、それではそのようにさせていただきます。ありがとうございました。」



クルトさんもあたしも、荷物を抱えて宿への帰り道。


「みんな忙しそうです。でも何かにぎやかで楽しそう♪」

「そうだね。この建国祭と新年祭は街中大騒ぎになるからね。」

「ふわぁ…早くお祭り見たいです!」

「ミアにとっては初めてのお祭りだね。」

「何だか今からドキドキしてきたぁ…」


そんなあたしを見て、あははって笑うクルトさん。つられてあたしも笑っちゃった。



その日の夜も、いつもと同じように食堂はにぎわってた。

壁の掲示板を見に行く人もたくさんいた。(何かギルドからの依頼を貼りだしてるんだって。ギルドまで確認に行かなくても依頼がわかるってことみたいだけど。)

何度目かに厨房に戻ったときに、お勝手の扉がノックされた。きっとリュートさんだね。


「ミアごめん、手が離せないから頼む。出たところに置いてもらっていいから。」

「は、はいっ!」


火に向かってる最中のクルトさんが、いつもよりちょっと鋭い声で言うから、ちょっとしゃきっとなっちゃう。

ぱっと扉を開けると、リュートさんじゃなくて酒屋のおじさんがいた。


「わっ!」

「おっと、嬢ちゃんか。驚かせちまったかい?」

「い、いえすみませんっ!」

「頼まれてたやつ、どうすればいい?」

「あ、えっとそこに置いといてもらえればいいです。」

「そうかい、そりゃこっちも助かるな。」


そういって、はっはっはって笑うおじさんは、台車から陶器のビンもとりだす。


「こいつは、今年の祭りで出すうちの1本だが、遅くなったお詫びだって、クルトに伝えといてくれ。」

「はい。わざわざありがとうございました!」


おじさんの台車にはまだ樽やビンが残ってる。

配達って大変そう。


「おじさんもがんばってください!」


そういって手を振ったら、おじさん、ガッツポーズで答えてくれた。

厨房に入って、クルトさんにビンのことを伝えたら、「今晩、ちょっと試してみるかな。」っていってた。

そういえばクルトさんがお酒飲むとこって、あんまり見たことないかも。

うちに来る人は、夜だとお酒頼む人もたくさんいるけど、お酒っておいしいのかな?


「ミアー、お皿下げてー。」


ボーっと考えてたら、食堂の方からマリーさんが顔を覗かせてた。


「は、はひっ!すぐ行きますー!!」


いけないいけない、今はお仕事に集中しなきゃね。

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